2024/6/26
こんにちは。兵庫県川西市議会議員の長田たくや(ながたく)です。
農水省は「みどりの食料システム戦略」に予算をつけています。有機農業面積の増加等、具体的な数的目標も掲げられているのですが、やたら「持続可能な」と「SDGs」という言葉が出てくるのでイタタ><な感じです。
本日は、有機農業と言えば、代表的な「コウノトリ農法」についてご紹介します。
【お話しの流れ】
・コウノトリを救う
・コウノトリ農法とは
・全国に広がる
■ コウノトリを守る
日本のコウノトリは、江戸時代までは全国各地で見られたようです。しかし、明治初期の乱獲とその後の開発等による環境悪化によって激減し、1971年、最後の生息地「兵庫県豊岡市」で絶滅してしまいました。
もともと乱獲・開発で生息数を減らしていたところに、1960年ごろから「農薬」が使用され始めて、昆虫やカエルなどのエサが極端に少なくなったのも絶滅の要因とされています。その後、人工繁殖を経て野生復活に成功しました。
参照:2005年9月24日 豊岡のコウノトリ 自然放鳥開始

舒明天皇の御代(西暦600年頃)、足を負傷したコウノトリが温泉で傷を癒したという伝説が残されています。これは、城崎温泉の七湯の一つ「鴻の湯」として現代に受け継がれています。
参照:城崎温泉観光協会公式サイト
■ コウノトリを救いたい
コウノトリは動物食性であり、虫・魚・鳥・哺乳類など色々なものを食べます。
兵庫県の阪本知事(在任:1954~62年)は「農薬がコウノトリ絶滅の一因であると認知していたが、コウノトリのために農薬使用を制限するという選択肢はなかった」と述べています。1985年には、ロシアから幼鳥を譲り受けて人工繁殖が始まり、県と豊岡市を中心に「コウノトリの野生復帰協議会」が組織されました。2005年には、世界で初めてとなる人工繁殖個体の野生放鳥が実現します。
その野生定着を成功させるためには、エサ資源を安定的に確保できる環境が必要でした―すなわち、農薬に依存しない生物多様性に配慮した農地の整備が不可欠であり、地域では有機農法の実践が求められたのです。
参照:コウノトリ育む農法の確立―野生復帰を支える農業を目指して―
■ 発足したPチーム
兵庫県は2002年、豊岡農林振興事務所、豊岡農業改良普及センター、豊岡土地改良事務所の中堅職員らで構成される「コウノトリプロジェクトチーム(通称:Pチーム)」を発足させました。3年後の2005年に予定されていた野生放鳥に向けて、準備を間に合わせる必要がありました。
なんとコウノトリは1日500gのエサを必要とするといわれており、ちなみに我が家のヨウムでさえ体重が400gに満たないほどですから、その食欲には驚かされますね。
■ コウノトリを育む農法
1年のスケジュールは次のとおりです。

