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村上 ゆかり ブログ

【調査資料】「手取りを増やす」の「手取り」の定義とは何か 乗数効果の実証分析と併せて調べました

2024/12/25

www.jiji.com

 

国民民主党衆議院選挙において議席数を4倍に伸ばしたことが注目されており(他にも要因はありますが)、国民民主党の政策「手取りを増やす」という言葉をよく耳にするようになりました。

しかし、「手取りを増やす」とはいったい何を指すのでしょうか。

上記に挙げた国民民主党の政策では、減税政策をもって「手取りを増やす」とされていますが、名古屋市長選に立候補した大塚耕平氏は「手取りを上げる」としていましたが、具体的な政策を見ると給食費無料、敬老パスの無料化等、減税政策ではなく、無償化(納税者から徴収している税金で負担することで、利用者の負担が無料であるかのようにする政策)でした。また、日本維新の会の馬場前代表は、下記記事によると、手取りを増やす方策として▽消費税の減税▽社会保険料の負担減▽教育の無償化を掲げたそうで、これは減税政策と無償化が混在しています。

手取り増やす策を推進 維新・馬場代表が来県 | 香川のニュース | 四国新聞社

 

一見、減税政策も無償化も同じように感じますが、乗数効果を調べると異なることがわかります。

 

乗数効果とは

https://imidas.jp/ichisenkin/g01_ichisenkin/?article_id=a-51-028-11-03-g204

 

乗数効果の実証分析について、浜田聡事務所より参議院調査室へ調査依頼したところ、下記回答を頂いています。

【依頼内容】

乗数効果等について

財政支出よりも減税政策の方が乗数効果が高いという実証分析(海外)があるようなのですが、可能な範囲でその詳細が知りたいです。

②①について、内閣府の短期経済マクロモデルでは供給側への影響を想定していないため、財政支出の方が乗数効果が高くなっているという有識者の見解があるようなのですがこの見解の根拠を可能な範囲で調査頂きたいです。

 

【回答】

財政政策の効果を示す指標の一つとして財政乗数がありますが、

これには、ご案内のとおり、政府支出の増加によるものを指す「政府支出乗数」(政府購入乗数等ともよばれる)と減税によるものを指す「租税乗数」があります。

 

教科書的(参考資料①352-355頁参照)には、政府支出乗数は、1/(1-MPC)(MPCは限界消費性向)である一方、租税乗数は-MPC/(1?MPC)で求められるとされ、MPCは0から1の値をとることから、政府支出乗数に比べ、租税乗数の方が小さくなるとされます。これは、政府支出の増加は、GDP増加にそのままつながる一方で、減税は、減税によって家計等に所得移転された分が消費されることを通じてGDPに影響を与えるところ、必ずしも減税分の全てが消費されるわけではないことによります。

 

このように、理論上は政府支出乗数>租税乗数となることが考えられますが、①でお尋ねいただいている、租税乗数の方が高くなることを示す実証分析について、教科書(参考資料①359頁)でも取り上げられているものとして以下の二つがあります。

 

▼Alberto Alesina and Silvia Ardagna, “Large Changes in Fiscal Policy:Taxes versus Spending”,Tax Policy and the Economy, 24 , 2010, pp. 35-68

この論文では、減税に基づく財政刺激策は、歳出増に基づく財政刺激策よりも成長率を高める可能性が高いとしています。

→論文全体の要旨の和訳、回帰結果とその解釈の部分の要旨(和訳)

 

▼Robert J. Barro and Charles J. Redlick, “Macroeconomic Effects from Government Purchases and Taxes”,  Quarterly Journal of Economics, 126, February 2011, pp. 51-102

この論文では、政府支出乗数(国防費に限る)と租税乗数を算出し、政府支出乗数<租税乗数であることを報告しています。

→回帰結果とその解釈の部分の要旨(和訳)




②について

内閣府による短期日本経済マクロ計量モデルを用いて推定した財政乗数については、参議院予算委員会へも資料提出がなされております。

上記資料の中で内閣府は、

「本モデルは、短期的な需要面での分析を目的に開発されており、供給面での影響

を十分にとらえることが出来ない。本モデルにおける法人税引き下げの効果は、法人税減税が需要サイドに与える短期的な影響を評価しており、生産性の向上やイノベーション、企業 立地への影響等の中長期的な供給サイドを通じた効果は、シミュレーション結果には反映されていない」

と述べています。

 

財政政策のマクロ経済への効果については、総需要に及ぼす効果が大きいと言われる一方で、総供給への効果も大きいとの見方があります。

そして、供給面への効果が大きいとする理由としては、減税による労働供給の増加が挙げられているほか、政府支出の増加と比較して減税は投資需要をより大きく押し上げるとの見方もあります。

