2026/5/29
先日行った、富山県氷見市の視察について、所感を書き上げました。
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近年、全国の自治体において、公共施設の老朽化対策や公共施設再編に加え、地域活性化、交流人口創出、文化振興などを一体的に進める動きが広がっております。
そのような中、氷見市芸術文化館は、単なる文化施設ではなく、市民交流、地域活性化、防災、回遊性向上など、多面的な機能を持つ施設として整備されております。また、可動式ホールやアウトリーチ型事業、市民参加型事業など、特徴的な運営も行われております。
さらに、人口約4万人規模の自治体でありながら、高い稼働率を維持し、多数の来館者を集めており、開館から現在までに累計40万人超、今年のゴールデンウイーク期間だけでも1万人を超える来場者があった点も注目すべき点と感じます。
また、氷見市は、隣接する高岡市に北陸新幹線の停車駅である新高岡駅があるものの、氷見市自体は新幹線駅を有しておらず、必ずしも交通立地に大きく恵まれている地域とは言い切れません。
そのような条件下においても、文化施設を核として交流人口創出や地域活性化につなげようとしている点は大変興味深く、本市の今後の公共施設運営や地域活性化施策の参考とするため視察を行いました。
1 施設概要
氷見市芸術文化館は、旧市民病院跡地を活用し、市のグランドデザインの一環として整備された施設であります。
平成30年に、市のグランドデザインを描く中で、4つの公共空地のうちの一つである市民病院跡地(約20年未利用)を活用し、文化発信の拠点として整備する方針となったとの説明がありました。
つまり、本施設は単なる文化施設整備ではなく、都市の魅力向上や地域活性化を含めた都市戦略の一環として位置付けられていることを認識しました。
施設は市役所等に近接する中心市街地に立地しており、文化施設としてのみならず、地域交流や都市のにぎわい創出を担う拠点として位置付けられております。
施設整備にあたっては、市民アンケートを実施し、「音楽性の高いホール」を求める意見が多かったことから、音響性能を重視したホール設計となっております。
また、可動式座席による多用途型ホール、高い音響性能を持つシューボックス型ホール、青空広場を活用した交流空間、ZEB Ready導入による省エネ化、浸水対策を踏まえた高床構造などが特徴となっております。
2 事業費及び財源
総事業費は約52億円であります。
一方で、財源については、国交省補助金、環境省補助金、過疎債などを積極的に活用しており、市の一般財源負担は約2.2億円に抑えられております。
つまり、総事業費としては大規模であるものの、国庫補助や有利な地方債を最大限活用することによって、市の実質的な財政負担を大きく抑制している点が特徴的でありました。
特に、都市構造再編集中支援事業費補助金、二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金、過疎債などを組み合わせて財源構成を行っており、公共施設整備において、国制度をどのように活用するかが極めて重要であることを改めて認識しました。
また、ZEB Ready導入により、高熱費削減効果は約7割との説明がありました。
文化施設は、空調や舞台設備等によりエネルギー消費量が大きいことから、省エネ性能の確保は、今後の公共施設運営において重要な視点であると感じました。
3 運営体制
運営については、指定管理者制度を導入しております。
市としては、文化施設運営には専門性が必要であり、事業規模も大きく、直営では柔軟かつ継続的な運営が困難であるとの判断から、財団を設立し、専門人材を集めた上で運営を行っているとのことでありました。
なお、令和8年度からは、第2期となる5年間の指定管理期間に入っております。
また、文化事業については、公募により選定されたプロデューサーが企画運営に関わっており、その手腕が施設評価や集客に大きく影響しているとの説明がありました。
特に印象的であったのは、「文化施設は建物そのものよりも、どれだけ意欲を持って主催事業を行うかが重要である」という説明であります。
施設整備のみではなく、継続的に魅力ある事業を展開できる人材や組織体制が重要であることを強く認識しました。
また、現在は専門性の高い人材によって施設運営が支えられている一方で、今後5年から10年程度で世代交代期を迎えることから、次世代人材をどのように育成していくのかが大きな課題であるとの説明もありました。
4 利用状況及び事業展開
ホールは年間約300日のうち約200日利用されており、地方文化施設としては高い稼働率を維持しておりました。
また、平日昼間については、市民講座等の利用が多く、市民の日常利用が定着しているとの説明がありました。
一方、土日夜間については利用率が比較的低く、今後の課題とのことでありました。
また、子どもミュージカル、アウトリーチ活動、学校連携事業など、市民参加型・育成型事業にも力を入れており、地域に芸術文化を届ける取り組みが行われておりました。
特に、子どもミュージカルについては、単なるイベントではなく、次世代の文化人材育成という意味合いも大きいものと感じました。
年間事業収入は約9000万円、年間事業費は約3億3500万円、指定管理料は約1億4300万円との説明がありました。
文化施設運営は、単純な利用料収入のみで成り立つものではなく、指定管理料や自主事業、地元企業などからの寄付なども含め、総合的に運営されていることを認識しました。
