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現役議員が明かす、生成AIと地方議会のリアル ー答弁も生成AIが書く時代。民主主義はどこへ向かう?ー

2026/4/30

 現役議員が明かす、生成AIと地方議会のリアル -答弁も生成AIが書く時代。民主主義はどこへ向かう?ー


【現役市議会議員の論考・コラム】
〔筆者:相模原市議会議員・阿部善博(あべよしひろ)。20年以上にわたり地方議会のデジタル化を追ってきた。「生成AI時代の地方議会研究会」発起人〕

 議員が質問し、首長が答える。ごく日常的といえる地方議会の舞台裏で、静かに変革が起きている。あなたの選んだ議員が読み上げる質問、そして答える市長の答弁、そのどちらも実はAIが書いたものだとしたら。しかも、多くの住民はその事実を知らない。こんな一昔前ならSF的に聞こえる話が、日本全国の地方議会でリアルになりつつある。民主主義の学校と言われる地方自治の現場が、いま確実に変わり始めている。あなたのまちは、本当に大丈夫だろうか。

 

 【目次】 
◆都道府県・政令市の9割が「導入済み」——でも市区町村は3割だけ
◆「丸2日」が「半日」に——議会の現場で起きた変化
◆地方議員は生成AIをどう使い、どう考えているのか
◆「満員御礼」——議員研修に全国から申し込みが殺到
◆課題の深層——デジタル時代の議会のあり方を模索
◆AI時代に議員は必要か——「AI同士の対話」に民主主義の「魂」は宿るのか?
◆結び——AI時代の議会・議員に求められる覚悟
 

◆都道府県・政令市の9割が「導入済み」——でも市区町村は3割だけ

 総務省が2024年度に実施した調査(令和7年公表)(※1)では、生成AIを「導入済み」と回答した自治体の割合は、都道府県で87.2%、政令指定都市で90.0%に達している。一方、一般の市区町村では29.9%にとどまっている。「実証中・導入予定」を含めても市区町村で51%にすぎない。あなたが住む市区町村は、生成AIを導入しているだろうか。していなければ、あなたへのサービスはすでに遅れ始めているのかもしれない。地域ごとの導入の格差は、住民が受けられる行政サービスの質の格差に直結しつつある。

 都道府県・政令市が90%近い導入率を誇るのは、単に「意識が高い」からではなく、専任のDX推進部署、IT予算、外部ベンダーとの交渉力、先進事例を調べるための人員、これらの多くの部分が「規模」に比例していることは否めない。

 導入が進む大阪市では2024年4月、独自の生成AIアシスタント「Oasis」を全庁導入。翻訳・要約・文書校正をワンストップで提供し、利用ガイドラインも同日に公開、職員が安心して利用できる環境整備に取り組んでいる(※2)。横須賀市は2023年4月に実証実験を開始し、6月には本格運用となっている。庁内報や「活用コンテスト」で職員の事例共有とスキル向上を促す先進自治体として知られている(※3)。私が大阪市を視察で訪れた際には、生成AI以前の様々な情報化の取組資産があり、経験や実績の積み重ねの上に生成AI導入が図られていた。横須賀市も、私が電子自治体の取組について調査していた20年以上前から、既に先進市として常に名前が上がっていた実績がある。

 一方、小規模自治体では職員数も少なく、1人の職員が複数の業務を兼務したり、AIを研究・検証する余裕がない、という実情がある。人員やコストだけでなく、現状では有効性についても明確とは言い切れず、なかなか踏み込むことができないということもあるのだろう。

 生成AIを導入した自治体では、業務が効率化され、さらに新しい施策に時間を割けるようになる。導入できない自治体は、従来通りの膨大な事務作業に追われ続け、その差が加速度的に広がっていく。このようになると、住民が受けられる行政サービスの質が、「どの規模の自治体に住んでいるか」で決まることになってしまう。国や都道府県による更なる支援が急務だが、現状では、DX推進の支援策の中に、生成AI支援も含まれる形となっている。今後は、更に生成AIに特化した支援策が必要だろう。しかし、そもそも生成AIは、小規模自治体ならではの創意工夫や、個性を生かした施策展開にこそ、その創造性の発揮が期待されてもいる。こうした状況を好機と捉え、積極的に取組を進める市区町村も沢山ある。お決まりの取組を押し付けるような支援とならないことが大切だ。

