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免許のない教育者たち・勉強編 高松くんの研究報告 第5話 保育と人間関係①(2の1)

2023/11/20

免許のない教育者たち・勉強編

高松くんの研究報告 第5話 保育と人間関係①(2の1)

2012年5月

報告者が5歳になった時。初めて幼稚園という場所に登園することになった。

当時のことは正直よく覚えてはいない。しかし、大勢の同い年ぐらいの子供たちと接するのはその時が初めてだったように思う。幼稚園に入ると、まず講堂に集められて園長先生にご挨拶した。その後、「ぞう組」というクラスに連れていかれ、先生とご挨拶した。その後は何をしたのかよく覚えてはいない。何かやらされているうちに父母ともいつの間にかいなくなっていた。報告者は、もともと一人遊びが好きで、一人で虫取りに行って、幼虫や蟻地獄を捕まえてくるような幼児だったので、多分何かをして一人で遊んでいたのだろう。

お昼ご飯を食べた後、すのこの下にバッタがいたので捕まえようとしていたら、担任の先生ではない先生に声をかけられた。

「高松くん、何やってるの?」

「バッタ!」

「…あら、バッタ!捕まえちゃうの?」

「うん。飼育箱に入れて持って帰る!」

確かそんな話をしたのを覚えている。

そして、送迎バス「1便」で帰ることになった。飼育箱がないので、カバンに入れたら

「あら、そんなことしたら死んじゃうよ!明日、飼育箱持ってきてね」

そう言われて、渋々離した。

だが翌日からは、昆虫でなく、「お友達」という同世代の子供との付き合いの方が生活の中心になっていった。

初めての幼稚園の記憶は、断片的だが今でも覚えている。

幼児は、幼稚園に来て、はじめて肉親ではない多くの他人に囲まれて生活することになる。この幼稚園ではじめて、幼児は母親にすぐに逃げ込めない状況に長時間置かれ、先生や他児との人間関係を構築する訓練をしなくてはならなくなる。

この人間関係の構築は、幼稚園で身につけるべき大切な力の1つである。

 幼稚園教育要領には、幼稚園終了までに育つことが期待される生きる力の基礎となる心情、意欲、態度が、『第2章ねらい』に5領域に分けて示されている。

それらは『健康』『人間関係』『環境』『言葉』『表現』とされている。

各領域は小学校以降の教科教育の領域と異なり、到達目標では無いため、評価に関する規定は無い。この中の『人間関係』は、他の人々と親しみ、支え合って生活するために、自立心を育て、人と関わる力を養う、という「めあて」が示され、(1)幼稚園生活を楽しみ、自分の力で行動することの充実感を味わう。(2)身近な人々と親しみ、関わりを深め、愛情や信頼感を持つ。(3)社会生活における望ましい習慣や態度を身につける、というねらいが示されている。

 幼稚園において、子どもが自由に活動できるには、それまでの母親と共に活動していた乳幼児期同様、安全基地となる人物が必要となる。家庭では、言うまでもなく母親が安全基地である。幼稚園でこの安全基地になるのが、保育者である教師である。そのため、教師は、幼児と早い時期に信頼関係を構築する必要がある。

 では、どのように保育者は幼児と人間関係を深めるべきか。

これは、幼児が母親との間に形成した『愛着』を、保育者にも持って貰うようにしなくてはならない。

では、ここで言う愛着とはどのようなものか。

エインワースは『愛着とは特定の人との間に形成されている感情的な結びつきであり、この結びつきは空間的にも両者を結びつけ、時間的にも永続するものである。

愛着行動は、愛着の対象への接近を獲得しようとしたり、維持しようとする行動である。

この行動は身体的接触からある程度の距離を持った相互交渉やコミュニケーションに至るまで広範囲な行動を含んでいる』と定義している。乳幼児は、一番身近な大人である母親を見て、共鳴動作を行うなどして、ノンバーバル・コミュニケーションを繰り返す中で次第に愛着を形成する。これは、身近な母親が、幼児にとって『所作をまねる目標』として乳児に認知されたため、コミュニケーションが始まり、最終的に愛着を形成したと言える。

 報告者の場合、「ゾウ組」担任の先生でなく、はじめに虫取りをきっかけに話すようになった先生と話をしたいという感情が芽生えた。それが報告者にとっての「愛着」だったと考えられる。先生に興味を持って、お習字をやりたいと言い出したようだ。

 この事例からわかるように保育者が、幼児に愛着を持ってもらうために取るべき態度は、私は『2つの方向性』があると考えている。

 まず、1つは、幼児の全てを受け入れるという姿勢である。

 幼稚園に入学した当初、保育者は初めてに近い『他人』であり、多くの他人に囲まれて不安で一杯である事がほとんどである。ここから、『集団化の意識』、すなわち、小学校以降に進学したあと、学校で円滑に人間関係を構築していく方法論を身につけていく。これにあたり、保育者はまず幼児の小さなつぶやきや、声にならない行動や目線などを観察し、幼児を受け入れてあげる態度で接することから始めなくてはならない。基本的には『カウンセリングマインド』を持って、幼児を受け入れ、気持ちのやり取りができる関係を構築する必要がある。この気持ちのやり取りができるようになるには、幼稚園教育要領にあるように、『教師は、幼児の主体的な活動が確保されるよう幼児一人一人の行動の理解と予想に基づき、計画的に環境を構成しなければならない。』と言える。つまり、幼稚園では好きな活動を行わせ、それを通じて幼児と信頼関係を結び、『保育者は、幼稚園に於ける安全基地』の役割を獲得できると考える。

 ただ、幼児にただ阿(おもね)るだけでは人間関係は成り立たない。

もう一つ重要な方向性がある。

(続く)

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