選挙ドットコム

大島 あつし ブログ

人口戦略シンポジウム(人口戦略会議議長三村明夫氏/日本製鉄会長)でパネリストとして発言する。

2024/10/3

人口戦略シンポジウム

主宰:人口戦略会議2024年4月24日

シンポジウム①政治として人口戦略にどう取り組むのか

[コーディネーター]

増田 寛也

日本郵政株式会社代表執行役社長

人口戦略会議副議長

[パネリスト]

木原 誠二 衆議院議員(自由民主党)

伊佐 進一 衆議院議員(公明党)

大島  敦 衆議院議員(立憲民主党)

藤田 文武 衆議院議員(日本維新の会)

宮本 太郎 中央大学法学部教授

シンポジウム①では、各政党の衆議院議員が出席し、人口減少・少子化の議論や対策に政治として何が欠けていて、何をすべきかについて語り合った。その中で、経済的な視点や本気度、将来ビジョン、国民のコンセンサスなどが欠けているとの意見が出された。それを踏まえ、立法府として、エビデンス(証拠)に基づく議論を深めて合意を図る必要があり、ラウンドテーブルを設け、党派を超えて目標と情報を共有し、自由闊達に議論していかなければならないとの考えで一致した。

これまで何が欠けていて、今後どうしていくべきか

増田:それでは、シンポジウムの最初のセッションを始めます。

本日は国会議員の皆様および北欧の社会福祉に大変詳しい宮本教授にも出席いただいています。このセッションでは、人口減少が進んでいる中、①「これまで何が欠けていたのか」、そして「今後どうしていくべきか」、そのうえで②「立法府として何をすべきか」の二つについて議論したいと思います。それでは、まず①について順次お話しください。

木原:自由民主党の衆議院議員の木原誠二です。今回、人口戦略会議で示された二つの枠組み、すなわち人口減少のスピードを緩和させ、最終的に安定させる「定常化戦略」と、質的な強化を図り、現在より小さい人口でも、多様性に富んだ成長力のある社会を構築する「強靭化戦略」の提示は、従来にはないものでした。まずは、そのことが足りなかったところだろうと思います。

私はこれまで環境問題に取り組んできました。そこではCO2を削減する戦略と社会環境の変化に適応する戦略、つまりミティゲーション(緩和)とアダプテーション(適応)の両輪で取組を進めてきました。人口減少問題でこういった両輪が今まで提示されてこなかったことが、対策に欠けていたことだと感じています。今回、定常化戦略と強靭化戦略という人口戦略の両輪が示されたので、我々も政治としてこれをしっかり進めていく必要があると受け止めています。

定常化戦略では、一つ足りなかったことがあったと考えています。それは、少子化問題を社会課題、社会政策の観点でしか捉えておらず、経済の問題として捉える視点が政治に欠けていたことです。ただ、今回、政府は、「こども未来戦略」の中で経済の視点から捉え、経済的な不安感をどう除去していくのか、つまり雇用や所得、働き方に焦点を絞った新しい資本主義としての取組を示しています。私はそれを踏まえ、賃上げを持続可能なものにして若者の所得を向上させ、児童手当をはじめ、さまざまな社会的政策を加えていくことによって安心感を生んでいくことに全力で取り組んでいきたいと思っています。

一方、強靭化戦略のキーワードは安心感であり、多様性に富んだ成長力のある社会における安心感をいかに提示できるかだと思います。この安心感を与える意味では、二つのことが重要になると考えています。

一つは、人への投資を徹底して行うことです。仮に人口が減少しても、人への投資をしっかり行っていけば安心感が醸成されます。岸田政権がリスキリングに焦点を当てているのは、そういうことなのです。もう一つは、デジタル化や自動化、省力化によって、人口が減少しても社会をしっかり回していけるようにすることです。日本は自動化や省力化が進んでいる国だと思われていますが、実は世界の中でも遅れていると言ってもいいでしょう。宿泊、観光、飲食などのサービス業は生産性が低いのですが、自動化・省力化を進めていけば必ず生産性は上がります。そういう姿を見せることによって定常化した社会の中でも、日本は成長できると示すことも政治の取組課題だと思います。今回、人口戦略会議で大変良い枠組みを示していただきましたので、政治としてもこれをしっかり進められるよう、超党派で頑張りたいと思います。