 また、規模の大小を問わず、約4割の自治体職員が「自分たちのDXは民間より遅れている」と感じている(※4)。原因は明らかだ。人事異動で知見は途切れ、予算は乏しく、首長が変われば優先順位も変わる。それでも、前に進む自治体は取組を進めている。起点は首長でも、議員でも、現場の一職員でもいい。ただし、生成AIを「仕事を楽にするツール」としてしか使わない限り、住民には何も届かない。地域の課題を解決し住民の生活を変える、その本来の目的に向けて生成AIを動かしたとき、地方自治は初めて生成AI時代に生き残る力を手にする。

◆「丸2日」が「半日」に——議会の現場で起きた変化

 地方議会に関わる現場においては、生成AIの効果が最もわかりやすく現れたのが文書作成に関わるものだ。総務省の調査が示す数字は、皮肉な現実を映している。生成AIの活用で最も多いのが『あいさつ文作成』と『議事録の要約』。つまり、本来議会が一番大切にする言葉に関わる部分から、生成AIへの置き換えが始まっている。

 相模原市議会の本会議場では、傍聴席に設置されたモニターに、リアルタイムで文字化された発言が表示されている。耳の不自由な方が、文字で発言内容を確認できるように設置したものだ。手話通訳者を依頼する制度もあるが、事前の手続きなどがあり、ほとんど手話通訳の利用はないのが現状である。また、議員の質問には時間制限があるため、早口になることが多く、文字で目からも確認できることはとても分かりやすいと好評である。この文字化した情報を、当日中に速報版議事録として入手を希望する報道関係者や市民もいるが、こちらはいまだ議論が進んでいない。

 島根県浜田市議会では、Google AI Studioを使った委員会要点筆記作成フローを独自に構築(※5)。丸2日かかっていた委員会会議録の作成時間が半日程度と、約1/4に短縮された。その結果、委員会当日中にYouTubeで動画公開、翌日には会議録の準備が完了するという驚異的な改善を実現している。

 茨城県取手市は、2024年9月の定例議会から、生成AIによる答弁書作成支援システムを導入(※6)。一般質問の内容を入力すると、想定質問と答弁書の素案が自動生成される。静岡県湖西市でも同様のAI化で月約100時間の作業削減を達成した(※7)。

もはや「AIが答弁を書く」「AIが原稿を書く」は非日常ではない。

 全国市議会議長会の調査では、全議員を対象とするタブレットの導入率は、80%を超えている(※8)。今後はそれをどう使うかの議論が更に進むだろう。議場に持ち込んだタブレットでの生成AIの利用についても、議論は避けられない。ホームページでのチャットボットや議会だよりの作成など、具体的利用策に加え、使用環境の整備としてのガイドライン策定など、議会としての取組は、今後ますます進められて行くだろう。


◆地方議員は生成AIをどう使い、どう考えているのか

 【活用例】ChatGPTをパートナーに(江東区・鈴木議員)江東区議会の鈴木あやこ議員は、自身のYouTubeチャンネルやnoteで「ChatGPTを議員活動のパートナーとして1年以上活用している」と公言する。予算審査の総括質問では、区の予算資料や過去答弁をChatGPTに読み込ませ、課題の洗い出しと質問の「たたき台」を作成。そこから自分の言葉で修正し、本会議に臨む。2025年4月には全国から約50名の議員を集めたAI勉強会の講師も務めた。

 【分析例】古くなった条例をAIで抽出(墨田区・佐藤議員)生成AI時代の地方議会研究会の発起人を務める墨田区議会佐藤篤議員の活動は、生成AIを活用して、時代にそぐわなくなった条例を洗い出し、見直し案を提言している。

 【サービス提供】町村議員でも使いやすく(飯館村・横山議員)同じく生成AI時代の地方議会研究会の発起人を務める飯舘村議会横山秀人議員は、町村議会議員向けにやさしく生成AIを活用できるよう利用しやすいサービスの提供などを行っている。

 【活動の発信】(鹿角市・笹本元議員)(宮城県・渡辺議員)秋田県の元鹿角市議の笹本真司氏はブログで「ChatGPTに9月議会で何を質問すべきか聞いてみた」と試みを公開。宮城県議会の渡辺勝幸議員も「議員活動の生産性向上のためゼロから勉強する」と発信。YouTubeやブログ・SNSを見れば、「生成AI」に関する質問を行った議員や、自分の議員活動に活用している話が次々と出てくる。公言こそしていないとしても、実際には相当数の議員が活用を始めている。地方議員の生成AI活用は、今後も加速度的に増加して行くだろう。

