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【記事のご紹介】社会保障費のヤバすぎる実態。「税か社会保険料か」論争が無意味な理由

2026/2/21

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▼記事本文

給与明細を見るたびに、税と社会保険料で差し引かれる額の大きさに驚く人も多いはずだ。かつてより控除項目は増え、昇給しても手取りは思ったほど増えない。働いて認められて昇進しても、控除額が増えてほとんど報われない。
そうした実感を背景に、衆議院選挙を終えた政治の世界では、「消費税を減税すべきか」「それとも社会保険料を引き下げるべきか」という議論が、にわかに熱を帯び始めている。
「減税か、保険料引き下げか」という二項対立。実はここに、私たちの生活をずっと苦しめ続けてきた、ある「言葉のトリック」が隠されている。
●逃げられない徴収システムと「払った分だけ戻ってくる」という幻想
日本の社会保障制度は、年金、医療、介護と言う三つの柱によって支えられている。
これらは「保険料」という名前がついているため、多くの人は「万一の備え」や「将来のための掛け金」というクリーンなイメージを抱きがちだ。しかし、その実態は民間保険とは全く違う。
まず、社会保険は「任意」加入ではない。
会社員であれば給与から強制的に天引きされるし、自営業者も加入は義務だ。もし支払わなければ、延滞金が課され、最終的には資産の「差し押さえ」という行政処分が待っている。「払わなければ罰せられる」この強制力を伴う仕組みは、税に近い性格を持つ。
次に、公的保険は、高い掛け金を払えば、それに応じた手厚い給付が約束されるわけではない。
年金制度は、現役世代の保険料を高齢世代の給付に充てる賦課方式で運営されている。自分の老後のために積み立てている制度ではなく、世代間で支え合う仕組みである。少子高齢化が進む中で、若い世代ほど負担が重くなる構造は言い逃れできない事実だ。
医療保険には、病気という偶発的リスクに備えるという点で“保険的性格”が残っている。しかし、自己負担や保険料は年齢や所得によって調整され、負担と給付は比例しない。後期高齢者医療制度も同様の構造だ。
介護保険では、保険料の支払いが40歳以上に限定され、利用者の多くは高齢者である。制度設計の段階から、40歳以上の現役世代が高齢者を支える“世代間移転”を前提とした仕組みであり、40歳に入ってこの負担の高さに気づく人も少なくない。
これら3つの制度いずれも、民間保険のような「払った分だけ、いざと言うときに返ってくる」という保険の仕組みとはかけ離れている。
この構造は、厚生労働省の制度資料からも読み取れる。今の公的保険は“応能負担(支払い能力に応じて負担する仕組み)”という原則に基づいており、所得が高い人ほど高い保険料を取られてしまう。そして受けられる医療サービスや給付の内容は、低所得者と変わらないか、むしろ制限されることがあるのだ。
この“応能負担”は、「リスクへの備え」というより、持てる者から持たざる者へ資産を移す「所得再分配」の要素が大きい。つまり、「保険」という名称でありながら、機能としては「所得税」と同じ役割を果たしている。
●「社会保障のため」という言葉に隠された現実
消費税は長年、「社会保障のための財源」と説明されてきている。政府や与党は、消費税率引き上げのたびに、年金や医療、介護を支えるために必要だと強調した。実際、2012年の税制改正以降、「社会保障と税の一体改革」という言葉は繰り返し使われている。
この説明だけを聞けば、消費税は社会保障専用の目的税であり、集めた分はすべて福祉に使われているように思える。しかし、制度上の実態は異なる。
消費税は法律上、「一般財源」として扱われている。つまり、使い道は社会保障に限定されておらず、国の予算全体の中で自由に配分できる仕組みになっている。実際、消費税収は、国債の返済や公共事業、防衛費など、さまざまな支出にも充てられている。
この点について、財務省も公式資料の中で、消費税収が特定分野に厳密にひも付けられていないことを明らかにしている。社会保障との「対応関係」は、あくまで政策上の説明にすぎない。
一方で、社会保障費に毎年多額の税金が投入されていることも見逃せない。年金の基礎部分、医療・介護制度には、それぞれ国費や地方費が継続的に投入されており、その多くは消費税を含む一般財源によって賄われている。厚生労働省の統計を見ても、社会保障給付費に占める公費負担の割合は年々高まっている。
つまり、消費税は「社会保障のため」と説明されながら、制度上は何にでも使える財源として運用されている。この構造がある限り、消費税を巡る議論は常に曖昧さを抱えることになる。社会保障を支えているのは事実だが、専用財源ではない以上、「社会保障のためだから仕方がない」という説明には、無理があるだろう。
