ドキッ!おじさんだらけの自民党漫画「大宰相」レビュー連載も第3回である。保守合同の末の自民党の誕生、対ソ連交渉、安保闘争など、今回もてんこ盛りの内容で、どこから言及するべきか悩ましいほどであるが、ここはあえて重光葵から行こう。

2巻の最後でついに吉田首班が破られ、ようやく誕生した鳩山内閣で、重光は外相を務めた。重光葵は終戦の時にミズーリ号の上で降伏文書に調印した人物で、近現代史の苦手な私でも外相経験のある人物として元から名前は知っていたほどだ。
この重光がとにかくウザい。いらんことばかりするし、とにかく文脈が読めていないのである。「ムーミン」シリーズでいうとスニフっぽい。冒険映画の馬鹿なキャラにイラッとくるのと一緒で、ゲーム性の高い政治という現場に「文脈が把握できていない人間」が混じっていると、いろいろと「円滑じゃない」のだ。
建前上は未だ戦争状態にあることになっているソ連との交渉は、シベリアに抑留された人々や北方領土の問題を考えれば急ぐべき事案だ、と鳩山らは認識していたのだが、重光は慎重論を頑なに崩さない。そこで日ソ交渉の全権は重光に相談なく松本俊一が推され、重光はそれに対して激怒する。
「全権人事を、私抜きで決めるとは、おかしいじゃあないか!!」
「わ、私に、一番先に、相談してきたのではないのか?!」
外相だからと言ってわざわざ慎重論者にまず相談するなんてするわけがない。政党政治がそういう「いかに自分の計画を円滑に進めるか」というゲームであることは、1巻と2巻でたっぷり思い知らされた。政治ってそういう世界なんだ……と思った矢先にこんなスニフが出てくるのだから、イライラするのも必然だろう。
スニフ外相はその後、自分は対ソ交渉ではなく対米交渉で実績をあげようとするが、面会を断られるわ、面会ができても「日本は海外派兵が出来るか」というアメリカからの問いに曖昧な回答をして、現地メディアに「日本は海外派兵を受諾」と解釈されてしまうわ、悉く「やらかす」のであった。う、ウザい……。
しかし選挙ドットコムの松田さんにこの感想をお見せしたところ、そこまで無能ではないと思うよ、とのこと。よし、ググってみよう。
→というわけで重光葵をちょこちょこ検索してみたところ、日本による太平洋戦争中のアジア諸国侵略を非難したり、駐英大使として日英関係の調整に尽力したりと中々悪くない印象だ。逆になぜ漫画ではここまでこき下ろされているのだろうか? 原作者がどういう価値観で書いているのか、それを今まで意識してこなかったことに、ようやく気がついた。う〜む……。
さて、前回鳩山政権の樹立のために命を燃やした三木武吉は、今回自由党と日本民主党の保守合同を目指して画策を続け、昭和30年、ついにそれを達成する。その翌年、三木は病床でも政局を気にかけ続け、71歳でその生涯を閉じた。
この訃報に最も衝撃を受けたのは、もちろん鳩山だ。
「もうどうでもいい……いつでも……たった今でも総理大臣をやめてもいい!……」「自らの政治家としても自信が、音をたてて崩壊していくのを、鳩山はその耳で聞く思いであった……」
「三木…… 君はもうなにひとつしゃべらないのか……三木……」
政治家も自民党も嫌いだが、このシーンにはぐっとくるものがあった。これまで鳩山の軍師として陰に日向に支え続けていた三木が死んだその年の暮れ、鳩山は後を追うように首相の地位を明け渡す。
「運命共同体」とは、こういう関係のことをいうのかもしれない。
3巻の表紙は岸信介である。安倍首相の祖父であるこの政治家が政治生命を懸けたのは、孫と同じく安保についてであった。
新日米安保の締結を目指す岸政権に対し、社会党議員や全日本学生自治会総連合などから批判が殺到。まるで2015年のように国会前には抗議の人々が押しかけ、警察との激しい衝突が続き、結局深夜に強行採決が行われた……。
ん?と思ってしまった。ほとんど現在の状況と相似ではないか。私がこの時代に生まれていたら、安保闘争に参加していたにちがいない。
デモに出ていながら岸信介の時代に何が起きていたのかよく分かっていなかった無知が恥ずかしいのだが、それ以上に<歴史を繰り返す>ことを選んできたこの国の政治機構が本当につらい。
安保闘争ののち、岸は結局自民党内部の対立をまとめられず、政権を手放すこととなる。安倍政権も同じ潮流を辿ればいい。
前回も言った通り、政治はゲームっぽい。プレイヤーのいないボードゲームだ。つまり、盤上から相手を追い落とし、ギャラリーを黙らせ、持ち駒を都合よく運ぶのもまた盤上の駒であり、結局誰のために行われているゲームなのかは良くわからないのである……。
<歴史は繰り返す>わけがなく、<歴史を繰り返させる>のを誰かが選んでいる!
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