2026/6/20
先日、武豊町が主催する職員向けの財政研修に、参加させていただきました。
ありがたかったのは、町が職員研修の場に、私たち議員有志やNPO団体にも声をかけてくださったことです。
立場も役割も異なる多様なメンバーが、同じ卓を囲んで一緒に学ぶ。この座組みそのものが、後から振り返れば今回の研修の核心だったように思います。
題材となったのは、財政シミュレーションゲーム「SIMふくおか(シミュレーションふくおか)」。
講師は、元福岡市職員で全国の自治体に財政出前講座を届けてこられた今村寛さんです。
正直に申し上げると、「財政」という言葉には、数字と専門用語が並ぶ近寄りがたさがあります。
議員として決算審査に向き合う立場でありながら、私自身、どこかで「これは担当部署の領域だ」と線を引いていた部分があったかもしれません。
しかし、このシミュレーションが突きつけてきたのは、まったく別のものでした。
限られた財源の中で、何を残し、何を見直すのか。
一つの事業に予算をつければ、別のどこかを諦めなければならない。
住民サービス、インフラの維持、新しい挑戦——どれも大切で、どれも切り捨てがたい。
その重い選択を、立場を越えた多様なメンバーで議論する中で、
何度も「あちらを立てればこちらが立たず」の壁にぶつかりました。
正解はありません。
けれど、だからこそ手が動く。
「なぜそれを残すのか」「何を基準に諦めるのか」を言葉にしなければ、一歩も前に進めないのです。
ここで一つ、大切な気づきがありました。
このゲームは、武豊町の未来を正確に予測するためのものではない、ということです。
人口がどう動くか、経済がどう変わるか、災害がいつ来るか——未来は、誰にも予測できません。
では、何のために学ぶのか。
未来は予測できない。けれど、対策は考えられる。
シミュレーションが鍛えてくれるのは、まさにこの「対策を考える力」の下地でした。
どんな未来が来ても慌てないための、判断の型。
優先順位のつけ方。
トレードオフと向き合う胆力。
一発勝負の予言ではなく、何度でも応用が利く「考え方」そのものを、体に通すための訓練だったのです。
天気は予報できなくても、傘を持つかどうかは決められる。
財政もそれと同じで、未来図を描くことより、
どんな天気にも対応できる備えの思考を持つことのほうが、
はるかに実践的なのだと気づかされました。
そしてもう一つ。
「これからの武豊町を、どんなまちにしていきたいのか」
この問いを共有しない限り、どんな数字の操作も意味を持ちません。
逆に言えば、その問いさえ共有できれば、財政の議論は対立ではなく、未来をともに描く作業に変わる。
今村さんとの対話を通じて、私はそのことを腑に落とすことができました。
議員と職員は、しばしば「チェックする側/される側」として
敵と味方に近い感覚で捉えられがちです。
けれど本来、私たちが向き合うべき相手は互いではなく、まちの未来そのものであるはずです。
決算審査の場でこの感覚を持てているかどうかで、審議の深さはまったく変わってくるでしょう。
今回の研修は、その当たり前を改めて思い出させてくれました。
今回の研修が豊かだったのは、まさにこの「多様なメンバー」という座組みにあったと思います。
職員、議員、NPO——それぞれ見ている景色が違うからこそ、同じ財源の使い道をめぐっても、出てくる問いが違う。
その違いがぶつかり、混ざり合う中で、一人では決してたどり着けない視点が生まれていきました。
立場の違いは、対立の種ではなく、対話を豊かにする資源なのだと実感しました。
こうした場を、職員研修という枠を開いて用意してくれた武豊町の姿勢そのものに、まちづくりの希望を感じています。
うれしいことに、研修の後、今村さんとはSNSでもつながらせていただきました。
全国を回りながら財政の学びを届け続けている方と、一過性の研修で終わらず、これからもゆるやかにつながっていける。
これは私にとって、知識以上に大きな財産です。
地域を越えて学び合えるネットワークこそ、変化の激しい時代を渡っていく羅針盤になると感じています。
私自身、外部の学びの場やAIの活用を「習い性」にしていきたいと考えているところでした。
今回の出会いは、その背中を押してくれるものでもありました。
私は、議会という場で「次の50年」をどう設計するかを問い続けたいと考えています。
財政を学ぶことは、そのための共通言語を持つことに他なりません。
未来は予測できなくとも、備える思考は鍛えられる。
今回得た気づきを、これからの議会活動と、職員の皆さんとの対話に活かしてまいります。
学びの場を開いてくださった武豊町、ご一緒したNPOの皆様と職員の皆様、
そして貴重な学びをくださった今村寛さんに、心より御礼申し上げます。
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ホーム>政党・政治家>谷川 健一郎 (タニガワ ケンイチロウ)>財政を「自分ごと」にする——SIMふくおかが教えてくれた、対話という原点