伊佐:公明党の衆議院議員の伊佐進一です。人口減少が進んでいる中で何が欠けていたのかについて、私は政治の本気度と国民の皆様の意識が欠けていたのだろうと思っています。両者は恐らく裏腹の関係にあります。

例えば、人口減少、少子高齢化の流れには、戦後どの国も苦しんできました。出生率が下がっていく中、1980年代に入って北欧を中心にヨーロッパの多くの国々が本気で少子化対策に取り組み始めました。すると1980年代を境に、そうした国々では出生率の低下が止まり始めました。

その中で頑張れなかったのが、ドイツと日本と韓国です。ドイツは2000年代に入って本気で少子化対策に取り組み、出生率の低下に歯止めをかけました。最後の最後まで頑張れなかったのが日本と韓国です。日本の出生率は1.26、韓国は0.72で8年連続して下がっています。日本と韓国にとっては、今が最後のチャンスになるのではないでしょうか。

その意味で、今回のこども・子育て支援、少子化対策にしっかり取り組むための3.6兆円の予算には本気度を感じます。OECDトップのスウェーデン並みの少子化対策を進めるという決意が込められており、この本気度は今までなかったことではないかと捉えています。

もう一つ欠けていた国民の意識とは、例えば、少子化対策について地元で話すと、高齢者が多いこともあって年金暮らしの生活の話になり、意識が子育て支援にあまり向いていないということです。それに対して私は、介護保険料などが増えているのは若い世代が減っているからで、しかも若い世代の給料が上がってこなかったことに要因がある、こども・子育て支援をしっかり行って若い世代が元気になれば、高齢者の皆様にも良い影響が及びますとお話しします。少子化や人口減少を自分の問題として捉える意識がなかったところが大きな問題でしたので、その意識醸成が政治の大きな役割であり、しっかり取り組んでいくつもりです。

大島:立憲民主党の大島敦です。何が欠けていたかと問われると迷ってしまいますが、私は今から40年ぐらい前の1983年に、西ドイツのデュッセルドルフに赴任しました。

最初はあまり刺激のない、おもしろ味のない国だと感じていたのですが、1年間暮らしているうちに、落ち着いていて、一つ一つの歯車がしっかり回っている社会だと感じるようになりました。しかも会社に残業がなく、確固たる社会基盤の上で生活や事業活動が展開されている気がし、非常に良い国だなと思いました。

ドイツに赴任していた当時のことを振り返って考えてみると、私たち日本に一番欠けているのは、どういう国にしたいか、なりたいかというビジョンではないかと思います。例えば、日本の人口が1億人を切ると予測されている2050年には、カーボンニュートラルの実現という課題があり、エネルギー政策や使用済み核燃料の問題などもあります。これまでとは全く様変わりする時代を迎えていくに当たって、私たちが享受してきた豊かさによって生み出された負荷や負担を、2050年の1億人を切った世代に負わせていいのでしょうか。その解決策を考えることを前提としながら、2050年の目指す姿、理想像を掲げなければなりません。

具体的なイメージを描き、その実現に向かって、さまざまなリスク要因を踏まえ、長期的なプランをローリングしながら進めていくことが、これから必要だと考えています。

藤田:日本維新の会の藤田文武です。日本の人口問題の捉え方について一番大事だと思うのは、今後の日本の絵姿を示し、国民の皆様とコンセンサスを図っていくことです。

基本的に人口減少には抗えず、労働人口が減って労働力不足に陥ります。消費人口も減るので購買力が落ち、また、地域コミュニティが崩壊していく恐れもあります。それを防ぐために政策を打たなければなりませんが、その政策は二つしかないと考えています。人口減少を緩やかにするために出生数を増やす政策と、政府は移民という言葉は使っていませんが、いわゆる移民政策です。

