2023/9/5
続・免許のない教育者たち2023 第72話 勉強だ!(2)数理教育心理学
登場人物:
高松克己(かつての塾講師理科主任→大学教員兼会社社長)
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続・免許のない教育者たち2023 第72話 勉強だ!(2) 数理教育心理学
令和4年(2022)10月。
高校はすでに9月にスタートしているが、大学は10月スタートだ。
現在、一部の大学は、多くが7月終わりに定期試験、8月9月と休んで10月スタートという大学が多い。しかし、薬学部は4学期制(クオーター制)を取りにくいため7月頭に前期試験があって9月頭から講義開始という大学もある。こう言う学校は休みはほぼ高校の時と変わらない1ヶ月半しかない。
ちなみに僕が大学生だった頃は、たっぷりほぼ3ヶ月近い夏休みがあった。
僕は薬学部出身で、当時は薬学部全員4年制で、全員に国家試験受験義務があった。
そして進学振り分けのある大学だったので、そもそも薬学の勉強は2年後期スタートで2年半しかなく、しかも普通に卒業研究10単位は4年の年末年始まであった。だから僕は1ヶ月くらいの怒涛の詰め込み学習で薬剤師免許を取得した。あの1ヶ月は今でもトラウマで、睡眠時間2時間以下の素晴らしい日々だった。
当時は薬剤師国家試験受験資格が「薬学部を卒業したもの」に与えられていたため、3月中には実施されず、卒業後の4月2日・3日の二日間だった。
だから卒業の時にハリーポッターのコスプレをする元気はなく、アルバイトの塾講師で結構汚れていた袖口がチョークで白いスーツを軽―くパンパン払ってかろうじて卒業式に出かけ、終了後みんなで健闘を誓ってそそくさと勉強に戻ったのを覚えている。
どうせ、薬学部の戦友みんなとは、試験会場という戦場で7日後に会うんだし。
まあ、理系で、かつ我々のような国家試験が卒業後にあるような学部は遊んでいる場合ではないということはわかる。
しかし文系の諸君まで締め上げるのはどんなもんだろうか?
みんな一蓮托生で締め上げて、いいことばかりあるとは思えない。
僕には、大学生授業を受けさせて勉強させろと言ってる奴は、多分『勉強・学問とは何か』わかってないように見える。その本心は『自分が苦しいから子供も苦しめばいいのに』という、つまらない妬みに見える。
そんな妬みを発動しなくとも高校時代たっぷりあそんだやつは大学に進学困難だし、入れても数多いる大学生YouTuberのように、どうせ学問ではなく別の道を見つけてそちらに行くんだから、勉強させるという発想自体がいい迷惑だろう。
身も蓋もないことを言えば、ぶっちゃけ人生を賭けて文学を学んだり社会学を学ぶために文学部や社会学部に入学する学生がどの程度いるのだろうか?学問に興味がないなら、自由時間を与えて自分のやりたい活動を自由にさせてやったほうがいいのいではないかと思う。それが文学であり社会学であると思う。
もちろん、締め上げられた薬学部時代を経験した自分としては、羨ましいことこの上ない。
で、10月になって新しいタームの授業に入った。
今期も対面とwebのハイブリッド講義で、画面の向こうにどの程度の受講生がいるか把握しきれていない。もちろん受講総数は知っているが、ログインしている人数をどこで確認するかという基本事項も最近まで知らなかった。
最近は対面で参加する人数が増えた。
少なくとも第1回は対面で参加することを推奨するということを講義シラバスに書いたからというのもあるが、前に説明した「アイス・ブレーキング」をやってくれるから楽しいらしい。
ただし、楽しさでだけ受講されると、数学的な話をし始める秋学期は結構辛いかもしれない。そこで今回は僕の担当している教育学サイドの講義内容をチラ見せしておこうと思う。
我々が生きている環境下では、「自分自身がどうあるか」という部分だけで行動が決まるわけではない。親兄弟などの家庭環境のありよう、学校の友達のありよう、地域社会や国のありようの影響を受ける。この環境をブロンフェンブレンナーという研究者は「システム」と呼び、自分から近い順にミクロシステム・メゾシステム・エクソシステム・マクロシステムと分類した。ざっくりいうと自分に近いシステムほど強い影響を受けるもののそこからの逃避・回避が容易でありはっきりと認識でき、自分に遠いシステムは、影響は弱く逃避困難である上に、簡単には認識(メタ認知)できない。