参考/マンキューマクロ経済学Ⅰ 入門編(第5版)より

(マンキューのブログ:https://gregmankiw.blogspot.com/2008/12/spending-and-tax-multipliers.html

 

②でお尋ねいただいている、有識者の見解の根拠についてですが、上で述べたような総供給への効果を意識した見方(減税で労働供給が増加する・減税で投資が増加する)があることを背景として、これが反映されていない可能性がある内閣府の短期日本経済マクロ計量モデルでは政府支出乗数>租税乗数となっていると主張されているのではないかと推察いたします。

参考/マンキュー経済学Ⅱ マクロ編(第4版)

↓P566より抜粋

サプライサイダーと呼ばれる経済学者は、減税が総供給に及ぼす影響は非常に大きいと論じてきた。

 

―――――

 

「手取り」の定義について、浜田聡事務所より参議院調査室へ下記調査依頼を行いました。

 

【依頼内容】

「手取り」の定義について、

所得税などの基礎控除引き上げ等減税や社会保障の控除額等の国民負担の引下げを以て「本来稼いだお金等から手元に残るお金」のこと

・上記の他、再エネ賦課金等の法令で支払が義務化されているものの負担を引き下げ、手元に残るお金のこと

・最低時給の引き上げなどで、今の働き方で総支給額が増えること

のほか、

補助金支給や●●無償化等、財政支出により個人や世帯の所得を上げること

という定義が混ざっているもの等があるようです。この「手取り」の定義について、可能な範囲で下記ご調査をお願いします。

①政府側の答弁や資料に記載のある「手取り」の定義

→国会等の答弁のほか、各省庁で作成した資料に「手取り」の記載があればその定義

→過去のものと現在と定義に違いがあるか

②国政政党の主張する「手取り」の定義

→各政党の「手取り」の定義

→ピンポイントで恐縮ですが、国民民主党の「手取り」の定義と、名古屋市長選で大塚耕平候補が「手取りを増やす」政策を主張しており、その定義との違い

③主要メディアの世論調査の「手取り」の定義

 

【回答】

「手取り」の定義について 
①政府側の答弁や資料に記載のある「手取り」の定義 

▼国会等の答弁のほか、各省庁で作成した資料に「手取り」の記載があればその定義 

・国会答弁では「可処分所得、ネット所得、それから実質的賃金、手取り賃金、これはすべて私どもとしては同じものを指す」(厚生省年金局長、平成6年10月31日参議院厚生委員会)といった答弁や「手取りすなわち可処分所得」(大蔵大臣、昭和58年9月22日参議院予算委員会)といった答弁がございました。 

・政府の資料としては、総務省が実施する家計調査の用語解説において「可処分所得……「実収入」から税金、社会保険料などの「非消費支出」を差し引いた額で、いわゆる手取り収入のことである」とされているほか、金融庁の資料である「基礎から学べる金融ガイド」では「手取り収入とは、会社員の場合は給与から税金(所得税、住民税)と社会保険料雇用保険、健康保険、厚生年金保険など)を差し引いた後の金額です」とされています。 


▼過去のものと現在と定義に違いがあるか 
・国会答弁を過去の定義とすれば、現在と同様に可処分所得を手取りと定義していると考えられます。 


②国政政党の主張する「手取り」の定義 

▼各政党の「手取り」の定義 
・調査した限りでは、明確に手取りの定義を示していない政党もございました。 
・一方で、日本維新の会は政策パンフレットや馬場伸幸氏の発信内容から可処分所得と手取りを同義としているように推察できます。また、国民民主党は手取りを増やす方策として、減税や社会保険料の軽減に加えて、家計・子育て支援を挙げています。そのため、可処分所得から更に生活に必要不可欠なエネルギー費用や教育費を除いた金額を手取りと定義しているのかもしれません。 

 

▼国民民主党の「手取り」の定義と、名古屋市長選で大塚耕平候補が「手取りを増やす」政策を主張しており、その定義との違い

大塚耕平氏は名古屋市長選において、「手取りを増やす」政策として、給食費、敬老パス負担金、がん検診代を無料とする「3つのゼロ」を訴えていたようにも読み取れます。そのため、手取りとしては可処分所得からこうした経費を除いた金額を手取りと定義しているかもしれません。よって、国民民主党が掲げる手取りと近いものを想定していると考えらます。 


③主要メディアの世論調査の「手取り」の定義 
・手取りに関する世論調査は存在しましたが、世論調査における手取りの定義は確認できませんでした。

 

「手取り」の定義によって、経済への影響や国民の生活への影響範囲等が変わる事は留意しておくべき点だと思います。

また、同じ「手取り」という言葉で語るのではなく、区別すべきではないかと思います。

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著者

村上 ゆかり

村上 ゆかり

選挙 第26回参議院議員選挙 (2022/07/10)
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肩書 元公設秘書
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