移民政策には今後、国民の皆様とのコンセンサスが重要で、私は政治家として、この問題から逃げてはならないと思っています。移民については、労働者不足を補うためにたくさん受け入れようという考え方から、抑制的な考えまで、さまざまな考え方があります。個人的にはかなり抑制的な考えを持っていますが、ただ、抑制的だからこそ真剣に取り組むべきだと考えています。今回、政府が進めている育成就労を起点として労働者を少しずつ増やしていくことについては、概ね賛同しています。

その場合、育成就労の規模や日本社会に与えるインパクトなどを踏まえ、国民の皆様とのコンセンサスを図りながら進めていく必要があるでしょう。今後の人口政策における重要な取組課題だと考えています。もう一つ、人口対策において時間がかかる問題の一つとしては、東京一極集中の問題があります。その解決には、東京から地方へ人口が逆流するようなインセンティブを経済システムとしてつくるべきだと考えています。今後、限られた資源をどのように住民サービスに分配するかが、全ての市町村の共通課題になってくるでしょう。ただ、都民は東京から富が流出するようなことには反対するでしょうから、東京の政治家は取り組みにくいかもしれません。いずれにしましても、部分最適と全体最適は違うところがあります。

外国人労働者をたくさん受け入れると企業は助かり、部分最適は達成でき ます。ただ、全体最適を考えた場合、例えば、文化的に受け入れられるのか、分断が起こるのではないかといった心配があります。そこは、国民の皆様と丁寧にコンセンサスを図っていく作業が、政治サイドの最も大きな役割ではないかと思っています。

宮本:今の4人の発言を踏まえ、少子化をめぐる議論として日本の政治に欠けている、あるいは強めてほしいことを2点お話しします。

1点目は、少子化対策をめぐる豊かな合意をつくり出し、しっかり掘り下げることです。4人の話を聞いていて、明確な対立点があるわけではないと感じました。ところが、この会場を一歩出ると劇場政治の下で、合意点を育てるよりも対立点をぶつけ合う流れになりがちです。今の日本の少子化状況はそういう政治を行っている余裕はないわけで、しっかり合意しなければならない点が多々あると考えています。

例えば、政府の少子化対策について、子育て支援が少子化対策になっていないのではないかという批判がしばしば野党から寄せられていますが、当たっている面があります。有配偶出生率、つまり結婚した世帯から生まれてくる子どもが減っている根本要因は、その前段となる有配偶率の問題、すなわち若い世代が安定して働いて結婚し、子どもを産む経済的環境がないことです。政府は、若い世代がしっかり勤労所得を得て結婚し、子どもを産める状況をつくる施策を打ち出しています。ただ、先ほど話に出たリスキリングは少し抽象的で、子どもを産む余裕のない世帯にリスキリングがどこまで届くかの見通しも鮮明ではありません。そこを明確にすることも、合意すべきことではないでしょうか。

また、2014年の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、2020年まで地方に30万人の雇用をつくり出し、2020年からは10万人ずつ増やすとしていました。この戦略については与野党一致していたわけですけれども、残念なことに目標は、なかなか達成されていません。豊かな合意点を掘り下げると言いましたが、なぜ達成していないのかについて与野党で議論を重ねてほしいと思います。

それから、人手不足になったという受け止め方がありますが、実は必ずしもそうではありません。日銀短観で見ると確かに人手不足感は強いのですが、昨年12月時点の総務省の労働力調査を見ると、失業者数は前年同月比で1万人増えています。つまり、人手不足と失業の状態が同時進行している、極めて新しい状況になっています。これは地方において、さまざまな事情に合わせて働ける柔軟な働き方を、どれくらいつくっていけるかが問われていることになります。これは、政治家の皆さんの知恵の出しどころだと思います。

