2026/1/7
「リフレ派の主張は、輪転機を回して紙幣を増刷すれば、自動的に景気が良くなり物価も上がるというものだ」こうした批判を耳にすることがあるが、これは典型的な「藁人形論法」である。リフレ政策の本質は、物理的な貨幣量そのものではなく、人々の「期待」に働きかける点にあるからだ。
経済活動の根幹にあるのは心理だ。中央銀行がいかに資金供給(買いオペ)を行おうとも、市場や国民が「どうせ一時的な措置であり、すぐに終わる」と受け止めてしまえば、その効果は極めて限定的なものになる。
白川方明総裁時代以前の、かつての日銀が陥った罠は、まさにここにあった。日銀が独立性を確保した1998年以来、金融緩和策を打ち出しても、物価目標である2%に届くはるか手前で金融引き締めを行うという「前科」を重ねた結果、市場は「日銀はデフレ脱却に本気ではない」と学習し、市場からの信認を日銀は失ってしまったのだ。これでは、アクセルを踏みながらブレーキをかけているに等しい。
リフレ政策が提唱するのは、こうした「中途半端な裁量」の排除である。「2%のインフレ目標を達成するまでは、何があっても緩和を止めない」とする退路を断ったコミットメント(約束)こそが、人々のインフレ期待を醸成し、長く停滞した日本経済を動かすテコとなる。
今、問われているのは、政策当局が市場に対してどれほど強固な「未来への保証」を提示できるか、という説明責任、ガバナンスの問題なのである。

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