例えば、「大学に行きたくても大学に進学できない」高校生がいたとする。
この要因は様々だが、例えば家が貧乏な高校生の場合、実家というミクロシステムの問題だ。影響は非常に強いが、一念発起して家から出てお金を貯めればミクロシステムの問題が解決するため進学可能になる。しかし、これが北朝鮮の高校生だった場合はどうか?共産主義諸国では大学進学は伝統的には「配当」されるものなので、就職しろと言われたものは変更不可能だし、逃れることも困難。その上、原因が国家そのものだということを認識しづらい。
著者のユーリ・ブロンフェンブレンナー自体が、ソ連の出身で、アメリカに亡命してハーバード大学を出ている。だからおそらく自分の経験からこの考え方を編み出したのだろう。
ここまでのお話なら、一般的な教育学でよくやる内容なので、まあ面白いし理解しやすい。
しかしこの先が難しい。
最近数学の世界で流行りの「圏論(けんろん)」が登場する。
このあとは僕はほぼ意味不明なことを言う。読まなくていいと思う。
さて。始めるか。
家庭の事情で大学進学できないと言われた子供がいたとする。その子供が希望を叶えられない理由の原因となるのは「本人」と「父」「母」もしいれば「兄弟姉妹」の各点である。この各点は「対象」と捉え、それぞれの人間関係を「射」と捉える。すると、この関係性は圏論でいうところの「圏」を形成している。この人間関係の中で「射」は絶対に自分自身に向かうか他者に向かう。今回の例では
①「本人」が「父」「母」「兄弟姉妹」に対して意見表明して説明するか
②「本人」が「本人」に俺はこれでいいのかー?とか考える。
まあ、「青い空のばかやろー!」と空(くう)に発散するものは、今回は②に含めよう。すると、方向性も強さもはっきりしてるためコンパクト空間と見做せる。高校で学ぶベクトルのようなものだ。
で、これを用いて考えるとこうなる。
例えば父が大学進学は許さないとして本人に強い圧力をかけたとする。すると「父→本人」という「射」が生じる。「射」はベクトルのようなスカラー(量)、つまり強さを持つので、この強さが一定値を超えると、「父」「母」「兄弟姉妹」「本人」のいずれかに反作用としての「射」が生じる。極めて単純化すれば、この時の作用と反作用を精査することで、「父」「母」「兄弟姉妹」「本人」それぞれの関係性や問題発生時の適切な対処がわかる。
通常、こういう論理を大学数学で表現するにはトポロジーなどの群論を使うのが一般的だが、トポロジーは一見類似性のないものを相同であるか否か論じるのに最適だが、抽象度が高い上に、相互の関係性を考察することが群論では面倒臭い。
…という感じになるのだが、受講生諸君は大丈夫だろうか??
まあ、数学という道具のわかりやすい使い道という意味合いで、純粋数学の暗中模索・五里霧中の中にいる学生にとっては面白いと思う。
簡単なものを勿体ぶってチラリズムで人集めして後で絶望させるよりは、とりあえず先に恐ろしさは伝えておいた方が良いかも知れない。そして、学生には一応言っておきたい。
できたケーキはしっかり飾られていて美味しそう。だけど、それ以上作られることはない「完成品」。作ってる最中のケーキは茶色くてそっけないけど、これからどんどん装飾は自由にできる。難しい学問こそやってみる価値があると思うよ。
まあそうは言っても、僕も先の見えぬ大学幾何学は結構きつかった。
だから「政治学」なんかが結構教養時代救いだったので、まあ、興味がある人は後で本流に戻る前提で、ゴリゴリの理系であっても僕の研究も勉強してみてください!
…と、小物感を出しつつ宣伝しておこう。
(第73話へ続く)
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マツウラ カツユキ/57歳/男
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