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続・免許のない教育者たち2023 第39話 オフィスレンタル(2)抗弁

2023/7/1

続・免許のない教育者たち2023 第39話 オフィスレンタル(2)抗弁

 

登場人物:

高松克己(かつての塾講師理科主任→大学教員兼会社社長)

高松菜々子(高松の歳の離れた妻)

山野桃香(M不動産の貸しオフィス担当者)

春名陽子(M不動産の貸しオフィス・アウトソーシング担当者)

大須賀洋平(M不動産の貸しオフィス・アウトソーシング担当者)

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続・免許のない教育者たち2023 第39話 オフィスレンタル(2)抗弁

令和3年(2022)11月。柏の葉キャンパス・某レンタルオフィス。

僕はレンタルオフィスを使用させてほしいとただ頼みに来ただけだ。

すると、「政治活動をやっている者は利用させない」と解答がきた。

レンタルオフィスを利用したいというだけの者を、思想信条を理由として排除するのはどう考えても差別であり、憲法19条違反である。この件についてただしにきた。正直、M不動産という大手が、こういう人権無視を平気で行うこと自体が信じられない。

僕が知ってる話として、大手企業の人事部が、求職する大学生の自宅近辺のGoogleマップのストリートビューを検索し、その家に「問題のある党」のポスターが貼ってあったら、不採用にして「お祈りメール」を出すということをしていて、これも僕は思想信条の自由の侵害だとは思うが、百歩譲って社員になるなら組合などで問題を起こされたら困るため、そういう裏でコソコソ検索するというのも理解できる。認めはしないが。しかし、ただの利用者が勝手に個人情報を検索されて利用制限される状況はどう考えても異常だ。

結論から言えば、彼らは、今後は利用者の過去を平気でインターネット上で検索しては理由なく行動制限をかける可能性が強く、お金のある自分が、金にはならぬが、損害賠償請求訴訟を行うほかないと思っている。ただ、正直お金にならぬので、なかなか踏み出すことが難しい。僕にとっての最優先は時間なのである。

そういうことで、会議室でお話を伺うことにした。

M不動産の担当者は山野桃香という比較的若い女性、そして春名陽子という中年女性であった。僕が切り出した。

「この度は、お時間賜りましてありがとうございました。さて、私が政治活動を行なっているということで、利用ができないとのことで詳細をお伺いしにまいりました。」

すると山野さんがお話を始めた。

「はい。以前、やはり政治活動を行なっていた方がお申し込みになって、本社とも協議したのですが『政治活動とご自身のお仕事の境界がはっきりしない』ということで、お断りしました。」

なるほど。M不動産の内規が日本国憲法に超越するという、大企業にありがちな傲慢さか。

「そうですか。それでは、ここで私が政治活動する可能性はゼロだと思いますが。」

「それでも、かつて政治活動をされていたことがTwitter上に残っています。もし、2度とTwitterをしないのであればご契約可能です。」

「それは、私に政治活動をするなということを、M不動産が命じているという認識でよろしいですか?」

僕は聞き返した。

「いえ、気に入らないなら他をお探しください。」春名さんという方が口を開いた。

「では、逆にお伺い致しますが、この柏の葉キャンパスはM不動産さんが作った町です。全ての施設が貴社がらみです。そしてオフィスはここにしかありません。政治活動をしたことのある者は、柏の葉キャンパスというこの地域の施設を使用させない、という認識でいいでしょうか?柏の葉キャンパスの外は、バスで20分ほど向こうの柏駅前になりますが。」

春名という人はニタニタ笑っている。後で分かったことだが、今回の決定はこの春名という人が僕のことをネット上でサーチしてオファーしたようだ。

「そういうことではありません。もう政治活動をしないとおっしゃっていただければご利用は可能です。」山野さんがいう。

これ以上のディスッションは無駄だ。この人はただのスピーカーであって、CPUが搭載されていない。誰か上司の命令で動いているだけだ。

「わかりました。それでは政治活動はもうしないとお約束いたします。」

「それでは上司の裁可をとって参りますので、メールをお送りいたします。ありがとうございました。」

僕は、政治活動をしないという約束でこのオフィスを支えることとなった。まあ、一種の思想統制をM不動産という一企業が行うことに危うさを感じない人たちというのに、かなり暗澹たる思いだったが仕方ない。そして、東京で今度会社のオフィスを再開したとき、借りようと思っていた物件も実はM不動産であり、これ以上のディスカッションは時間を食うだけだ。そして、そもそも政治活動に関して続けるか否かまだ考えていた途中だったので、まあ、ダメならダメで政治活動はやめるか、と考えた。

後日、オフィスを使っていいというお話になり、なぜかM不動産の外注したオフィス経営企業の面接を受けろと言われた。

その面接で、大須賀と名乗る男性は、いきなり僕にいった。

「高松さん、参考書書かれていて、かつてYゼミ講師だったんですか?」

この人も、勝手に人のことをネット上で調べ上げて、持ち出してきた。

正直非常に不愉快である。

人間は多面体である。さまざまな側面を持っている。僕が例えば

「大須賀さん、あなたの二人のお子さん、今〇〇小学校と〇〇幼稚園に通われてますね!奥さんは有名な〇〇という会社にお勤めですね?」と言われたらどう思うのだろうか?

全ての側面で会社に帰属している人はいない。時間を切り分けて可能な時間をさまざまな集団に割り振っている。妻の菜々子だって、僕の抱えている仕事ややるべきことにコミットしているわけではないし、全てを把握はしていない。そこでバランスをとって人間生活を行なっている。

人の情報を、勝手に調べて暴露するのは、マナー違反だ。

ありえないほどの田舎者か、外国人でないとこういうことはしない。

ないしは、欧米のありようを都合がいいように曲解している「国内派」である。

いや、困った場所だな…

僕はこの場所しかないという困った状況に暗い気持ちとなった。

(第40話へ続く)

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