長田 たくや ブログ

【くすり】 “心臓の収縮そのもの”を抑える新しい心不全薬 【マバカムテン】

2026/5/8

兵庫県 川西市議会議員(薬剤師) #長田たくや です。
今日はお薬の話です。2025年5月に、カムザイオス®(一般名マバカムテン)」という心不全のお薬が承認されました。

初めての作用機序で、こんなところにも薬が効くようになったのか…と驚きましたのでご紹介します。


閉塞性肥大型心筋症
漢字と英語が色々出てくる病気の分野で、正直わかりにくい!ので、すごく簡略化して書きます。

閉塞性:心臓から全身へ血を押し出す時の出口が詰まっている。
肥大型:心筋が大きくなって、物理的に血の流れを邪魔している。
心筋症:上記のような心筋の影響で、息切れなどの「症状」がでる。

引用:済生会熊本病院

高血圧によって引き起こされる心肥大もあるのですが、こちらは遺伝が主な原因とされています。

なぜ肥大化する?
心臓の筋細胞は、休むことなく自動的に収縮・弛緩を繰り返しています。

肥大型心筋症の方は、筋細胞の構造異常で「収縮力が過剰」となってしまうのです。結果、平たく言えばムキムキのマッチョマンとなるのです。そのため、血液が通る空間が狭くなるのです。

したがって、「心臓の収縮力を抑える」ことが治療方針になります。


アクチンとミオシン
筋肉の動きをすごく細かくみますと、2種類の線維によって制御されています。
フィラメントとはタンパク質でできた線状のものを言います。ミオシンが太め、アクチンが細めです。

引用:「収縮タンパク質」はどんな働きをする?

筋肉が収縮する時、エネルギーを使ってミオシンがアクチンをぐぐい!っと引き寄せます。それによって筋肉が収縮するのです。
もっと細かく見ますと、アクチン側がカルシウムイオンによって構造が変化することで、ミオシンと結合しやすくなります。

引用:「家族性心筋症が引き起こされる分子メカニズム」

肥大性心筋症の心臓では、この ミオシンがアクチンにめちゃくちゃ結合する状態=強すぎる収縮力 の状態となっているのです。

ちなみに、私も昔は勘違いをしていたのですが、この構造は心筋細胞「内」にあります。
つまり筋細胞そのものが、伸びたり縮んだりするんですね。

動いている映像を見ることができます。➡(リンク


マバカムテンの機序
新薬のカムザイオス(マバカムテン)は、このミオシンを大人しくさせる薬です。
難しく言うと、「選択的心筋ミオシン阻害薬」となります。

引用:カムザイオスのインタビューフォーム

英語やカタカナが多いですよね^^;
DRX(Disordered Relaxed)いつでもアクチンに結合したるで!の活動状態
SRX(Super Relaxed)働きたくないでござる!の休止状態

何が画期的か
肥大型心筋症の場合、とにかく心臓を大人しくさせるための治療薬が選択されていました。
ナトリウムチャネル遮断薬:興奮を抑える
β遮断薬:心臓を落ち着かせる
Ca遮断薬:収縮力を抑える

引用:心筋ミオシン阻害薬マバカムテンの作用機序と肥大型心筋症への有効性・安全性

そこに加わったのが、直接収縮するサルコメア(アクチンとミオシンの構造)を対象とした医薬品ですね。

【薬価】
ちなみに、薬価がめちゃくちゃ高いです。
カムザイオス2.5mg 1カプセル:7,264.80円

他の標準的な治療薬
メインテート®(β遮断薬):12.2円
ワソラン®(ベラパミル):7.7円
リスモダンR錠(ジソピラミド):20.2円

早速、心不全のガイドラインが更新されていました。

引用:2025 年改訂版心不全診療ガイドライン

元々患者数も少なく、希少疾病用医薬品に指定されたため、薬価も高くなっています。


すでに次の薬が控えている
実は、アフィカムテン という薬が開発されています。販売はまだしていませんが、すでに承認申請をクリアしている薬剤です。

マバカムテンは、半減期(半分の量に消失するまでの時間)が6~9日間であり、非常に長くとどまるのです。心臓の動きを抑え過ぎた場合、その対応が難しくなる側面がありました。一方、アフィカムテンは3~4日と短く、さらに代謝酵素による影響が小さいとされています。

マバカムテンも閉塞性肥大型心不全だけではなく、「非閉塞性」にも適応拡大しようと臨床試験を行いましたが…なんとその治験、失敗しています。
参照:マバカムテンは非閉塞性HCMには無効

この系統の医薬品は、順風満帆とはいかないようですね。

【微妙に異なる作用点】
この2つの薬剤が作用するところは同じですが、マニアックに見るとやや異なるようです。
まぁ、難しいですよね…興味ある人は論文を読んでみておくれ。

引用:Comprehensive Review: Mavacamten and Aficamten in Hypertrophic Cardiomyopathy


おまけ:真逆の薬
肥大型心筋症では、心臓の収縮を休ませようというのが重要でした。
一方、駆出率低下型心不全、つまり心臓が働かなさ過ぎて血液を送れない病態があります。

だからこそ、ミオシンにしっかり働いてもらおう!と言うお薬、つまり、マバカムテンとは真逆の効果を示す オメカムチブ メカルビル という医薬品があります。おもしろいことに、作用部位は同じミオシンなんですね。

まだ開発中のようですが、こちらも使われるようになるかもしれませんね。
参照:オメカムチブ メカルビル、高齢者の心不全患者でも有効性と安全性を確認


医薬品開発は頭打ちだとも言われていますが、このように様々な薬理作用をもつ薬剤が登場することは、勉強する分には楽しいですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
素敵な1日でありますように。
ご意見・ご感想はこちらまで↓
takuya_nagata_1026@yahoo.co.jp
•━━━━━━• ∙ʚ🐤ɞ∙ •━━━━━━•
各種SNSもフォローをよろしくお願いします。
X(旧Twitter)
Facebook
インスタグラム
LINEオープンチャット(ニックネームで参加可能)
•━━━━━━• ∙ʚ🐤ɞ∙ •━━━━━━•

この記事をシェアする

著者

長田 たくや

長田 たくや

選挙 川西市議会議員選挙 (2022/10/16) [当選] 1,680 票
選挙区

川西市議会議員選挙

肩書 薬剤師で市議会議員
党派・会派 参政党

長田 たくやさんの最新ブログ

ホーム政党・政治家長田 たくや (ナガタ タクヤ)【くすり】 “心臓の収縮そのもの”を抑える新しい心不全薬 【マバカムテン】

icon_arrow_b_whiteicon_arrow_r_whiteicon_arrow_t_whiteicon_calender_grayicon_email_blueicon_fbicon_fb_whiteicon_googleicon_google_whiteicon_homeicon_homepageicon_lineicon_loginicon_login2icon_password_blueicon_posticon_rankingicon_searchicon_searchicon_searchicon_searchicon_staricon_twitter_whiteicon_youtubeicon_postcode