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【市川市】下水道接続「おおむね1年」は義務?公式動画を検証

2026/5/15

公式動画に残る、法律上の義務と「お願い」の混同

5月14日午前10時半から正午まで、東部公民館で、市川市の下水道に関する説明会が開催されました。

今回の説明会では、私道への下水道管敷設、共有者の総意、助成制度など、いくつか重要な論点がありました。

しかし、まず問題にすべきなのは、下水道への接続期限についての市川市の説明です。

市川市は、下水道への接続について、

「汲み取り便所は3年以内」
「浄化槽はおおむね1年以内」

と説明しました。

この説明は、説明会だけでなく、市川市公式チャンネルの動画でも確認できます。市川市公式ページにも、公共下水道事業説明会で上映している動画と配布資料を掲載していると説明されています。つまり、これは一職員の言い間違いではなく、市川市が市民向けに用意している公式説明です。

市川市公式チャンネル「【知ってる?下水道①】宅内から公共下水道への接続工事について」より。
「公共下水道が供用開始されたら遅滞なく」と説明したうえで、「汲み取りからの改造切替の場合:3年以内」「浄化槽からの場合:おおむね1年以内」と並べている。

問題は、「おおむね1年以内」と書かれていること自体ではありません。

問題は、下水道法上の接続義務を説明する流れの中で、法律上の「遅滞なく」法定期限である「3年以内」、そしてお願いベースと考えられる「おおむね1年以内」を、同じ画面に並べていることです。

これは、市民に対して、浄化槽も「おおむね1年以内に接続しなければならない義務」があるかのような誤解を与える説明です。


法律上の構造はどうなっているのか

市川市の公式ページでは、公共下水道の接続義務について、建物所有者は公共下水道が使用できるようになった日、つまり供用開始日から「遅滞なく」排水設備を設置し、公共下水道へ接続することが下水道法で義務づけられていると説明しています。

さらに、汲み取り便所の建物については、供用開始の日から3年以内に水洗トイレへ改造することが義務づけられていると説明しています。

つまり、法律上の構造はこうです。

公共下水道が供用開始されたら、遅滞なく接続する。
これは下水道法上の接続義務です。

汲み取り便所は、3年以内に水洗便所へ改造する。
これも法律上の明確な期限です。

下水道法10条は、公共下水道の供用開始後に「遅滞なく」排水設備を設置する義務を定め、同法11条の3は、くみ取り便所について3年以内の水洗便所への改造義務を定めています。

