2026/6/4

日高市議会議員のヨコオ貴文です。
皆さんは、普段どれくらい公共交通を利用しているでしょうか。
日高市内には、JR八高線、JR川越線、西武鉄道池袋線の鉄道駅があり、民間路線バスやタクシーも運行しています。そこに令和7年4月から、「おでかけタクシー」と「おでかけワゴン」が加わりました。
令和8年6月号の「広報ひだか」でも、「『おでかけ』をもっと身近に 日高市の地域交通が動き出す」として特集が組まれています。おでかけタクシーはすでに登録者が7,000人を超え、日々登録が増えているとのことです。
>>広報ひだか2026年6月号の特集「おでかけ」をもっと身近に 日高市の地域交通が動き出す
私は、この動きを単に「新しい交通手段ができた」という話だけで捉えるべきではないと思っています。むしろ、日高市がこれからも安心して暮らし続けられるまちであるために、公共交通をどう守り、どう育てていくのかという、大きなまちづくりのテーマとして考える必要があります。
公共交通というと、車を持っていない人や高齢者のためのもの、というイメージを持つ方もいるかもしれません。
もちろん、通院や買い物に不便を感じている方、運転免許証の返納を考えている方にとって、移動手段の確保は切実な問題です。しかし、公共交通の役割はそれだけにとどまりません。
学生の通学、子育て世帯の移動、家族の送迎負担の軽減、通院、買い物、地域活動への参加、観光や市内消費にも関わります。今は車で自由に移動できる方であっても、将来、自分自身や家族が公共交通を必要とする場面が来るかもしれません。
つまり公共交通は、「今使っている人」だけのものではありません。「いつか使うかもしれない私たち全員」に関わる、暮らしの基盤です。
日高市が令和7年3月に策定した「日高市地域公共交通計画」では、市の公共交通について、高齢化の進行により重要性が増している一方で、コロナ禍による利用者の減少や交通事業者の担い手不足などにより、維持が大きな課題になっていると整理されています。
計画期間は令和7年度から令和11年度までの5年間、対象区域は日高市全域です。そして基本方針として、「人口減少社会下においても、おでかけ機会の確保を通じて『選ばれ続けるまち』をつくる」と掲げています。
この基本方針は、とても重要だと思います。公共交通は、単なる移動手段ではありません。外出の機会を守ることは、健康、交流、買い物、地域活動、学び、働くことを支えることでもあります。移動しやすいまちは、暮らし続けたいまち、選ばれるまちにつながっていきます。
日高市地域公共交通計画の概要版では、さらに踏み込んだ現状も示されています。日高市では、市街化調整区域に人口の約半数が居住しており、基幹的公共交通の徒歩圏内の居住人口割合は50.6%とされています。言い換えれば、市民の半数近くが、鉄道駅やバス停留所の徒歩圏外に住んでいるということです。
日高市は、自然が近く、落ち着いた住環境がある一方で、自家用車を前提とした暮らし方が広がってきたまちでもあります。これは日高市の良さでもあり、同時に将来への課題でもあります。
車があるうちは問題になりにくいことも、年齢を重ねたり、家族構成が変わったり、運転が難しくなったりしたときに、一気に暮らしの不安に変わります。
「病院に行きたい」
「買い物に行きたい」
「駅まで出たい」
「地域の集まりに参加したい」
こうした日常の移動が難しくなることは、単なる不便ではありません。外出機会の減少は、健康、孤立、地域とのつながり、生活の質にも影響します。だからこそ、公共交通は福祉、健康、まちづくり、地域経済にもつながる政策課題なのです。
この問題は、日高市だけのものではありません。
国土交通省も、地域公共交通を取り巻く環境について、人口減少、モータリゼーション、ライフスタイルの変化、担い手不足などを背景に、全国各地で厳しい状況が生じているとしています。
