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続・免許のない教育者たち2023 第74話 勉強だ!(4)もうまんたい

2023/9/7

続・免許のない教育者たち2023 第74話 勉強だ!(4)もうまんたい

登場人物:

高松克己(かつての塾講師理科主任→大学教員兼会社社長)

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続・免許のない教育者たち2023 第74話 勉強だ!(4)もうまんたい

前回は古文についてのお話をしたので、今回は漢文についてのお話をしたい。

我々日本人は現在、四種類の文字を使いこなしている。

「漢字」「ひらがな」「カタカナ」「ローマ字(Alphabet)」である。

アルファベットは26文字しかない表音文字であり、便利なので世界の多くの国で汎用されている。

この中には元々独自の文字を持っていた国の中にも、その独自の文字を捨ててアルファベットに置き換えた国がいくつか存在する。例えば政治的にヨーロッパに入りたいトルコ、ロシアから縁を切りたいウクライナなどが有名だが、日本の近くにもかつて使っていた文字を捨ててアルファベットを使っている国がある。

それがベトナムだ。

ベトナムは日本と同じように中国の文化の影響を強く受けている。

言語体系は全く中国語とベトナム語では異なるので、文字に関しては流用という形で取り入れている。これは日本語の極めて初期の段階、例えば万葉集の時代の「万葉文字」のように、音だけで漢字を並べて日本語っぽくする、ベトナム語っぽくするという使い方をしている。

暴走族が「夜露死苦」で「よろしく」と読ませるというアレである。

僕もかつて写真で見て驚いたのだが、万葉集の原本(≠写本)は全て漢字で書かれていた。だからこそこういう使い方を「万葉文字」とか「万葉かな」とかいうのだが、こういう使い方は、漢民族の周りの民族では結構多くみられる。

ちなみに、現在となっては常識だが、東アジアの政治支配体制の基本である「冊封体制(さくほうたいせい・さっぽうたいせい)」では、支那大陸の中心にある「長安」や「北京」を取った民族が「華」であり、そこを「中華」として他の民族が周りから「中華」に服属する。周りの民族は「東夷(とうい)・西戎(せいじゅう)・北狄(ほくてき)・南蛮(なんばん)」という野蛮人と認定されてしまう。

「中華」は必ずしも漢民族ではない。581年から618年までの隋(ずい)は契丹人(トルコ人の先祖)。1271年から1368年までの元(げん)はモンゴル人。1644年から1912年までの清(しん)は満洲族である。

まあイメージとしては数十人でゲームをやって、勝った人が他の参加者から、次に勝つまで「親」という代表者になるイメージで、言うなれば「大企業の出世ゲーム」の国取りバージョンである。

だから、中華にいる時間が長いのが漢民族というだけであって、中国≠漢民族である。

正確には「漢民族が統治していた中華」が長いだけである。

以上の前提を踏まえて「漢字は漢民族が使っていた文字」という認識で話を進めていく。

話を戻すと、「万葉かな」のように漢字を取り入れたベトナムは、日本同様に「ベトナム語と中国語は違いすぎて文字に書くのが難しいなあ」という問題にぶつかった。そこで、チュノムというベトナム独自の文字を漢字から生み出した。しかし、チュノムは日本語の「かな」と違って漢字にさらに加筆したものなので、書くのが面倒くさい。

「初期微動継続時間」とか「テーラー展開5次式近似」くらい書くのが面倒くさい。

そうして広がらずに困っていたところへフランスが植民地支配にやってきた。

このとき、ベトナム語をアルファベットに補助記号をつけて表現した方法を編み出し、以降ベトナムではこのアルファベットをベースに文字で表現することになった。これを「クオックグー」という。ちなみに「クオックグー」は漢字で書くと「国語」であり、文字の書き方は違うが、なんだかんだでベトナムも日本語と同程度の漢語の影響を受けている。

日本の場合、古代は知識人を中心に「万葉かな」を使って「暴走夜露死苦」とか書いていたのだが、面倒だし「夜露死苦」などの音として漢字を使う部分と、「暴走」などの意味として漢字を使う部分が混じるとわかりにくいということで、くずし文字が広がっていった。特に清少納言や紫式部のように、一種プライベートな小説を書いていた女性は、

「ウチらだけ分かればいいよ。別に公式文書じゃないしwww」

こういういうノリで「ひらがな」を編み出した。

この段階で「暴走夜露死苦」は「暴走よろしく」になった。

このひらがなは、完全なる表音文字で音しか表さないため、表意文字(意味を表す文字)としての漢字と使い分けができるところが非常に優秀だ。

ただ、古い世代の漢字信奉者、特にイキがってはいるけど実は中国語の読み書きがそんなにうまくできない一部の男性は、この「若い女の合理性」に反発した。まあ、古典を読み進んでいくと「こいつかー!」とわかってくるが、彼の名誉のため一応書かないでおこう。日本史の中では割に有名人だし。

