石川 つばさ ブログ
2024年7月17日(水)~7月19日(金)に産業建設常任委員会で視察を行いましたので報告します。
初日、埼玉県さいたま市を訪れ、スマート・ターミナル・シティさいたまについて説明を受けました。同市は人口134万人余を擁する政令指定都市で、ここ10年で10万人の増を記録するなど依然として人口増が続いています。同市の中核的な駅の1つである大宮駅は東京駅や新宿駅まで約30分と通勤圏内であることからも、都内で勤務する層の流入が窺えます。
同市では、SDGsやカーボンニュートラルといった社会的な要請やトレンドへの対応として、スマートシティの取り組みを行っています。今回の視察の本筋からは外れますので詳細までは確認しませんでしたが、エネルギー政策、地域経済、健康寿命の延伸など多様な事業を多くの部署が関わる形で展開がされているとのことでした。今回の視察対象であるスマート・ターミナル・シティはそうした一連の事業の中の一つとの位置付けで、同市都市局が所管されています。シェア型マルチモビリティと称し、電動アシスト付き自転車、スクーター、超小型EV、電動サイクルが実証実験として運行されていました。規模は違えど、安城市のシェアサイクルやかつての「き~☆モビ」を足し合わせた様なイメージです。同事業の実務は民間企業が行っており、市はサイクルポート用に公共用地などの場所の提供を無償で行うものの、資金的な持ち出しは行っていないとのことでした。実証実験中、民間側で国の補助金を活用しているそうですが、採算ラインには至っていないそうです。この点に関しては民間事業者が入っていることもあり、き~☆モビ同様に核心部分の情報はやや見えにくさを感じました。実証実験期間も終盤に差し掛かっているということで、遠からず今後の方針が示されると思われます。黒字化していないとはいえ、「準公共交通と考えた際、どこまで支援するか検討中」という言葉が聞かれたことからも、存続ありきと私は解しました。利用する層は、通勤利用の20~50代男性が多いようで、一定程度インフラとして定着したものは容易になくせないという事情があるのかもしれません。また、利用層の偏りは使う層と使わない層の二極化とも取れます。人口134万人余に対し、多い月では約14万件の利用があるそうで、平均すれば10人に1人以上が月1回使った計算になります。実際には先述のように、通勤利用というヘビーユーザーが多いようなので、一度も利用経験がないという人も相当数いるであろうことが容易に想像できます。さいたま市では初回利用の機会づくりに力を入れ、市民の日(安城市でいう発展祭?)に当日限りの特別クーポンを配布したり、決済手段の多様化を図ってみえました。自分自身の経験も踏まえて言えば、他の類似サービスも含めて初回登録や利用時の予約の煩わしさは利用を遠ざける要因になるので、そうしたものを極力排する必要があります。さいたま市では400以上のステーションを構え、相当大規模な実験を実施されていたので、今後の検証結果に期待したいと思います。
二日目、茨城県常総市を訪れ、アグリサイエンスバレー整備事業について説明を受けました。同市は東京まで1時間の距離で、南北に長い市域の半分以上が農地とのことでした。市域の西部は高台になっており畑や果樹園が多く、東部は水田が中心で、農業が市の基幹産業であるとお聞きしました。
10年ほど前に、アグリサイエンスバレー構想が持ち上がったそうです。高速のIC周辺に「農地エリア」「都市エリア」を設け、生産、加工、流通、販売を一体的に行う産業団地を形成するというものです。同一帯は過去に土壌整備も行われた優良農地であることから、単純に田んぼを潰すことはできず、「農業価値を高める6次産業化」というコンセプトを持たせる必要があったようです。視察時点では全施設の開業に至っておらず、部分的に開業している状態でした。農地エリアでは、作物の自動収穫ロボットの導入や、イチゴをリフトに吊った状態で栽培する「空中いちご園」の実現がなされているとのことでした。一般的ないちご畑は、人が通るための通路部分と、イチゴを植える畔のような盛り上がった部分があります。当然ながら足場は悪く、また、通路部分を確保しようと思えば自ずと面積の半分程度は作付けできないデッドスペースにならざるを得ません。「空中いちご園」では、リフトを上げてしまいさえすれば足場はフラットであるため、障碍者雇用に寄与するだけでなく、来園者目線で見てもベビーカーでのいちご狩りが楽しめるとのことでした。加えて、デッドスペースが生じないため、一般的ないちご畑に比べて格段に「密」に苗を植えることが可能とうかがいました。エリア全体の中で唯一、公共施設との位置づけになっているのが道の駅で、実際の運営は指定管理者に委ねられていました。道の駅には実際に足を運びましたが、平日の昼間にもかかわらず人がごった返している状態でした。説明によれば、指定管理者が報道機関とのパイプを持っており、首都圏向けの情報番組で定期的に紹介されていることが一因とのことでした。現状、アグリサイエンスバレー全体で1000人近い雇用が生まれてり、未稼働部分の操業が始まれば2000人にまでその数は膨らむと見込んでいるそうです。一連の大型事業ですが、事実上その中心を担ったのは大手ゼネコンの戸田建設です。聞けば、同社はここで利益をあげることは重視しておらず、むしろ先例としてパッケージ化して他の自治体に展開したいとの意向であるとのことでした。現状、未稼働部分も多く、数年後にどのような姿になっているか注目したいと思います。また、他自治体へ展開されることとなれば、当然ながら常総市と同条件とはいかないはずです。その条件がどのような水準であるかも併せて注目したいと思います。
最終日、茨城県守谷市を訪れ、上下水道施設管理等包括業務委託について説明を受けました。同市は前日の常総市に隣接しており、人口、面積ともに安城市の4割程度の規模となっています。
同市では昨年度より、上下水道にけるコンサルタント業務(計画業務、設計業務、施工管理業務)を含む包括業務委託を行っています。日常の運転管理などごくごく限られた範囲の委託であったものを、数十年かけてその範囲を段階的に拡大して現在に至っています。市の設定した性能発注で、期間はこれまでの3年間よりも格段に長い10年間とのことです。いただいた資料によれば、記載のある中で最も古い2000年には32人いた担当職員が、現在は19人にまで減っています。率にして4割以上の削減です。平たく言えば、委託料が人件費削減分よりも低ければコストカットになるというのが主たる目的であるように感じられました。こうした民間への委託は国による誘導施策という色が強く、本件でも国費が充てられるとのことでした。ただ、国費が充てられるのは限定的な範囲とのことで、委託費を丸々賄うことはできないようでした。また、比較的事業が新しいということもあり、金額的な結果は出ていないとのことでした。総じて、実務の多くを委託することで、行政としてはそのノウハウが継承されず失われていくのではないかと感じられました。説明では、研修やOJT等によって対応がなされるのでその心配はないとのことでした。ただ、この日の説明員の方々は豊富な経験をお持ちであろうと思われましたが、委託範囲の拡大とその長期化で、就職当初からその状況が当たり前となる若手職員やこれから入ってくる職員が果たして委託先と同等かそれ以上の知識を持てるかは疑問です。先述の通り、市の設定した性能発注での委託ですので、その水準をクリアしているかを市としてはチェックする必要があります。チェックする側とされる側という関係になった時、する側の知識や経験が下回っていればチェックが機能しなくなることも懸念されます。一歩引いて、「新しい民営化」「段階的民営化」という見方をしたとき、その長期的な影響を十分に検討する必要があるように感じられました。