2023/11/11
免許のない教育者たち・青春編
高松くんの初めてのヨーロッパ旅行 第24話 西側へ帰還!
1988年9月・チェコスロバキア共和国・ブラチスラバ
朝6時。僕はせっかくの朝食を食べずに、言われたように昨日の桟橋にやってきた。
ブラチスラバ桟橋6時30分出航の、オーストリア・ウィーン行きの船だ。
僕は窓口でことのほか高い切符を購入し、船を待ったが、船がそこにいない。
定刻からおおよそ1時間遅れぐらいで船がやってきて、大量の乗客が降りてきた。ああそうか。このフェリーはブダペストを夜出発して朝にここを経由して昼にウィーンに着くのか。しばらくすると、待っていた乗客が動き始めた。僕もなんだかよくわからぬが彼らにくっついていき、バタバタと出国手続きをして船に乗り込んだ。
乗り込んだ船はニュージーランドで乗った北島と南島を結ぶ「ウェリントンーピクトンフェリー」にそっくりな、椅子がたくさん並んでいる船だった。上等船室も上階にはあって、多分個室になっていると思われる。「思われる」と言うのは、階段のところに門兵が2名ほど立哨していて、上階に上がろうとする下々の乗客を追い返していたため、僕も近づけなかったからだ。
椅子席は結構空いていたが、紙袋やらいろんなゴミが散乱しており、かなり荒んでいた。
船はドナウ川を少し遡ったところで、水辺に兵士の姿が増えてきた。高見櫓(たかみやぐら)が初めは進行方向を見いていたが、何重かになっている有刺鉄線を越えてしばらく行くと、高見櫓が後方、つまり今来たチェコスロバキア側を向くようになり、僕は西側・オーストリアに帰ってきたことがわかった。
西側に帰ってきたぞ!
東側から西側に帰ってくると、気分的なものかも知れぬが、なんとなく全てが明るくなったように見える。多分、ブラチスラバの街路樹があんまり綺麗に刈り込まれてなくて、よくわからないけど木の根元がどれもこれも白いペンキで塗られているのに対し、綺麗に刈り込まれた並木に変わるだけでも見た目がずいぶん違う。
定刻より1時間少し遅れて出港したのに、なぜか定刻通りに船はウィーンに到着した。
はじめはどこに着いたのか全くわからなかったが、人の流れに乗って地下鉄駅まで移動して、地下鉄の路線図を見て、自分がウィーンの東はじにいることがわかった。
とりあえずキオスクで1日乗車券を購入した。
90シリング(900円)!高いなあー!
この高額運賃で、初めて自分が西側にいる本当の実感が得られた。
「値段とサービスは比例するんだねえ…」
僕はこの時腑に落ちる思いがした。
さてと。じゃあ、どうするかな?
とりあえず、時間もあるのでウィーン西駅に向かって、ザルツブルグ行きの列車を調べてみることにした。
ウィーンの鉄道駅は、大きいところで「ウィーン南(Südbahnhof)駅」と「ウィーン西(Westbahnhof)駅」がある。これ以外に「ミッテ(中央)駅」もあるのだが、なぜか長距離列車でこの中央駅発着はほとんどない。国内のザルツブルグ方面は主に西駅発着なので、とりあえず目指すは西駅だ。
たどり着いた西駅は、南駅に比べてかなり荒んだ、東側の駅のようだ。
とりあえず窓口近辺にある時刻表で見てみると、1時間から2時間に一本程度、ザルツブルグ行きは出ているようだ。
僕は再びドイツ語会話帳を片手に窓口に突撃した。
「コンニチハ。ザルツブルグへ、イキタイノデス」
すると窓口のお姉さんは英語で答えた。
「何時の便にしますか?」
僕はホッとして英語に切り替えた。
「…あ、はい。次の、一番早い便がいいです。可能なら座席指定で。」
お姉さんはコンピューターをカチカチ叩いて、
「ええ、2等でいいのかしら?1名?」
「…はい、2等で1名お願いします。いくらですか?」
「えーと…470シリング(4,700円)ね。」
おっふ。高い!…あ、待てよ。往復なら安くなるかも。
「ああ、すいません。可能なら往復で購入したいのですが。」
「帰りは?」
「明後日の朝9時くらいがあれば。」
「2等で1名、座席指定?」
「そうです」
「じゃあパスポート出してね」
「はい」
僕はパスポートを出した。するとお姉さんはじーっと見て、
「あら、あなた19歳なの?じゃあ、割引があるわ。それを使いなさい。」
お姉さんは再びカチカチ機械を叩いて切符を出してきた。切符は往復540シリング(5,400円)になっていた。やった!
僕は切符を受け取って列車に乗り込んだ。
列車は東側の列車と比べるまでもない快適さだ。4時間弱で目的のザルツブルグについた。
とりあえずここで2泊して、明後日ウィーンに戻り、ウィーンで1泊して帰るのみだ。
さあ、宿だが…実は今日1日で船と列車代で80ドル程度使ってしまった。
西側は恐ろしい勢いでお金が減る。少しだけ東側が恋しくなった。
僕は駅前で48時間市内交通フリーパスを購入し、選択の余地なく1泊150シリングのドミトリー形式のホテルにチェックインした。
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マツウラ カツユキ/57歳/男
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