…で、そういった男性たちはこう主張した。

「漢文は漢文のまま読み書きせねばならない!語順を変えたりは邪道だ!」

そこで、公式文書は江戸時代まで頑なに漢文で書き続けた。だから、過去の文献の原本(≠写本)は基本的に漢文であり日本人が書いた「日本漢文」というジャンルも存在している。日本漢文は明治時代にもあって、例えば依田學海(よだがっかい)氏などは森鴎外がヨーロッパに出かけるときに彼の師匠が見送りに行った様子などを漢文で残している。そう言ったことで漢字を「仮名(かな)」に対して「真名(まな)」という。

しかし、イキがってみたものの、漢文はやっぱり外国語だ。難しさは否めない。

特に漢字でズラズラ書いてあっても、読むときには日本語で読むわけだから、読む順が漢字の羅列からわかる人以外は何らかの工夫が必要になる。例えば

「春眠不覚暁 処処聞啼鳥」を

「しゅんみんあかつきをおぼえず しょしょていちょうをきく」

と読まないといけないのだが、読む順番が変わっている上、「あかつきを」の『を』とか「ていちょうをきく」の『を』『く』などの送り仮名が必要になる。そこで登場したのが便利な「返り点(かえりてん)」と「カタカナ」である。これらを使って漢字の羅列である白文に返り点とカタカナをくっつけた漢文を完成させた。だから、返り点とカナを振った中国語は涙ぐましい努力の結果生まれた日本語の一種である。

…いや、ひらがなを忌避しといて漢文を読むためにカタカナ開発したんかーい!

まあ、こういう経緯で日本語には「漢字」「ひらがな」「カタカナ」が登場した。アルファベットは近代に入って以降入り込んできたものなので、日本語の文章の中にそれほど頻繁に登場するWAKEDE WA NAI。

ということで、漢文は思ったより日本の歴史の中で、特に国内で使われてきたため、その昔の文章を読めるようにしたいという理由で漢文は学習することになっている。

ただし。漢文はそれ以外にも重要な学習目標がある。

それは日本語の「熟語」の成り立ちを理解する目的だ。

この辺りは、二条庵主人というペンネームで、京都大学の加地名誉教授が書かれた「漢文法基礎」に詳しく書かれている。実は僕は受験時代にZ会出版でこの本に出会った。それくらいこの本は古い本だが、今でも講談社学術文庫から出版されている。

お陰で漢文はずいぶん得意になった。

その中に、「漢文が読めるかどうかは、義務教育のときにどれだけ漢字、特に熟語をしっかり学習していたかによる」と書いてあるが、僕もそうだと思う。つまり、漢文はその漢字学習の集大成といえよう。

「春眠不覚暁 処処聞啼鳥」では、春眠(=春の眠り)不覚(=気づかない)など、熟語を理解するのに役立つし、「読書」という熟語が「書を読む」という形であると分かれば、

読書(書を読む)→蔵書(書を蓄える)→蔵垢(垢を蓄える=恥を偲ぶ)

というふうに、未知の熟語の理解もできる。

そして、さらに進んで漢字の読み方にさまざまな種類があるのは、日本に入ってきた時代や、地域が違うことがわかるようになる。「行燈」を「あんどん」と読むのは、「唐音読み」と呼ばれていて、「ぎょうとう(このようには読みません!)」などと読む漢音読みとは異なっている。実際多くの漢字は漢音読みである。

ちなみに言葉がどの地域から入ってきたかによっても読みは違う。

無問題(もうまんたい)という言葉…というかスラングがある。

読んで字の如く問題がないという意味だが、これは中国語(普通語)ではなく広東語である。

実は中国語普通語と広東語は全く異なる。

広東語は、広州や香港あたりの言葉で、例えば「Yes」は普通語では「是(シー)」だが、広東語では「口係(ハイ)」である。香港で「ハイ」はよく聞く言葉で、飲茶食ってて背後で「ハイ」って言われるとかなりビビる。香港には普通語を学ぶ教室が街を歩けばあちこちにある。そのままでは当の中国人たちもコミュニケーション困難である。

この広東語で「(有から横棒2本無くした漢字)+問題」で「もうまんたい」と読む。

実際、よく聞く言葉で、もちろんNo Problemという意味だ。香港では何度も聞くので面白がった日本人が持ち帰って「無問題」という漢字を当てた模様だ。諸説あるが少なくとも中国語普通語の「没問題(メイウェンテェイ)」とは出自も読みも全く異なっている。というか、「没問題(メイウェンテェイ)」と言う言い方をするという人は、中国には北京語という上位言語があって、それ以外は方言だからそんな言い方するな、という中華思想の持ち主か、自分の学んでいる辺縁言語のことをあまり知らない人だ。

…まあ僕もこれは、国語の教員免許を取る過程で、京都大学の公開講座で学んだだけだが。

とりあえず、漢文が中国語なのに日本語で学ぶのは広東語の日本語表示スラングで「無問題(もうまんたい)」である。

(第75話へ続く)

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