もう1点は、欠けているというのは少し言い過ぎで期待したいことですが、国民、特に若い世代のいろいろな不安や迷い、恐れに丁寧に寄り添ってほしいということです。政府はこれまで「希望出生率1.8」を前提に議論してきました。ところが2021年の出生動向基本調査では1.6になっています。特に、結婚して子どもをつくるべきだと回答している女性の割合は、5年前の36%が半分になっています。しかし、若い世代は結婚したくない、子どもはほしくないと思っているわけではありません。ただ、繊細度を増している若い世代は、愛情の対象が増えていくことに対して、希望と同時にさまざまな恐れや不安を抱いており、揺れているのです。ですから、丁寧に寄り添ってほしいというのが切なる願いです。

例えば、「こどもまんなか社会」というスローガンは間違ってはいません。霞が関・永田町界隈では、いいスローガンです。ところが今、子どもを産み育てている世帯は子どもを真ん中に置いて必死に暮らしているわけです。女性は子どもを産んだ瞬間から母親にならなければなりません。子どもの笑顔がはじける休日を過ごそうと頑張っています。このプレッシャーが、まだ子どもを持っていない、あるいは結婚していない若い世代の恐れや不安にもつながっています。その気持ちに、政治はぜひ丁寧に寄り添ってほしいと思います。

人口減少対策に、立法府として何をすべきか

増田:宮本教授のお話は、これから議論していただく「立法府として何をすべきか」の合意形成につながるような問題提起だったのではないかと思います。

次に、「立法府として何をすべきか」に移りますが、人口戦略会議では、超党派で議論すべき国会的課題としてプログラム法案を国会で審議制定したり、国会に人口戦略の常設審議組織を置いて経常的に議論したりしてはどうか、といった提言を行っています。そのことも踏まえて、順次お話しください。

木原:国会として何をすべきかの前に1点お話ししますと、先ほど指摘があった東京一極集中の問題は、東京の議員こそが是正の「のろし」を上げなければならないと考えています。ただし、東京一極集中の是正によって東京を弱体化してもいいということではありません。東京から奪ったもので地方を豊かにするのではなく、東京の豊かさを維持しながら、その豊かさを全国に広げていくことが大事で、そういった視点から取り組みたいと思っています。そのうえで、立法府として何をすべきかについてお話しします。

国会には少なくとも二つの役割があります。一つは議論を深めること、討議する役割で、もう一つは結論を出すこと、合意を図る役割です。ですから、まずはしっかり議論することを立法府として行うべきです。それは国会の場でも、国会以外の場で行ってもいいのではないでしょうか。

たまたま本日のパネリストの議員は全員が、「令和国民会議(令和臨調)」に関わっています。私は令和臨調の幹事を務めていますが、令和臨調の中には人口減少の部会があります。国会の場に入ると心が熱くなって議論できない場面がありますので、国会以外の場、例えば、人口減少の会議の中に超党派で議論する枠組みを設けて、しっかり議論を深めていけばいいのではないかというのが1点。

2点目は、EBPM(証拠に基づく政策立案)が大事で、国会内で統計と数字を共有することが非常に重要だということです。エビデンス(証拠)と事実に基づいて議論できるベースを国会の中につくるために、エビデンス・事実をしっかり共有できる枠組みが立法府にあればいいのではないでしょうか。そのうえで、最後は合意を得なければなりません。合意に至るプロセスは、やはり一つ一つ踏んでいかなければなりません。3.6兆円という極めて大きな予算を伴う少子化対策を提案していますので、これを踏まえ、次のステップを超党派で議論していきたいと思っています。

伊佐:本日、午前中に厚生労働委員会が行われました。国会で委員会を開く前には理事会や理事懇談会を行い、各党の理事が委員会の運営について話し合います。それが早めに終わると雑談になり、例えば、子ども・子育て支援法が話題となって、超党派で意見交換が行われたりします。実はこれが結構おもしろく、このような議論が国会の場で行えればいいのに、といつも思っています。でも、絶対できません。本音と建前は違うということがあるからかもしれませんが、最も大きな要因は、そもそも国会とは、政府に対する質問の場であって、政党が双方向で議論する形になっていないからなのです。唯一、憲法審査会では互いに議論できますので、少子化問題についても双方向で議論できる場をつくれないかと思っています。