では、浄化槽についての、

「おおむね1年以内」

は何でしょうか。

浄化槽について、「1年以内に接続しなければならない」という明確な法定期限は、市川市の公式説明でも示されていません。

しかも、「おおむね」という言葉を使っている時点で、これは法律上の厳密な期限ではありません。

法律上の期限であれば、「おおむね」などという曖昧な言葉にはなりません。


助成制度の「1年以内」とも別問題である

ここで、市川市側が説明として持ち出し得るのが、私道下水道工事の助成制度に出てくる「1年以内」です。

しかし、これも別問題です。

市川市の資料では、私道下水道工事の助成要件として「下水道を利用できるようになってから1年以内に申請を行うこと」と明記されています。

助成制度の申請期限なら、期限は明確に決まります。

そこで使われる表現は、「1年以内」です。

「おおむね1年以内」ではありません。

「おおむね」という言葉が入っている時点で、それは助成制度の厳密な申請期限でも、法定期限でもなく、市川市が早期接続を求めるためのお願いベースの目安と見るべきです。

つまり、市川市公式動画の説明では、次の3つが同じ画面に並べられています。

下水道法上の接続義務。
汲み取り便所の法定3年期限。
浄化槽についてのお願いベースの“おおむね1年”。

この3つを同じ棚に置いて説明すること自体が問題です。


丁寧な行政説明とは何か

ここで、市民に対する丁寧な行政説明とは何かを確認しておく必要があります。

丁寧な行政説明とは、敬語を使うことではありません。

市民が判断するために必要な情報を、法律上の性質ごとに分けて、誤解が生じないように説明することです。

少なくとも、次の4点が必要です。

1つ目。法律上の義務なのか、行政からのお願いなのかを明確に分けること。

2つ目。義務であるなら、根拠となる法律・条例・規則を示すこと。

3つ目。お願いであるなら、従わなかった場合に法的な不利益があるのかないのかを説明すること。

4つ目。費用負担や個別事情がある場合、市民が冷静に判断できるように説明すること。

これは単なるマナー論ではありません。

行政手続法は、行政指導について、行政機関の任務や所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと、そして行政指導の内容が相手方の任意の協力によって実現されるものであることに留意しなければならないと定めています。

今回の市川市の説明を、直ちに行政手続法違反と断定するものではありません。

しかし、行政が市民に何かを求める以上、少なくともこの考え方は尊重されるべきです。

お願いなら、お願いだと分かるように説明する。

義務なら、義務の根拠を示す。

この区別を曖昧にしてはいけません。


公務員は「全体の奉仕者」である

公務員は、憲法上「全体の奉仕者」です。憲法15条は、公務員を選定し、罷免することは国民固有の権利であり、すべて公務員は全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではないと定めています。

つまり、市民は行政に従属する存在ではありません。

主権者は国民です。

市職員が市民に何かを求めるのであれば、法律上の根拠を示し、義務とお願いを分けて説明する必要があります。

「市民に協力してほしい」

それ自体は当然あるでしょう。

しかし、協力してほしいなら、協力をお願いすべきです。

法律上の義務の説明の中に、お願いベースの目安を紛れ込ませ、市民に「義務なのだ」と思わせるような説明をしてはいけません。


市川市公式動画のどこが問題なのか

市川市公式チャンネルの動画では、下水道法上の接続義務を説明する流れで、次のように表示されています。

公共下水道が供用開始されたら遅滞なく
汲み取りからの改造切替の場合:3年以内
浄化槽からの場合:おおむね1年以内

この並べ方が問題です。

「公共下水道が供用開始されたら遅滞なく」は、下水道法上の接続義務です。

「汲み取りからの改造切替の場合:3年以内」も、法律上の明確な期限です。

しかし、「浄化槽からの場合:おおむね1年以内」は、法律上の明確な期限ではありません。

この3つを同じ画面に並べれば、市民はどう受け取るでしょうか。

多くの市民は、

「浄化槽も、おおむね1年以内に接続しなければならないのだ」

と受け取ります。

市川市が「お願いのつもりだった」と言うなら、なおさら問題です。

  1. お願いなら、なぜ「お願い」と明記しなかったのでしょうか。
  2. なぜ「法律上1年以内という期限はありません」と説明しなかったのでしょうか。
  3. なぜ、法定期限である汲み取り便所の3年と同じ画面に並べたのでしょうか。

この3つの質問に、市川市は答える必要があります。


新築分譲で新品同様の浄化槽を持つ家庭にも圧力になる

さらに、この説明が問題なのは、対象エリアの中には、新築分譲で新品同様の浄化槽を持つ家庭もあるという点です。

古くなった浄化槽を長く使い続けている家庭であれば、市が早期接続をお願いする事情は、まだ理解しやすいかもしれません。

しかし、新築分譲で設置されたばかりの浄化槽を持つ家庭は、その設備を一定期間使う前提で住宅を購入しているはずです。

それにもかかわらず、市川市が、

「浄化槽からの場合:おおむね1年以内」

と表示すれば、住民はどう感じるでしょうか。

「まだ新品同様の浄化槽なのに、1年以内に下水道へ接続しなければならないのか」

と受け止めてしまいます。

公共下水道への接続工事には費用がかかります。市川市の資料でも、公共下水道が整備された後、下水道へ接続するための浄化槽からの切り替え工事や汲み取り便所から水洗便所への改造費用は、工事をする人の負担になると説明されています。