特に近年は、バス、タクシー、乗合タクシー、公共ライドシェアなどの移動手段を、地域住民や来訪者が十分に利用できない「交通空白」の解消が国の政策課題にもなっています。令和6年7月には、国土交通省に「交通空白」解消本部が設置され、自治体や交通事業者、民間企業などが連携する仕組みづくりも進められています。
令和8年度の国の事業でも、「交通空白」の課題がある地域において、デマンド交通、乗合タクシー、公共ライドシェアなどの新たな交通サービスの導入、また医療・福祉・教育など他分野と連携して移動手段を支える仕組みの構築が対象とされています。
こうした国の動きから見ても、日高市の公共交通の見直しは、全国的な地域交通の再構築という流れの中にあります。
「おでかけタクシー」は、一般的なタクシーのように電話で予約したり呼んだりすることができる一方で、乗降場所が自宅または指定された乗降ポイントに限られる、バスとタクシーの中間的な仕組みです。
市内在住の16歳以上の方が、事前に利用登録をしたうえで利用できます。利用日の3日前から予約が可能で、市内の高麗川交通有限会社、日高ハイヤー株式会社に直接連絡して利用します。
乗降ポイントは市内370地点に設定されており、市役所、郵便局、医療施設、福祉施設、学校、文化施設、観光施設、商業施設、金融機関、飲食店などが含まれます。
大きな特徴は、使い慣れたタクシー車両を活用していることです。各地ではAIオンデマンド交通などの新しい仕組みも導入されていますが、日高市の場合は、市民の皆さんが抵抗感なく使いやすいことを重視した制度設計になっています。
また、市内鉄道駅で降車し、鉄道や路線バスへ乗り継ぐ場合には、利用料金から200円の乗継割引が設けられています。これは、タクシー、鉄道、路線バスを競合させるのではなく、つなげて使うことを意識した仕組みです。
令和8年6月号の広報ひだかに掲載された谷ケ﨑市長と日高市地域公共交通協議会会長で埼玉大学名誉教授・日本大学客員教授の久保田尚氏の対談でも、バス路線とタクシーが競合するのではなく、うまく接続する形を模索したことが語られています。事業者にも「市民の足を支えるパートナー」として協力してもらうという視点は、これからの公共交通政策にとって非常に大切だと感じます。
>>広報ひだか2026年6月号の特集「おでかけ」をもっと身近に 日高市の地域交通が動き出す
「おでかけワゴン」は、令和7年4月から民間路線バスの代替交通手段として実証運行が始まり、令和8年6月1日から本格運行に移行しました。
おでかけタクシーと違い、事前登録や事前予約は不要です。決められた停留所とダイヤに沿って運行するため、バスに近い使い方ができます。
令和8年5月11日改正のダイヤでは、午前6時台から午後8時台まで運行され、高麗川駅系統は1日24往復、武蔵高萩駅系統は1日22往復とされています。高麗川駅系統はこま川団地から高麗川駅方面へ、武蔵高萩駅系統はこま川団地から武蔵高萩駅方面へつながっています。
また、ワゴン車両で運行し、乗車定員を超える場合は一般タクシーで対応する仕組みも用意されています。大型バスでは維持が難しい地域でも、地域の実情に合わせた車両とルートで、生活に必要な移動を確保する。こうした柔軟な仕組みは、今後の地域交通を考えるうえで大切なあり方になると思います。
公共交通を考えるうえで、避けて通れないのが運転士不足です。
広報ひだか令和8年6月号でも、「市民の暮らしを支える地域交通の担い手になりませんか」として、路線バスやタクシーの運転士不足が取り上げられています。人口減少、少子高齢化、マイカーの普及、ライフスタイルの変化により、路線バスは輸送需要そのものが減少してきました。さらに運転士不足を理由に、全国各地で減便や廃止が相次いでいます。
>>広報ひだか2026年6月号の特集「おでかけ」をもっと身近に 日高市の地域交通が動き出す
タクシーについても、運転士数は減少傾向にあり、平均年齢も高く、担い手確保が喫緊の課題とされています。
日高市では、運転士確保を目的として、合同就職相談会の開催や公共交通事業者に対する第二種免許取得費用の補助制度を開始しています。
