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あの閣下から「お前も蝋人形にしてやろうか」言われかけた 【実録】・僕がテレビマンだった頃|第5話

2026/3/1

あの閣下から「お前も蝋人形にしてやろうか」と言われそうになった怖い話。

私がまだ30歳代の頃の本当の怖かった話

テレビ業界には、絶対に侵してはならない「聖域」がある。
それは、メイクを落とし、素顔に戻ったデーモン閣下を、決して「デーモンさん」と呼んではいけないという鉄の掟だ。

特にその時期、現場の緊張感は異常だった。
閣下の「素顔」が写真週刊誌にスクープされた直後で、レコード会社は機密保持に死ぬほど神経を尖らせていたからだ。

当時の私は、テレビ愛知の営業部員。
演歌番組や旅番組がメインの局で、異色の閣下を呼ぶのは至難の業だった。私はレコード会社との信頼関係を武器に、予算をあちこちからかき集めた。それでも足りない分は、自ら「責任セールス枠」として引き受け、無理やり番組を成立させた。
制作ではない。営業の執念と、文字通り「体」を張って形にした、私にとっての勝負番組だった。

事件は、その打ち上げの居酒屋で起きた。
テレビ愛知の社員は、私一人。局の看板と、番組成立までの全責任を一身に背負っていた私は、安堵とともに酒を煽り、つい目の前の穏やかな「田中さん(仮名)」に笑いかけてしまった。

……「デーモンさん、今日は本当にありがとうございました!」

その瞬間、居酒屋の空気がマイナス30度まで凍りついた。
フライデー騒動の直後である。レコード会社の担当者は顔色を変え、「村上さん、何てこと言うんですか!」と私を射抜いた。
(ああ、これでお前も蝋人形にしてやろうか、と業界から追放される……)
恐怖で体が硬直した。文字通り、自らが蝋人形になった瞬間だった。

だが、当の「田中さん」は動じなかった。
私の失礼を責めるどころか、そこから始まったのは、驚くほど知的で穏やかな「大人の会話」だった。何を話したかまでは酒の霧の向こうだが、あの圧倒的な「プロの懐の深さ」だけは、今も肌が覚えている。

幸いなことに、周囲の一般客に気づかれることもなく、事なきを得た。
思えば私は、ここ一番のギリギリのところで、不思議と切り抜けられる「強運」を持っていたのかもしれない。

数年後、局にバイトで来た若い女の子に、ふと聞かれた。
「あのデーモンさんの番組、もうやらないんですか? 私、大好きだったんです」

彼女は、目の前にいる私がその番組の仕掛け人だとは露ほども知らない。
私はただの「担当営業」だから、局の公的な制作記録に名前が残ることもない。

上層部は売上の数字しか見ていなかったが、私の無茶な仕事は、確かに誰かの心に届いていた。

結局、お仕置きの蝋人形にされることはなかったが、あの日、レコード会社に怒鳴られ、閣下の知性に触れた冷や汗まじりの夜こそが、私のテレビマンとしての誇りだったのだと思う。

[原点とこれからの活動]

テレビ業界に関わったきっかけ

僕が北名古屋に「ロケ」を呼びたい本当の理由

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