2026/2/17
北名古屋に映画、ドラマのロケを誘致したい村上さんせいです。
テレビ制作の現場は大変ではあったんですが、わくわくする世界でした。
北名古屋をちょっと自慢できる街にしたいのです。
■テレビマン村上さんせいの記憶
ずいぶん前の話ではありますが、わたしは確かにそこにいました。
ビートたけしさんに無視された『白い粉発射装置』――予定調和くそくらえの天才たちと、美術スタッフの涙
1982年、渋谷ビデオスタジオでの出来事。番組名は、日本テレビ系全国ネットで放送されていた『わっ!!ツービートだ』。
【リード文】
あの頃の渋谷ビデオスタジオ、そこには「テレビの教科書」なんて存在しなかった。出演者はビートたけしさん、片岡鶴太郎さん、ほか。演出はテリー伊藤(当時は伊藤輝夫)さん。日本テレビ系全国ネットのゴールデンタイムという大舞台で、彼らが求めていたのは、台本通りの正解ではなく、誰も見たことがない「ハプニング」そのものだった。
【職人の矜持を込めた装置】
私が所属していた『ル・オブジェ・アール・スタジオ』の先輩が、職人の矜持を込めて設計・製作した装置がそこにあった。
この収録のために作られた「白い粉発射装置」。レバーの引き加減、粉の飛び方、すべてを計算して作り上げられた逸品だ。リハーサルで、その使い方をたけしさんに直接説明したのが、末端の美術スタッフとして番組を担当していた私である。
説明を聞くたけしさんは「ああ、ううー」と頷いていた。準備は完璧なはずだった。
■破壊されたプラン
本番。台本では、たけしさんがレバーを引き、装置から勢いよく白い粉が発射されるはずだった。しかし、本番のランプが灯った瞬間、たけしさんは装置には目もくれなかった。
たけしさんは、装置の横に置かれていた予備の粉が入った「箱」をそのまま持ち上げると、鶴太郎さんの頭から豪快にぶちまけたのだ。
スタジオは爆笑の渦。末端のスタッフが用意した緻密な計算など、天才が放つ野性の笑いの前では無力だった。
■現場の笑い、会社の怒り
俺も笑った。理屈抜きに面白かったからだ。しかし、会社に帰れば「あんなに手間をかけた装置を使わせなかったのか」と叱責が待っていた。
当時は理不尽に感じたが、あれこそがテリー伊藤さんとビートたけしさんの「流儀」を目の当たりにした瞬間だったのだと、今なら痛いほどわかる。
■王者の背中と、新しい時代の産声
当時、テレビ界には絶対的な王者がいた。TBSの『8時だヨ!全員集合』だ。
緻密なセット、完璧なリハーサル、台本こそが正義であり、視聴率の鉄板だった時代。しかしその裏側で、テリー伊藤さんという演出家とビートたけしさんという演者は、視聴率で「打倒・全員集合」を虎視眈々と狙っていた。
私が担当した「白い粉発射装置」が無視されたあの日。それは、作り込まれた装置台本を軽々と飛び越えるかのように、現場の熱量だけで数字を獲りにいく「新しい時代のテレビ」が産声を上げた瞬間を、私は美術スタッフとして目撃していたのかもしれない。
ビートたけしさん、総合演出・テリー伊藤さんのタッグによる「予定調和を完全にぶち壊すスタイル」は、後に日本テレビの伝説的バラエティ番組『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』へと繋がっていくこととなる。『わっ!!ツービートだ』の収録スタジオの片隅で、テレビ制作の革命的変化は、使われずに転がっていた装置のすぐ横から始まっていたのだ。
■エピローグ
Wikipediaを引けば、野球中継があればそちらが優先されるという事情もあり、わずか半年、14回で終了という記録が出てくる。
けれど、その14回分の収録に立ち会い、美術スタッフとして現場の末端を支えた私の中には、記録には残らないスタジオの「熱」が確かに刻まれている。
魁三太郎さんたちと無駄話をした記憶もある。何を話したかはもう覚えていないが、出番のない装置の横で過ごしたあの時間は、間違いなく私がテレビという怪物の「歴史の証人」となった時間だった。
半年という短期間だったからこそ、そこには純度100%の狂気が凝縮されていた。
予定調和をぶっ壊し、黄金時代を切り拓いていった天才たち。その時間と空間の片隅に、私は確かにいた。
あの現場で、最後まで使われなかった「白い粉発射装置」を抱えていたのは、間違いなく私だったのだ。
※本記事は当時の現場を体験した筆者個人の記憶に基づく回想です
著作制作:村上さんせい | 北名古屋にロケを呼ぶ会(元テレビマン 村上三清後援会)
[原点とこれからの活動]
【元テレビマン・村上さんせいの「本音」をもっと知る】
公式HP: 北名古屋をドラマチックに変える、具体的な政策はこちら
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ムラカミ サンセイ/68歳/男
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