つまり、これは単なる注意書きではありません。

市民に費用負担を伴う判断を迫る説明です。

その場面で、法定期限ではない「おおむね1年以内」を、法律上の義務や法定期限と同じ場所に置く。

これは、市民に対する不当な心理的圧力になりかねません。

市川市が本当に早期接続をお願いしたいのであれば、こう説明すべきです。

浄化槽については、法律上1年以内という期限があるわけではありません。
ただし、市としては、公共下水道の整備効果を高めるため、できるだけ早い接続をお願いしています。
新築分譲などで浄化槽が新しい場合もあると思いますが、市としては、おおむね1年以内を目安にご協力をお願いしたいと考えています。

これなら「お願い」です。

しかし、実際の表示はそうなっていません。


「お願い」を義務に見せる説明手法は高圧的である

私は、これまで児童相談所問題を通じて、お願いベースの行政指導が、まるで法律上の義務であるかのように使われる場面を見てきました。

書面を出さない。

根拠を示さない。

しかし、行政の立場を使って、市民に従わざるを得ない空気を作る。

これは、公務員として最低限守るべきルールを踏み外しています。

今回の市川市の説明にも、同じ構造があります。

市川市は、法律上の接続義務を説明します。

次に、汲み取り便所の法定期限である3年を示します。

そこに、浄化槽の「おおむね1年以内」を並べます。

すると、市民の頭の中では、「おおむね1年以内」も義務のように変換されます。

これが問題です。

市川市が頭を下げてお願いするのではなく法律上の義務の説明の中に紛れ込ませることで市民に「そうしなければならない」と思わせているように見えるからです。

このような説明は、行政と住民の信頼関係を損ないます。


市川市が答えるべき質問

市川市が今後この説明を正当化するなら、少なくとも次の点を明確に説明する必要があります。

1つ目。浄化槽について「おおむね1年以内」とする法令・条例・規則上の根拠はどこにあるのか。

2つ目。法定期限ではないなら、なぜ「お願い」と明記しなかったのか。

3つ目。なぜ汲み取り便所の法定3年期限と同じ画面に並べたのか。

4つ目。新築分譲で新品同様の浄化槽を持つ家庭にも同じ説明をする合理的理由は何か。

5つ目。「おおむね1年以内」を過ぎた場合、どのような法的不利益があるのか。ないなら、なぜそれを説明しなかったのか。

この問いに答えられないのであれば、市川市は説明資料と公式動画を修正すべきです。


市川市は説明資料と公式動画を修正すべき

市川市は、今後の説明会、配布資料、公式動画において、少なくとも次の点を明記すべきです。

汲み取り便所の3年以内は、法律上の期限である。

浄化槽のおおむね1年以内は、法律上の期限ではなく、市からの早期接続のお願いである。

助成制度の1年以内は、助成制度の申請期限であり、浄化槽の一般的な接続義務の期限ではない。

おおむね1年以内を過ぎても、それだけで直ちに法定期限違反になるものではないなら、その点を明記する。

この4つを分けて説明しなければ、市民は正しく判断できません。

市民に必要なのは、義務であるかのように思わせる説明ではありません。

必要なのは、法律上どこまでが義務で、どこからがお願いなのかを明確に分けた説明です。

市川市には、主権者である市民に対して、法律上の義務とお願いをきちんと分けた、誠実な説明を求めます。

「おおむね1年以内」という曖昧な言葉を、法律上の義務や法定期限と同じ画面に並べるべきではありません。

それは、市民に対する丁寧な説明ではなく、お願いを義務のように受け取らせる高圧的な説明手法です。

市川市は、公式動画と説明資料を修正し、市民に誤解を与えない説明へ改めるべきです。

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著者

たか さん

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肩書 令和6年行政書士試験合格者、千葉県登録養育里親、メンタル心理カウンセラー、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、千葉県市川市中央倫理法人会幹事
党派・会派 無所属
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