消費税が一般財源である上に、社会保障がこれほど多額の税金で穴埋めされている以上、消費税も含めた「税」と「保険料」は、実態としてすでに同じ一つの財布の中で溶け合っている。それなのに、入り口の名前が違うからといって「減税か、保険料引き下げか」と切り離して論じるのは、国民の負担総額を曖昧にするための「不都合なフィクション」でしかない。
●「税か保険か」論争は、過去にも繰り返されてきた
なぜ「税か、保険か」と、さも別物であるかのような議論が生まれるのか。そこには、国民の目を欺くための「言葉のトリック」がある。
「消費増税」となれば国民は猛反発するが、「社会保険料の改定」であれば、制度維持のためという理屈で、比較的静かに負担を増やすことができる。いわば、保険料は政治家にとって都合の良い調整弁であり、「ステルス増税」の手段として利用されてきた歴史がある。
日本では、社会保障費が膨らむたびに、同じ議論が繰り返されてきた。
その典型例の一つが、1997年の消費税5%引き上げだ。当時の橋本龍太郎政権は、「社会保障財源の確保」を理由に増税を実施した。一方で、医療や年金の保険料負担も同時に重くなり、「税も保険も両方増える」構造がこの時点で定着した。
2012年には、野田佳彦政権のもとで、消費税10%への引き上げが決定された。この際も、「社会保障の安定財源」が最大の理由とされたが、制度の抜本的な改革は先送りされたままだった。
安倍晋三政権期には、減税や景気対策が重視される一方で、保険料や自己負担が段階的に引き上げられた。税を抑え、保険料で補う形に転じている。
つまり日本は過去30年、一貫して「どう集めるか」ばかりを議論し、「どう使うか」「制度をどう見直すか」という最も重要な議論を後回しにしてきた。その結果、「税か保険か」という対立だけが形を変えて繰り返され、国民負担の総額は増え続けてきたのである。
●「税か保険料か」ではなく、「歳出構造の見直し」を問え
負担の取り方だけをめぐる議論では、国民の負担感は根本的に解消されない。入り口である徴収方法を変えても、出口である支出の構造が変わらなければ、結果は変わらないからである。
現実に、日本の社会保障給付費は高齢化とともに拡大を続けてきた。年金、医療、介護はいずれも今後さらに財政負担が増すと見込まれている。制度の持続可能性が問われる中で、負担の種類だけを議論する姿勢は、問題の先送りにほかならない。
今年の衆議院選挙では、「消費税を下げるべきか」「医療費の自己負担をどうするか」「保険料を抑えるべきか」といった論点が繰り返し提示され、有権者の関心を集めた。特に、高齢者医療の自己負担を原則3割に近づけるべきだという主張や、時限的な消費税減税を求める声は、複数の政党や候補者から発信された。
そして、選挙後の国会論戦や政策協議においても、この流れは続いている。与野党を問わず、「負担軽減策」をどう打ち出すかが議論の中心となり、自己負担割合や税率の見直しが繰り返し俎上に載せられている。こうした議論の多くは、「税か」「保険料か」「自己負担か」という負担の分配方法に焦点が当てられがちであり、社会保障給付の規模や構造そのものに踏み込む議論は限定的にとどまっている。選挙公約や国会論戦を見渡しても、「歳出構造の改革」を正面から掲げる例は多くないのが現実だ。
しかし、物価高や実質賃金の低迷を背景に、「国民負担の軽減」を前面に掲げた公約を打ち出すならば、本来はどのような歳出削減をするのかを真っ先に主張すべきではないか。
真に必要なのは、「どこから取るか」ではなく、「何に、どれだけ使うのか」を見直す視点である。給付の水準、世代間の負担格差、制度は時代の変化に対応できているか―――こうした問いに向き合わずして、歳出改革は実現しない。
社会保障も同様だ。社会保障制度は、本来、国民の安心を支えるための制度である。国民の安心を維持するためには、制度の抜本的な再設計は避けて通れない。国民が求める負担軽減を本気で目指すなら、歳出構造に踏み込まない改革はあり得ない。
「右のポケットか、左のポケットか」という不毛な議論に、私たちはいつまで付き合わされるのだろうか。

 

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著者

村上 ゆかり

村上 ゆかり

選挙 第26回参議院議員選挙 (2022/07/10)
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肩書 元公設秘書
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