2023/7/2
続・免許のない教育者たち2023 第40話 オフィスレンタル(3)暇人
登場人物:
高松克己(かつての塾講師理科主任→大学教員兼会社社長)
千葉雅也(高松の教え子・札幌でIT系会社を経営する敏腕社長)
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続・免許のない教育者たち2023 第40話 オフィスレンタル(3)盗聴器
令和3年(2022)12月。柏の葉キャンパス・某レンタルオフィス。
このレンタルオフィスを利用するようになって1ヶ月が経過した。
使い始めてこのオフィスの目的など諸々わかってきた。
この柏の葉地域は、産学協同で未来の街を創造する、というコンセプトでできている。これは2020年の東京大学前期試験の地理で題材としてこの地域が取り上げられていたが、これからの高齢化社会で、知識や経験を持った高齢者が起業できて、さらには学生も起業できて、というような実社会の空間とサイバー空間を創造し、その双方をここで結びつけるというものであった。
その考え方自体に全く問題はないし、面白いなあとは思うが、なかなか「最低限のビジネスマナー」ができていない方が多く、僕の感想は
「いや、ここで知り合った方とビジネスはできないなあ…」であった。
実際、受付の方含めて「噂話」が大好物で、僕が何をしているかということとか、はっきり言えば個人情報・企業秘密なので、黙っていてほしい、もし僕がビジネスパートナーを探しているなら他の利用者にペラペラ喋ることも可能だが、僕は全くそういうのを求めていない。
例えば、食器会社が何社か入っていたようだが、内輪の話を大部屋で言うのはいかがなものかと思う。聞きたくなくても僕は聞こえてしまう。特にクライアントの住所などの情報は完全アウトだと思う。そう言うリスク込みで起業サポートと言うなら理解可能だが、うちにはそぐわない。
だが、この地域にはここしかオフィスはない。
いや、正確に言えばもう1箇所あるにはあるが、子育て中のお母さんが、子供を面倒見つつ起業するというコンセプトで、子供がかなり元気よく遊んでいる。ここで海外のお客さんと商談もなかろう。そうするともはやバスで20分以上かかる柏に行かない限り、一択になる。会社のことをベラベラ喋りたくなくて、電話ブースを見ても上が空いているから丸聞こえ。個別ブースは、人が多くてなかなか開かない。仕方ないので冬の野外で商談した。
仕事をする上で、僕は顧客情報や取引内容は、外部に漏れると取引相手との信頼関係が崩れてしまうため扱いに気をつけている。パソコンを開いて見るのすらしないようにしている。スタバなどのカフェ含め、オープンサロンで仕事する「ノマド・ウオーカー」が世間的には良しとされている。ただ、僕の価値観から言えば、ノマドの会社とはあまり仕事をしたくない。ウチがどこの会社と取引しているかなどは、中小企業ではあるが存続のための機密情報の最たるものである。ドヤ顔で「〇〇会社さんとの取引で〇〇円です!」と進行中の仕事を口にする気がしれぬ。ウチはやらないが、「ああ、そうなんだ。じゃあ、1割下げてオファーできるように調査しよっかな。」と思う人がいてもおかしくない。仕事はパートナー開拓が一番コストがかかる。営業は大変なのだ。
僕もうっかり英語で電話対応して衆目を引いてしまった。それまでペラペラ無駄話していたフロアが一気に静かになり、聴かれているのが明白であった。それ以降、このビジネスパートナーがドイツ語を喋れる人だったので、なるべく日本時間の朝早くの時間帯に、ドイツ語で連絡をもらえるようにお願いした。
なかなかやりにくいなあと思っていたところ、札幌のIT会社経営者の千葉雅也くんから連絡が来た。
「先生。先生のデバイスやSNSからうちの会社に連絡しましたよね?」
「うん。決済がらみならしたよ。」
「なんか、ウイルスっぽいデータがくっついてるんですよね。」
「ん?NINJAとかの?」
「…先生、古いですね。まあ、そんなもんですが。ちょっと危ないから、メールはウイルス・スキャンしてから出してもらっていいですか?」
「わかった。で、公共Wi-Fiが問題ってこと?」
「うーん。公共WiFiでそういう仕込みは難しいですよ。どこかでデータ抜かれてません?」
思い当たる節は、このオフィスと大学しかない。
「じゃあ、一度盗聴を確認してみるよ。盗聴電波の199と395のチェッカーは持ってるよ。」
「それを明日から持ち歩いてください。すいませんがお願いします」
やれやれ…
僕はそうでなくとも用途別にiPad2台、携帯電話3台、パソコンは1台と、Wi-Fi2つ、そしてそれらの充電器を持ち歩いているのでこれに検知器2台かー。
盗聴器は割と仕込むのは簡単だが、日本の国内で出回っている盗聴器は、電波使用可能帯域が限られていて、他の電波と干渉しない領域なので、日本国内で販売されているもので199Hzと395Hzの2種類が存在する…と言うことを、随分前に友人に教えてもらって、それ以降この電波が飛んでいるかどうかをチェックする機会は購入してあったが、実際オンにすると結構盗聴電波は飛んでいる。ただ、その盗聴器にも電気を供給しないと永続的に作動しないため、コンセントプラグに仕込むのが一般的で、怪しい場合はプラグ近辺を探すと見つかることが多い。しかし、インターネットの公共Wi-Fiはこんなものよりもっとセキュリティーガバガバなので、まあ、最近は全く盗聴器は流行らない。
はっきり言えば、昨今では盗聴器は子供のおもちゃだ。
まあでも、何が原因なのか分からぬので、一個一個潰していくしかないか…
そう言うことで、いつも通り朝7時にオープンオフィスの個室会議室に入って、盗聴器をつけた。
「ピーピーピー!」
赤いランプがついた。
(第41話へ続く)
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マツウラ カツユキ/57歳/男
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