また、各事業については、単独での収支だけではなく、施設全体として事業を成立させる考え方で運営されており、指定管理料の中に事業費も含めている点は特徴的でありました。
5 青空広場及び地域交流
青空広場については、イベント開催時にマルシェ等が実施されております。
特徴的であったのは、商工会等が主体となる形式ではなく、登録した市民や団体等が出店する仕組み、フリーマーケットのような形式となっている点であります。
NPO等も参加しており、市民主体の公共空間活用となっておりました。
また、以前にあった、富山県の観光キャンペーン時には、2日間で約3万2千人の来場があったとの説明もあり、交流人口創出にも一定の効果を上げていることがうかがえました。
さらに、イベントが成功することによって、地元テレビ局や新聞社等とも連携しながら事業を展開できるようになっており、情報発信力の向上や地域の注目度向上にもつながっているとの説明がありました。
6 現地視察を通じて確認した状況
視察当日は、はしもとみお木彫展が開催されておりました。
平日午後の視察でありましたが、来館者が絶えることはなく、実際に彫刻展会場にも多くの来館者がおりました。
また、来館者は高齢者中心という印象ではなく、若い世代の来館者も一定数見受けられました。館内全体として人の流れがあり、施設には活気がありました。
さらに、フリースペースでは、くつろいでいる市民の方や、勉強をしている学生の姿も見られ、市民の日常的な居場所として機能していることもうかがえました。
館内については、全体的にデザイン性が高く、空間そのものに魅力がありました。
施設内を歩くだけでも楽しめるような工夫が随所に見られ、落ち着いた雰囲気と居心地の良さを感じました。
また、青空広場についても、広々とした開放感があり、滞在したくなる空間であると感じました。
一方で、周辺地域については、漁業の町らしい静かな地域であり、商店街も存在していたものの、人通りは多くなく、施設内のにぎわいが周辺地域全体へ十分波及しているかについては、現時点では限定的にも感じられました。
7 防災機能
施設は浸水対策を考慮した高床構造となっており、防災訓練や備蓄等も実施されております。
一方で、指定避難所ではなく、一時避難的な機能を想定しているとのことでありました。
能登半島地震の際にも一時的な避難者受入れは行ったものの、その後は各地域の指定避難所へ移行したとの説明がありました。
8 課題について
視察において、専門人材の高齢化、若手人材不足、プロデューサー後継問題、若者や子育て世代利用の少なさ、将来の更新費用不透明、地域経済効果の評価不足などが課題として挙げられました。
特に印象的であったのは、「施設単体としては成功しているが、それが地域経済や観光、地域事業者への利益向上にどこまでつながっているか評価できていない」という点であります。
施設への来館者数や事業成果は一定程度確認できるものの、それが周辺商業や観光等と十分に連動しているかについては、まだ課題があるとのことでありました。
また、長期修繕計画については、施設が比較的新しいことや、他公共施設との調整等もあることから、現在はまだ策定されておらず、30年間の更新費用見込みについても未整理との説明がありました。
特に本施設は、可動席や舞台機構など専門性の高い設備を有していることから、今後の維持更新費用をどのように見込んでいくのかは重要な課題であると認識しました。
9 所感
今回の視察を通じ、氷見市芸術文化館は、単なる文化施設ではなく、「地域活性化を担う都市拠点」として整備・運営されていることを強く認識しました。
特に、市民参加型運営、アウトリーチ型事業、小中学校などを含め、地域に芸術を届ける取り組み、専門人材による運営、青空広場を活用した交流、文化を核とした地域活性化などは非常に参考になりました。
また、文化芸術館が市役所近接の中心市街地に立地していることから、施設そのものが地域のにぎわいや地域イメージに大きく影響していることも感じました。
さらに、氷見市は必ずしも交通立地に大きく恵まれている地域ではない中で、文化施設を核として交流人口を生み出し、多くの来館者を集めていることは、大変示唆に富むものでありました。
一方で、人材継承、若者参加、更新費用、地域経済との連動など、今後の大きな課題も見えてきました。
また、最も重要だと感じたのは、「文化施設は建物だけでは成立しない」という点であります。
どれだけ魅力的な施設であっても、運営する人材、地域との関係性、継続的な事業展開、市民参加がなければ、施設の価値を維持することは難しいと認識しました。
その意味で、公共施設を考える際には、建設費だけではなく、「運営」「人材」「地域との接続」まで含めて考える必要があることを改めて認識しました。
また、本市においても、知名度向上、交流人口・関係人口の増加、地域経済活性化、地域ブランド向上などを図る手法の一つとして、文化・芸術に関する取り組みを強化していく可能性について、今後さらに検討していく必要があると感じました。
北名古屋市において、現在ある施設や公共空間を工夫しながら活用し、事業内容や情報発信、地域との連携を強化していくことによって、大きな注目を集め、人を呼び込み、地域の活性化につなげていく可能性は十分あると感じました。
特に北名古屋市は、名古屋市近接という立地条件を有しており、やり方次第では交流人口や関係人口を増やす潜在力を持っていると認識しました。
今回の視察で得られた知見を、本市における公共施設運営、地域活性化施策、文化政策等に今後生かしていきたいと考えております。

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