①10~11月 堆肥(牛糞、発酵鶏糞等)・地元の米ぬか等の投入
糞尿堆肥や有機質肥料を使用した水田では、化学肥料を施肥した水田よりも「イトミミズ類が増加する」ことが知られていました。このイトミミズが表面の土壌を攪拌して、良い感じの土をつくるそうです。
②12~2月 冬期湛水(たんすい):田んぼに水を張ること
通常、牛糞尿などを熟さないまま堆肥として施してしまうと悪臭などの問題が発生しますが、冬の間に田んぼに水を張っておく「冬期湛水」をすることで、イトミミズがイイ感じ有機物を分解してくれてトロトロした土の層ができます(トロトロ層と呼ぶ)。
③3~4月 乾燥→有機質肥料散布+浅く耕耘(こううん)
冬季湛水の水を抜き、イトミミズが頑張って作ったトロトロ層を、その上を歩ける程度にまで乾燥させます。それから有機質肥料を撒くのですが、酸素がない状態で有機物が分解されると、硫化水素を発生してしまい根腐りの原因となります。そこで、浅く耕すことで酸素を送りこみます。
④5月 早期湛水→複数回代かき
田植えの1か月前に注水します(早期湛水)。イトミミズの活性化・雑草の早期発芽・カエルの産卵を目的としています。
そして水を張った状態で”荒代かき”をやります。代かき(しろかき)とは、田植え前の田に水を満たし、土のかたまりを砕いて、ならす作業を言います。これは雑草に発芽してもうらために行います。こうして発芽した雑草(ノビエ、コナギ、ホタルイなど)を一掃するために、8cm以上の深水で「仕上げ代かき」を田植えの3日前に行います。
⑤5月下旬 田植え
害虫(イネミズゾウムシ)発生のピークを避けるため、「仕上げ代かき」が終わる時期を考慮して、5月20日以降に田植えをします。
⑥6月 有機資材の投入(雑草・害虫対策)
有機資材(米ぬか等)の投入により、有機物分解能力をもつ微生物による抑草効果を利用します。田植え後に米ぬかなどの難分解性の有機資材を施用すると、これが乳酸菌や酢酸菌によって分解され、酸性物質が生成されることで土壌のpHが下がります。
コナギという雑草は酸性に弱く、Pチームは、抑草効果が得られるとされる有機資材※(液体マルチ、EM菌、ぼかし)を用いました。
※液体マルチ:おが粉、ヤシ殻などを焼成した活性炭、澱粉を原料とした分散剤、水から構成される黒い液体で、水田雑草の物理的防除法の資材
※EM菌:Effective(有用な)Microorganisms(微生物たち)の意味。乳酸菌や酵母、光合成菌などの総称。
※ぼかし:米ぬか、油かす、魚粉などの有機資材を発酵させた有機発酵肥料
⑦6月 深水管理
深水管理は、田植え後に徐々に水位を上げ、8cm以上の水位を40日間保つ水管理であり、田植え後に発芽した雑草(ノビエ)を抑制します。
⑧6月 中干し延期
但馬地方での通常農業では、6月20日ごろから硫化水素発生を抑えるため、田んぼ表面を「中干し」により空気に触れさせます。しかし同時に、オタマジャクシちゃんも一緒に干上がってしまう恐れがあるそうです。
そこで、中干しを7月上旬まで延期することで、オタマジャクシがカエルになる時間的猶予を与えるのです。カエルが増えることで、カメムシ被害が減ったとのこと。ありがとうカエルちゃん!
⑨4~7月 畦畔(けいはん)管理
畦畔の管理が重要で、除草剤を使わず草刈りを行います。害虫の発生予防のためにも適宜草刈りをしないといけません。
畦(あぜ):田んぼに張った水が漏れないように囲っている盛土
以上が、「コウノトリを育む農法」のエッセンスとなります。非常に科学的で、理にかなった農法だと思いませんか?
■ 農法を開発して終わりじゃない
農法ができても農家さんに実践してもらわねばなりません。初期成育が遅いことが不安感となり、問題となったそうです。Pチームは、実証と説明を繰り返し、コウノトリが安全にエサを取れる環境をつくり次世代に残すこと、コウノトリが棲める環境を整備し、それ自体を環境資源とすることをセールスポイントとしました。
消費者には、「そのお米がコウノトリを助ける」というストーリー性を重視して伝えたそうです。そして、大切なのことはやはり「お金」です。流通業者と交渉し、通常栽培よりも高い値段を維持しているのです。
いかがでしたでしょうか。有機栽培とは「単に化学的な農薬・肥料を使わない」・「昔の農業に戻す」ということではなく、科学的に進めていくことがわかりました。現実に、コウノトリの野生化という生物多様性を取り戻しましたし、さらに農家さんの収入にもつながりました。
■ 千葉県野田市にコウノトリが
なんと、千葉県野田市でコウノトリが自然繁殖が確認されたとのことです。冒頭でも触れたように、江戸時代までは日本各地にコウノトリが生息していたとされており、今回の事例は、豊岡以外でも定着・繁殖が可能であることがわかりました。
野田市では、地域の環境に合わせて工夫された「コウノトリを育む農業」が展開されており、こちらでは黒酢を活用した独自の有機農法が取り入れられているそうです。
参照:千葉 野田市 コウノトリのヒナ 市内の自然の中で初めて誕生

ぜひコウノトリを見に行ってあげてください。私も見に行ったことあるのですが、野生のコウノトリは見れませんでした。リベンジしたいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
素敵な1日でありますように。
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