 個々の議員がどう生成AIを活用するかの議論に加え、生成AIを使いこなす議員と、まったく使わない議員との格差が問題となるかもしれない。また、生成AIを使わないことが、果たして議員としてマイナスと言いうるのか、の議論も必要である。これは議員がそもそも何をするべきか、という本質を見つめなおす絶好の機会にもなる。

◆「満員御礼」——議員研修に全国から申し込みが殺到

 こうした状況を受け、議員向けの学習・研修機会も急拡大している。

 早稲田大学マニフェスト研究所は2024年4月、「地方議会を変革する生成AI活用講座〜地方議員がゼロから始めるChatGPT〜」を開催。定員30名が即日満席となり、全国から議員が集まった。参加者から「ぜひうちの議会でも研修を」という要望が相次ぎ、浜田市議会ほか、各地での開催が続いた。

 2025年10月には、研究者、議員、自治体職員、企業技術者等が参加する「生成AI時代の地方議会研究会」が正式に発足し、実際の議会現場から知見を集め「新しい地方議会の姿」を描こうと取組が進められている。設立記念シンポジウムに続き、この夏には大会の開催が予定されている。

 早稲田大学マニフェスト研究所による研修会では「生成AIは議会改革の大きな推進力になり得る。新人議員でも質の高い質問が可能となり、議会全体の質問レベルが底上げされる」とされていた。ただし日本大学法学部の林紀行教授は同時に釘も刺す。「ファクトチェックは必ず人間がやること。AIはネット上の誤情報も学習してしまう。著作権にも十分な注意が必要だ」。

◆課題の深層——デジタル時代の議会のあり方を模索

 変化は急速である。林教授の指摘するように、課題は多数あるが、フットワーク良くAIを使いこなす個々の議員に対し、組織としての議会はルール作りに時間を要し、対応が後手に回っている。だが、この不均衡は、個々の議員の活動実績を、議会としての議論に援用することもできる。今こそデジタル時代における「議会の役割」を再定義する絶好の機会ととらえ、乗り越えるべき課題を以下の3つに整理した。

 1. 「責任」の所在——誰が判を押すのか
 一つ目は「法的・倫理的リスク」だ。AIが作成した答弁には「ハルシネーション(事実誤認)」のリスクがある。首長の答弁は議事録に確定されることで法的効力を持つ。それまでに、事前に確立された手続きによる事実確認が必要だ。ルール作りの労力も大変だが、実際の事実確認の作業が煩雑だと、そもそも生成AIを使った意味がなくなってしまう。また「未公表の政策情報や庁内調整過程を外部のAIに送信してはならない」というルールも遵守されなければならない。最終的な責任は必ず首長・部局長が持つべきだというのは共通認識だが、実際の運用はいまだ整備途上である。

 2. 「納得」のプロセス——住民はどう見るか
 二つ目は「透明性の確保」だ。「この答弁、実はAIが書きました」と知らされたとき、住民はどう感じるだろうか。すべてをAIに丸投げする訳ではないが、どこまでどのように生成AIが関わったのか、ルールはどうなっているのか、それを有権者に正しく伝えることは実際問題として難しいものだ。行政の効率化を歓迎する声がある一方で、「誠実さに欠ける」という反発もあるだろう。生成AIがどの過程にどのように関与するのか、その考え方とあわせ「開示の仕方」のルール策定も、行政の信頼性と住民の「納得」を左右する喫緊の課題である。

 3. 「意思」の不在——民主主義の空洞化
 三つ目は、「民主主義の本質」に関わるものだ。議員の使命は、住民の切実な思いをすくい上げ、議会の場で議論し、行政につなげることにある。極端な話であるが、もし、議員がAIで質問を作り、行政がAIで答弁を返すだけの「自動運転」が行われていたら、そこに「議員としての使命や思い」「責任ある決断」は存在するのだろうか。効率化を突き詰めた先に、議論が形骸化し、民主主義が空っぽの殻になってしまう事態が起こりえないと果たして言い得るだろうか。

◆AI時代に議員は必要か——「AI同士の対話」に民主主義の「魂」は宿るのか?

