2023/10/24
免許のない教育者たち・青春編
高松くんの初めてのヨーロッパ旅行 第6話 ヨーロッパ到着!
1988年9月・ウィーン市
深夜にモスクワを出発した飛行機は早朝5時すぎにウィーン国際空港に到着した。
夜中の2時前出発でまさか機内食の給餌があるとは思わなかったが、乗って安定飛行を始めた午前3時前にまたもやバババと電気がついて、全員バシバシと叩き起こされた。
昆虫ゼリーのような匂いの赤い液体と、カサカサの機内食を堪能してようやく睡眠できた。
しかし、東京―モスクワの9時間と違って、モスクワーウィーンは5時間。うとうとしたところで「種別おばちゃん4号」にまた腕を掴まれてシートベルト確認をされて目が覚めた。
うー。眠い…
とりあえず空港内で日本から持ってきた米ドルをオーストリア・シリングに両替した。1シリングはおおよそ10円くらいなので計算は簡単だ。入手したシリングで市内中心部までのチケットを窓口で購入した。
ホームに降りたら列車がやってきた。
僕はウィーン南(Südbahnhof)駅に向かう普通列車に乗った。
列車はモワッとした本州のような空気の中、ひまわり畑の中を進んでいく。
情報によると、30分くらいでつくとのことだ。もうすぐウィーンの街が見えてくるはず。
ん?なんかおかしい??
もう30分近く乗っているのだが、都会が現れる気配もない。むしろ監視塔がどんどん増えてきて、明らかに反対方向に進んでしまっている。
慌てて列車を降りた。降りた場所はただの無人駅だ。ひまわり畑の真ん中に、ぽつんとある停留所のような場所。僕は案内がないか確認したところ、どうやらウィーンとは真反対の、チェコスロバキア国境まで後少しのところまで来てしまった。
時刻表もあるにはあるが、ここがどこなのかが全くわからず、どうしたものか途方に暮れていた。まあ、朝だからそのうち市内に向かう通勤電車がくるだろ。
目の前にヨーロッパの農村風景が広がっている。
ヨーロッパは日本に住んでいるとパリやロンドンのイメージが強くてどうしても僕のような田舎者には「都会」のイメージが強い。だが、ウィーンのような都会から少し外れると人気(ひとけ)の全くない、音のない世界が存在していた。でも、故郷の北海道に近いのはモスクワの風景で、ここはカラッとしてるけどやっぱり温帯の本州の空気に近い。
でも既視感がある。どこだっただろうか?
ああそうか。留学していたニュージーランドの空気だ。
オークランドからちょっと郊外に出るとこんな雰囲気だった。
日本は国土面積38万㎢の13%しかない標高500m以下の平地に人口のほとんどが密集して住んでいる。人口密度が極めて高い。だから、東京や大阪のような大都会が存在するが、ニュージーランドもウィーンもそこまで人口密度は高くはない。だから田舎は似てくるのか。
僕はそんなことを考えていた。
朝霧の向こうから、列車がやってきた。僕はとりあえず戻る方向の列車だったのでそれに乗ってみた。すると、見込み通り空港駅を経由して、ウィーン南駅に列車は無事到着した。
「さて。どうしようか?」
ガイドブック地球の歩き方には、ウィーンはフリーパスを買っておけば、電車・地下鉄・路面電車・バス乗り放題だから買うべき、と書いてあった。そこで1週間パスを購入して、とりあえずユースホステルに向かった。
ユースホステル(以下YH)は、ドイツ発祥の「若者が安く宿泊できるように」ということで始まった宿泊システムだ。日本でも多くのYHがあり、会員になる必要があるが、おおよそ1泊2食3,000円弱で宿泊できる。そして26才以下の場合は割引になる。
僕は元々日本のYHの会員だったので、オーストリアでもYHに泊まることにした。ただ、日本と違うのは「予約」というシステムがなく、朝に「並んで」ベッドを確保すること、それから「Duty」と言って施設の掃除などのボランティアが宿泊者に課せられる。
だから、朝のうちにベッドの確保をしなくてはならない。
YHに着くと、数人のヨーロッパ人が並んでいた。僕は英語で
「みなさんはYHの受付で並んでるのか?」と聞くとYesとのことだった。
我々は8時まで並んでいたら、順に受付開始となり、僕も無事にベッドを確保できた。
料金は150シリング(1,500円)で結構安く済んだ。一応今日から4泊とった。
そして事情を話してパスポートを返してもらい、荷物を預けてまずは一軒目のハンガリー大使館に向かった。
僕はここに1週間滞在する。
それはクラシック音楽の堪能とかそういう優雅な話ではなく、鉄のカーテンの向こうにある東欧諸国のビザを取るためだ。
日本国発行のパスポートは結構世界的には強い。
通常、他国に入国するためには「日本人ですよ」という身分証明書であるパスポートと、入国したい国が「来てもいいですよ」と許可したビザの二つが必要となる。しかし、日本は信用がある国らしく、多くの国はビザを準備しなくとも入国許可がその場で下りる。西ヨーロッパなら日本人はビザなしで訪問可能だ。
しかし、その信用は、鉄のカーテンの向こうでは通用しない。
だから東ヨーロッパを旅する多くの旅人は、ここウィーンに長期滞在して、順にビザを取得していく。僕の行程では、ハンガリー・チェコスロバキア・ポーランド・東ドイツの4カ所のビザ取得が必要だ。
これらのビザは「朝申請して、夕方受け取る」ポニークリーニングみたいなシステムだ。
だから理論上今日含めて4日あれば取れるはずだ。
僕は路面電車を2回乗り換えてハンガリー大使館に着いた。
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マツウラ カツユキ/57歳/男
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