鈴木 まゆみ ブログ

核融合施設視察報告書

2026/3/22

1. 視察概要

  • 視察先: 自然科学研究機構 核融合科学研究所
  • 所在地: 岐阜県土岐市下石町322-6
  • 視察日時: 令和8年(2026年)1月9日(金)
  • 視察目的:核融合エネルギーの調査および将来の発電に向けた技術的課題を確認すること。

地上の太陽が創る未来のエネルギー

1. はじめに:なぜ今「核融合」なのか?

私たちが豊かな生活を送り続けるために、エネルギーの確保は最優先課題です。しかし、現在頼り切っている化石燃料には、避けられない「終わりの時」が近づいています。

エネルギー資源の可採年数(推計)

  • 石炭: 139年
  • 天然ガス: 49年
  • 石油: 54年
  • ウラン: 130年 (出典:BP統計2021/URANIUM 2022)

新興国の発展により世界のエネルギー消費は増え続けています。太陽光や風力といった再生可能エネルギーは、環境負荷の少ない優れた電源ですが、それら単体では「産業や都市機能を支え続ける、大規模かつ安定的な電力供給」を実現するには課題が残ります。そこで、基幹電源の切り札として世界中から注目されているのが「核融合エネルギー」です。

核融合科学研究所は、平成元年(1989年)に文部省直轄の研究所として創立しました。立ち上げメンバーは、博士研究者100名と大学生50人、技術者50人。国内唯一の核融合研究を専門とする大学共同利用機関として、全国の大学と連携する「知のハブ」となり、この究極のエネルギー実現をリードしています。

2. 核融合の仕組み:ミクロな原子核が解き放つ巨大なエネルギー

核融合とは、太陽が50億年以上も輝き続けているエネルギーの源を、地上で再現しようとする壮大なプロジェクトです。80年の研究を重ね、そのままの再現は無理なので一部を実現しようとしているプロジェクトです。

質量が消えてエネルギーに変わる:D-T反応

核融合反応の中でも、最も起こしやすいのが水素の仲間である「重水素(D)」と「三重水素(T)」を用いるD-T反応です。軽い原子核同士が合体して別の原子核に変わる際、実は「反応前よりも質量がわずかに減少」します。アインシュタインの数式 E=mc^2 に基づき、その失われた極微量の質量が、想像を絶する巨大なエネルギーとなって解放されます。

「秒速1,000km」の激突とプラズマ

原子核はプラスの電気を持っているため、互いに強く反発し合います。この反発力に打ち勝って合体させるためには、原子核を秒速1,000km以上という超高速で衝突させなければなりません。この過酷な反応環境で現れるのが、物質の第4の状態「プラズマ」です。プラズマは、固体・液体・気体に続く状態で、温度が10,000℃を超えると原子核と電子がバラバラに飛び回るようになります。実は私たちの身近にあるオーロラ蛍光灯もプラズマの一種。核融合では、このプラズマを「1億度以上」に加熱し、磁場で空中に浮かせながら閉じ込める技術が必要となります。

核分裂との対比

  • 核融合: 軽い原子核(水素など)が「くっつく」反応。燃料供給を止めれば停止する。
  • 核分裂: 重い原子核(ウランなど)が「分かれる」反応。現在の原子力発電の仕組み。(原子力発電所は現在世界に430基存在。)

3. 世界最大級の実験装置:大型ヘリカル装置(LHD)の全貌

世界最大級の超伝導プラズマ閉じ込め装置が「LHD(Large Helical Device)」です。

LHDの主要スペック

項目 詳細スペック
装置の外径 / 高さ 13.5 m / 9.1 m
総重量 1,500 t
プラズマ体積 30 m^3
磁場強度 3 T(3万ガウス)
総加熱電力 36 MW(3万6000キロワット)
最高イオン温度 1.2億度 (10 keV)
最高電子温度 2.4億度 (20 keV)