では、超党派で何を議論すべきかですが、絶対に議論すべきテーマは何点かあり、そのうちの一つが財政のあり方です。財政改革の議論は、各委員会や各省庁、あるいは財務省で行うことは難しいので、立法府で議論すべきだと思っています。具体的には、例えばプライマリーバランス(基礎的財政収支)です。2025年度の目標は瞬間風速で達成できるかもしれませんが、達成できたとして国民生活の何が変わるのでしょうか。むしろ、たとえ赤字であっても、投資や歳出が経済成長、あるいは潜在成長力の強化につながれば、十分意味があると思っています。最終的には税収として回収できますので、単に目先の数字を追うのではなく、プライマリーバランスとは別の指標が必要ではないかという気がしているのが、まず一つです。

もう一つ、超党派だからこそ議論しなければならないのは負担の議論です。子ども・子育て支援法については、給付の中身は賛成であったとしても、負担の議論には相当の覚悟が必要です。当然、政権与党は示さなければなりませんが、今回は立憲民主党も日本維新の会も対案を出しましたので、負担の議論が噛み合ったところがありました。ですから、負担の議論は今後も正面からしっかり行っていくべきだと思っています。

最後にもう一つ、今の社会保障、少子化対策は一定の財政フレームとしてキャップがかかっています。高齢者の自然増、高齢化の伸びを踏まえることになっていますから、何か新しいことを行おうと思ったら何かを我慢しなければなりません。ゼロサムが今の社会保障の予算なのです。

しかも子ども・子育て支援もこの社会保障のフレームに入れたわけですか ら、インフレの中でこのまま推移すると立ち行かなくなります。今年は3年に一度のフレーム見直しの年ですので、ぜひ超党派で議論できればと思っています。

大島:私は国会議員の1期生と2期生のときは、厚生労働委員会に所属していました。結構大変な委員会で、どうしても政争になるのです。それで若い国会議員には、理屈で解決する問題は、この委員会には来ないという話をしています。理屈で解決しない問題を国会で引き取って、ぶつかり合いながら考えて妥協点を見つけています。それがある意味、国会の機能といえます。しかし、今後の2050年、あるいは2100年のことを考えると、少なくとも共通認識は整えたほうがいいでしょう。

実は、与党と野党では情報の非対称性があります。与党の議員には役所が毎日ブリーフィングに来ますし、この資料がほしいと言うと全部用意してもらえ、本音ベースで話せたりもします。一方で、野党にはそのようなことは全くありません。この情報の非対称性を解消して、お互いに正しい情報で議論できるようにすることが必要だと思います。ただ、野党も気をつけなければならないのは、その情報を政争の具に使うことは慎まなければなりません。そのバランスにはなかなか難しい面はありますが、令和臨調のようなスキームをつくったり、与野党にあっても志を一つにする議員を多くつくり続けたりすることが大切だと思います。

私は、たまたま20年以上議員を務めさせていただいていますが、同じ志の議員が集まれるような仕組みがつくれればいいのではないかと思っています。

藤田:立法府として何をすべきかですが、人口戦略の目標をつくるべきで、引いてはプログラム法案をつくるべきだということには私も賛同します。先ほどもお話ししましたが、国民の皆様とどう絵姿を共有していくかについて、経済の側面で考えなければならないのは、人口が減少しても経済成長するビジネスモデルに転換することだと思います。