「AIが質問を作り、AIが答弁を書き、AIが議事録を要約するなら、そこに“人間の議員”は本当に必要なのか?」

 私は、この問いに対し「必要だ」と言いたい。しかし、このままで良い訳でもない。

 現在、「事務作業の代替が進むなら、定数や報酬を削減すべきだ」という議論が巻き起こるのは当然の流れだ。行政改革において数値的な成果が求められるのと同様である。しかし、議場に響くすべての言葉が、効率化という物差しで測れる訳ではない。

 「困っている人を助けたい」。これは私の先輩議員の言葉だ。「答えは分からないけれど、みんなの輪の中に入って仲良くなって、一緒に考えることだ」とも言っていた。生成AIにはできないことだ。

 議員の言葉の裏側には、地を這うような活動が隠されている。市民の声に耳を傾け、現場を歩き、悩み、頭を突き合わせる。どうしようもない状況を何とかしたいという「一念」から絞り出された言葉。子どもたちの未来を想い、やらずにはいられないという「信念」に基づいた政策提言。こうした思い、すなわち「魂」が込められたやり取りこそが、私たちの民主主義の根本にはある。答えのない議論であっても、最善を考え、泥臭い決断を背負うこともある。そして、すべての議員は、その活動に責任を負い、ひとしく次の選挙で審判を受けることになる。

 効率を優先した「AI同士の対話」には、責任もなければ痛みもなく、そこに民主主義の「魂」はない。

 チェスも将棋も人間はAIに勝てなくなった。窓口業務や車の運転、果ては芸術や匠の技までがAIに置き換わる時代に、地方自治や議会のあり方が変わるのは必然である。しかし、これは「議員をAIに置き換える」という単純な話ではない。今までの議員は、いずれ不要になるかもしれない。だからこそ、議員に問われているのは、流れに乗ることでも抵抗することでもない。「生成AIの時代に、私たちの民主主義をどうするのか」「地方自治・議会・議員は何のために存在するのか」その問いに自ら答えを出し、市民の前に示すことだ。

◆結び——AI時代の議会・議員に求められる覚悟

 生成AIは、地方議会の姿を確実に変え始めている。議事録の要約、答弁の下書き、政策分析。こうした自動化は、本来議員が最も大切にすべき「住民と向き合う時間」を生み出す可能性を持っている。その時間を何のために使うか、生成AIではなく、議員自身とその議員を選ぶ市民が決めることが大切だ。地方議会は今、静かに、そして確実に問い直されている。
 「一人ひとりの市民と向き合い、地域の未来を考え、最後に責任を負う」。この議員の本質は、いつの時代も変わることはない。だからこそ「AIにまだまだ議席は渡せない」。その覚悟を持った議員と市民が、私たちの民主主義を新しいステージに押し上げて行くに違いない。

 


## 出典一覧

※1
自治体におけるAI活用・導入ガイドブック
 https://www.soumu.go.jp/main_content/000820109.pdf P11 
※2 大阪市「Oasis」全庁導入(2024年4月)ニューラルオプト社まとめ記事(2025年7月)
 https://neural-opt.com/government-generative-ai-cases/ 
※3 横須賀市 生成AI実証実験(2023年4月〜)・本格運用(6月〜) テックタッチ社まとめ記事(2026年1月)  
 https://techtouch.jp/media/municipal/municipality-ai-utilization/
※4 自治体職員の約4割が「DXは民間より遅れている」 | テックタッチ株式会社調査(2025年、n=111名) 
 https://techtouch.jp/media/municipal/municipality-ai-utilization/
※5 浜田市議会 会議録作成時間を1/4に短縮 | Maniken(一般社団法人)ブログ(2025年8月)
 https://maniken.jp/blog/2812/ 
※6 茨城県取手市 AI答弁書支援システム導入(2024年9月) デジタル庁ニュース(2024年12月)
 https://digital-agency-news.digital.go.jp/articles/2024-12-24
※7 静岡県湖西市 月100時間削減   renue.co.jp(2026年4月)
 https://renue.co.jp/posts/municipality-council-response-ai
※8 市議会の活動に関する実態調査結果:令和6年中(全国市議会議長会)
  19 議会のICT化(地方議会に係る手続のオンライン化を除く)
  全議員を対象とするタブレット端末の導入状況(令和6年12月31日現在)
 https://www.si-gichokai.jp/research/jittai/1207910_1953.html
 

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著者

阿部 よしひろ

阿部 よしひろ

選挙 相模原市議会議員選挙 (2023/04/09) [当選] 6,421 票
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