公共交通は、「利用したい人がいる」だけでは成り立ちません。運転する人、運行する事業者、制度を支える行政、そして利用する市民がいて初めて維持されます。
だからこそ、公共交通政策は単に「便数を増やしてほしい」「料金を安くしてほしい」という要望だけでなく、どうすれば持続可能な仕組みにできるのかを、現実的に考える必要があります。
もう一つ大切なのは、公共交通だけですべてを解決しようとしないことです。
日高市地域公共交通計画では、持続的に移動を支えるための体制づくりとして、既存公共交通への支援だけでなく、地域おたすけ隊、地域自主運行事業、福祉施策との連携、ボランティアサポーターの養成、民間事業者との連携なども位置づけられています。
これは、非常に現実的な考え方だと思います。
鉄道、路線バス、タクシー、おでかけタクシー、おでかけワゴン、福祉交通、地域の支え合い。これらをそれぞれ別々の仕組みとして見るのではなく、日高市全体の移動を支えるネットワークとして組み合わせていくことが必要です。
たとえば、駅やバス停まではおでかけタクシーで行き、そこから鉄道や路線バスに乗り継ぐ。日常的な通院や買い物にはおでかけタクシーを使う。決まったルートではおでかけワゴンを使う。公共交通だけでは届きにくい部分は、地域の支え合いや福祉施策と連携する。
こうした組み合わせによって、日高市らしい地域交通をつくっていくことが重要です。
今回の取り組みは大きな前進です。一方で、始めたからこれで終わり、ではありません。
これから大切なのは、実際にどの地域で、どの世代が、どの目的で利用しているのかを丁寧に把握することです。通院、買い物、通学、駅へのアクセス、公共施設への移動など、市民の生活実態に合った制度になっているのか。乗降ポイントや停留所、ダイヤ、乗り継ぎ、料金体系は使いやすいのか。利用者の声をもとに、改善を続けていくことが必要です。
日高市地域公共交通計画の指標では、おでかけタクシーの利用回数について、令和11年度に年間40,000回を目指すことが示されています。また、おでかけワゴンの系統別平均乗車人数、公共交通に対する満足度なども指標として掲げられています。
こうした数値は、制度を評価するうえで大切です。しかし、同時に数字だけでは測りきれない効果もあります。
たとえば、外出機会が増えること。家族の送迎負担が減ること。買い物に行けるようになること。地域の集まりに参加できること。孤立を防ぐこと。健康を維持すること。こうした一つひとつが、市民の暮らしの安心につながります。
費用対効果を考える際にも、単に運行経費と運賃収入だけを見るのではなく、健康、福祉、地域経済、家族の負担軽減、まちの魅力といった広い視点から考えるべきです。
公共交通は、数字だけでは測りきれない「暮らしの安心」を支える政策です。
日高市の公共交通は、今まさに新しい段階に入っています。
おでかけタクシーやおでかけワゴンは、行政が制度を作っただけでは十分ではありません。市民の皆さんが実際に使い、使いにくい点を伝え、より良い形に改善していくことで、地域の交通として育っていきます。
広報ひだかの特集でも、「公共交通は、みんなが使い、育てることで初めて守られます」という趣旨が語られています。
「今は車があるから関係ない」
「まだ自分には必要ない」
そう思う方もいるかもしれません。しかし、公共交通は必要になってから急に整えることはできません。将来の安心のためにも、今から地域全体で支えていく必要があります。
私自身も、日高市議会議員として、公共交通が市民の暮らしを支える基盤として機能しているか、今後もしっかり確認していきたいと思います。
移動できることは、暮らし続けられることにつながります。
車があっても、車がなくても、年齢を重ねても、安心して出かけられる日高市へ。
公共交通を、皆さんと一緒に育てていきたいと思います。
日高市議会議員 ヨコオ貴文
>>広報ひだか2026年6月号の特集「おでかけ」をもっと身近に 日高市の地域交通が動き出す
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