過去の歴史を振り返ると、インフレやデフレはGDPに影響しませんが、労働力人口が増加する「人口ボーナス(生産年齢人口(15~64歳)が従属人口(14歳以下もしくは65歳以上)よりも大きく上回る、もしくは増加し続けている状態)」か、労働力人口が少ない「人口オーナス(従属人口が生産年齢人口を上回る状態)」かでは、確実にGDPに影響します。人口オーナスであっても生産性を上げ、GDPを下げないようにするには、テクノロジーファーストでイノベーションを後押しする、あるいはチャレンジを推奨する構造転換が求められるでしょう。

政府も、雇用の流動性を高めていく、つまり成長産業に資産や資源がしっかり集中投資できる柔軟性のある社会を目指そうということを言っており、私はその方向性に賛同します。ただ、日本の社会保障を考えると、企業が雇用を担保して労働者に社会保障を提供していることから、多くの社会保障は企業を通じて行われています。それに対して私は、企業ではなく直接、労働者や国民に投資するセーフティネットを敷くように転換すべきだと思っています。これは大構造改革になりますが、それぐらいの転換を図らないことには、人口が減少する中でGDPが伸びていく世界観を国民と共有できないのではないかと思います。

もう一つは、繰り返しになりますが、やはり逃げずに移民政策に向き合うことです。私はしたたかに進め、アンダーコントロールすべきだと思っています。というのは、多くの国民の皆様が知らない間に数十年経つと、外国人労働者が増えていて、結婚して日本に根づき、社会保障の対象となっているからです。都合よく来てもらって、都合よく帰ってもらうことなどできないでしょう。ですから、どのような分野にどのくらいのボリュームの外国人労働者を受け入れていくのか、そして5年後、10年後のボリュームがどうなり、それが政治や経済、日本人の生活にどのような影響を与えるかを赤裸々に国民の皆様に伝えるべきです。そういう絵姿をしっかりと示し、コンセンサスを図っていくことを、政治サイドの責任として進めたいと思います。

少子化問題を議論する超党派的・国民的な議論の場の必要性

増田:立法府の役割についてお聞きしました。国会には大変重要な役割がありますし、議論を深めてもらうことが大事だと思います。北欧などでは、社会保障は超党派で同じ方向を向いて議論しているようですが、それも踏まえて宮本教授に今の4人のお話に対するコメントをいただければと思います。

宮本:国会議員の皆さんが超党派的な議論の重要性を口にされていて、大変心強く思いました。ただ、実際の国会の場での空気の違いをいかに縮めていくのか、また北欧の話もありましたので、少しお話しします。

少子化を基軸にした国づくりは今、危機への対処に追われている一方で、大きなチャンスでもあるのです。というのは、少子化問題を基軸にした国づくりで、かなり大きな成果を挙げた国としてスウェーデンがあるからです。少子化を基軸にした国づくりで、高福祉と高い経済成長を実現させました。なぜできたのかというと、少子化対策というのは、一面では福祉ですけれども、まさに人への投資だからです。つまり、女性が活躍できる条件づくりや、良質な保育で次代を担っていく子どもたちの基本的な力を育てることに直結するからです。もう一つは、少子化を基軸にした国づくりで民主主義を成熟させました。少子化対策は保守とリベラルがしっかり合意点を模索しなければ、一歩も進まない分野なのです。もっとも、スウェーデンは最初からうまくいったわけではありません。スウェーデンは今から90年くらい前の1930年代に、今の日本と同じような少子化危機に直面しました。そのときの保守とリベラルの議論はとんでもないものでした。保守は女性が家庭に戻らなければならないと主張して出産奨励主義を打ち出し、リベラルは賃金を上げるうえで少子化は有利な状況なのだから、このままでいいと主張していたのです。そうした中で、人口問題調査委員会という超党派的なラウンドテーブルが設けられました。その委員会で、後にノーベル賞を受賞する経済学者のグンナー・ミュルダールがこんな空中戦を行っていると国が滅びる、保守とリベラルがしっかり合意点をつくらなければならないと警鐘を鳴らし、議論を促しました。その結果、雇用の質を高め、子どものいる世帯に対する経済的な給付を強める政策をしっかり行って今日に至ったわけです。