世界が注目する「ヘリカル方式」

プラズマを閉じ込める方式にはいくつか種類がありますが、LHDが採用している「ヘリカル方式」は、ねじれたドーナツ型の超伝導コイルで強力な磁場のカゴを作る日本発の独自技術です。 フランスで建設が進むトカマク方式の「ITER(国際熱核融合実験炉)」や、ドイツの「W7-X(ベンデルシュタイン7-X)」と並び、LHDはその圧倒的なスケールと実績で世界を牽引しています。特に、コイル自体で磁場を作るため、プラズマに電流を流す必要がなく、装置を長時間安定して動かす「定常運転」に適しているのが最大の特徴です。

1998年からスタートし、年間一万回の実験を行うそうです。2,017年の14万回目の時にイオン温度1億度を達成したそうです。(イオン温度はどのようにして計測するのですかと質問しました。→温度計で測れないため、指標となる星の色を再現し、中性子の色で温度を判定するとのことでした。)1月9日現在は200,252回の実験数で、一回にかかる費用は30万円。年間30億円の予算が付いているそうです。

実験は2025年12月25日に完遂し、世界最長の47分間の定常運転が実現されました。2番目の記録はフランスの22分間。

4. 多角的な研究アプローチ:10の専門ユニット

核融合の実現は、一分野の技術だけでは達成できません。核融合科学研究所では10の専門ユニットが融合し、一つの目標に挑んでいます。

  • 構造形成・持続性 / メタ階層ダイナミクス: 生き物のように複雑に動くプラズマの「非平衡プラズマ」や「自発的な構造形成」を解明し、安定して閉じ込めるための法則を探求します。
  • 位相空間乱流 / プラズマ量子プロセス: 粒子レベルの不規則な動き(乱流)を捉えるとともに、宇宙空間にも存在するプラズマの原子分子データを構築。挙動を精密に予測します。
  • 可視化センシング / 複合大域シミュレーション: スーパーコンピュータを用いた大規模計算により、実験困難な領域を仮想空間で再現。VR(仮想現実)技術を駆使して、プラズマの深部を視覚化します。
  • プラズマ・壁相互作用 / プラズマ装置学: 1億度の熱を受ける「ダイバータ(灰出し装置)」の研究。過酷な環境に耐える壁の設計や、反物質プラズマといった高度な制御技術を開発します。
  • 超伝導・低温工学 / 超高流束材料: 強力な磁場を作るコイルを冷やす「液体ヘリウム」の技術や、AIを用いた異常検知による安全監視、極限環境に耐える新材料の開発を進めています。

5. 核融合発電がもたらす3つの革新的メリット

核融合発電は、これまでのエネルギーの常識を根底から覆します。

  1. 【燃料の豊富さ】:自国でエネルギーをまかなえる 燃料となる重水素は海水中に無尽蔵にあります。わずか「3リットルの海水」「スマートフォンの電池1/3個分のリチウム(0.3g)」があれば、日本人1人が1年間に消費する電力(約7,500kWh)を全て賄うことができます。
  2. 【高い安全性】:暴走や爆発は起こらない 核融合反応は非常に繊細で、燃料は必要な分だけを注入して発電する「オンデマンド方式」です。何か異常があれば、燃料供給を止めるだけで反応が即座に停止します。物理的にチェルノブイリのような暴走が起こり得ない仕組みです。
  3. 【クリーンな環境性】:CO2排出ゼロ 発電プロセスで二酸化炭素(CO2)を一切排出しません。温暖化対策の切り札となる、持続可能で環境負荷の少ない究極のクリーンエネルギーです。

6. 結び:持続可能な社会の実現に向けて

核融合エネルギーは、もはや遠い未来の夢ではなく、緻密な学術研究とLHDという巨大な実験装置によって実現可能なところまで来ているようです。

核融合科学研究所(NIFS)は、全国の大学の研究者が集い、交流する「大学共同利用機関」として、まさに日本の核融合研究の心臓部となっています。2025-2026年以降の展望を見据え、ここは次世代を担う学生や若い研究者たちが、人類の未来を左右する課題に挑む学びの場でもあります。

マスコットキャラクターの「ヘリカちゃん」が導くように、核融合の扉は未来に向けて大きく開かれています。地上の太陽が私たちの街を灯す日は、すぐそこまで来ています。

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著者

鈴木 まゆみ

鈴木 まゆみ

肩書 焼津市議会議員
党派・会派 参政党

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