2026/5/5

まずは制度の基本構造から。
日本では、医療費が一定額を超えると、その超過分を公的医療保険がほぼ全額負担します。年齢や所得に応じて自己負担の上限額は異なりますが、どれだけ高額な治療でも患者負担は月数万円〜十数万円で頭打ちになります。この仕組みには明確なメリットがあります。
• 高額治療による家計破綻を防ぐ
• 高額治療へのアクセスを平等に確保する
一方で、公的保険が青天井で負担する構造であるため、医療費が増えれば増えるほど、その負担は現役世代の保険料に跳ね返ります。
ここで重要なのは、「患者負担の上限」と「保険給付の上限」は別物という点です。制度の持続性を考える際に鍵となるのは後者、つまり 保険財政がどこまで負担するか です。
• 国民医療費(総額)
o 2023年度:48.9兆円(過去最高)
o 2000年度:約30兆円
→ 約20年で 1.6倍
人口は増えていない、物価も大きくは動いていない。それでも医療費だけが急増しています。
• 高額療養費の給付総額
o 2022年度:約4.9兆円
o 2010年度:約2.3兆円
→ 10年で約2倍
• 1件1000万円超のレセプト件数
o 2010年代前半:年間数百件
o 2024年度:2000件超
→ 多くは抗がん剤・遺伝子治療
さらに医療経済学では、自己負担率が10%上がると医療利用は約2%減るとされますが、日本では高額療養費制度により 高額医療ほど自己負担率が実質ゼロに近づく という逆転現象が起きています。つまり、最もコスト抑制が必要な領域で、最も価格規律が働きにくい構造になっているのです。
ここで主要国と比較してみたいと思います。
欧州
欧州諸国も患者負担は抑えていますが、費用対効果評価(HTA) によって公的負担を事実上制限しています。
• イギリス(NHS)
NICE が費用対効果を評価し、見合わない薬は公的負担の対象外。
→ 対象外になれば患者は全額自己負担。
• フランス
公的保険+民間保険が前提。
高額薬は企業と価格交渉し、アウトカムベース支払いも導入。
• ドイツ・スウェーデン
HTA による実質的なアクセス制限。
オランダ・デンマーク・スウェーデンでは事前承認制。日本でも費用対効果評価は導入されていますが、対象は薬価抑制が中心で、アクセス制限には踏み込んでいません。
アメリカ
民間保険中心で、契約ごとに自己負担の上限が明確に設定されています。
主要国は以下のいずれかで公的負担に限界を設けています。
• 保険負担に明確な上限を設定
• 民間保険で補完
• 費用対効果評価で公的負担を制限
一方、日本は「公的保険が青天井で負担する」という点で例外的です。
青天井の制度は短期的には安心ですが、長期的には深刻な問題を抱えています。
• 医療の高度化 → 高額治療が増加
• 高齢化 → 医療需要が増加
• 医療費は毎年1兆円規模で増加
• 財源は主に現役世代の保険料
つまり、若い世代は制度の恩恵を受ける前に、支え手として負担だけが増えていく状況です。制度ができた1960年代は「若者多数・高齢者少数」でしたが、今は高齢者1人を現役世代2〜3人で支える構造になり、年々その比率は悪化しています。このままでは、現役世代の保険料はさらに上昇し、制度の持続性は確実に損なわれます。
私が考える現実的な改革案は次の通りです。
• 公的保険は 「基礎的な保障」 に限定
• 高額療養費制度に 明確な上限を設定
• 上限を超える部分は 民間医療保険で補完
これは主要国では一般的な仕組みです。現在の保険料で「基礎的保障だけ」にするのは現実的ではありませんが、基礎保障に絞ることで保険料を下げ、可処分所得を増やす という方向性は十分に検討に値します。
この提案のメリット
• 公的保険の財政負担を抑制
• 若い世代の保険料上昇を抑える
• 過剰医療の抑制
• 国際標準に近づく
• 制度の持続性を確保
公的保険は「最低限の保障」に徹し、それ以上の高額部分は民間保険で調整する。若い世代にとって最も合理的でフェアな制度設計だと考えます。
現在でも健康保険料は所得比例で大きな差があります。ここにさらに「高額療養費」まで所得差を反映させると、二重に所得差を反映する構造 になります。負担の公平性という観点から疑問が残ります。公的保険は最低限の保障にとどめ、それ以上は民間保険で調整する方が、より公平で、制度としても持続可能だと考えます。
• 公的保険の青天井は若い世代に不利で、制度の持続性を損なう
• 公的保険は基礎的保障に限定し、上限を設定すべき
• 高額部分は民間保険で補完するのが合理的
• 若い世代が声を上げなければ制度は変わらない
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ホーム>政党・政治家>きど かおり (キド カオリ)>【ブログ】高額療養費制度はこのまま持続可能なのか