そういうラウンドテーブルが日本に全くなかったのかというと、そうではありません。1953年から2000年まで旧厚生省に人口問題審議会がありました。しかしこの審議会では、いかに人口を抑制するかを議論していました。1975年には、国民に子どもは2人までにしてくださいといった呼びかけをしており、その後、1989年の合計特殊出生率「1.57ショック」があっても、1997年まで少子化問題を本格的に取り上げませんでした。そして、こんな審議会は無駄遣いだということで2000年に廃止されました。

そのラウンドテーブルの新たなバージョンを立ち上げていく必要があります。今は社会保障審議会ですが、かつての社会保障制度審議会は、超党派的な内閣総理大臣の諮問機関で旧総理府に置かれていました。国会に据えると議員中心になってしまうので、行政官や有識者、自治体などが参加する超党派的・国民的な議論の場を、民間の会議と合わせて設置していく。現在、基本的にその方向で合意ができているように思いますので、煮詰めていく必要があるのではないでしょうか。

目標を共有し、党派を超えて自由闊達に議論する

増田:今の指摘・提案を踏まえ、最後に人口減少・少子化対策へ向けた決意をお聞かせください。

藤田:宮本教授から指摘がありましたが、中長期的な共通課題に対して超党派で議論する生産的な会議を心がけて、国会活動を進めたいという思いを改めて強めました。先ほど話に出た令和臨調では、私と木原議員は同じ部会で、最近、毎週2、3回顔合わせて意見交換しています。人口減少や東京一極集中の問題をいかに乗り越えていくかについて超党派で議論していきたいと思いますので、皆様のご指導をよろしくお願いします。

大島:1970年代に子どもを減らす議論が行われていたという話がありましたが、かつての公団住宅が3DKになったのは、子どもは2人までと想定したからで、その住宅政策が少子化につながったのではないかと理解しました。

実は、私はインターネットなどのテクノロジーに興味があり、数年前にNTTの社員から光電融合技術の話を聞いて、次代の技術革新への期待を高めました。光電融合は、半導体に電気を通すことで行ってきた電子機器の制御を光で制御する技術で、エネルギー消費が少なく、これまで以上の高速大容量通信が可能になるといいます。完成するのが2027~ 2028年とのことで、全国に敷設されると本当にリアルなウェブ会議が行えるようになるなど、デジタル化がさらに進化していくでしょう。

また、いま全国で地震などの災害が多発しており、首都直下地震や南海トラフ地震が懸念されています。そのため、大災害発生を踏まえた防災や国土計画を進めなければなりませんが、その一環として、かつての国土庁を新しい形で復活できないかと考えています。これからの日本の国土、日本の未来に向けた取り組みを担っていく拠点となり、そこでは議員は政党色を出さず個人として、参画して自由闊達に議論しながら情報を共有する形になればいいのではないかと思っています。

もう一つ、私が国会議員に当選した2000年から昨年までの間に、全就業人口に占めている給与所得者の割合は83%から90%に増えています。その割合はまだまだ増えるかもしれません。ですから、サラリーマンの心情をしっかりと理解しながら政策を打っていかなければならない時代に入っています。例えば、労働政策や金融政策、社会保障政策、技術政策などにおいて、将来に対する予見性を示すことが大事で、そういうことを超党派で議論しながら共通のコンセンサスを図っていく、そういうチャレンジが大切だと考えています。

伊佐:私は超党派だからこそ取り組みたいことがあります。それはEBPMを進めるためのエビデンス、つまり、統計などあらゆるデータをしっかりと集積して分析し、提供できるようにすることです。先ほど宮本教授がスウェーデンの話をされましたが、この前、フィンランドの社会保険委員会の議員の訪問を受けました。その際に話題になったのは、子育て支援をしっかり行ってきたが、フィンランドでも出生率がどんどん下がって1.32になっており、日本の1.26とほとんど変わらないということでした。

2010年代に入って、多くの北欧諸国の出生率は下がっています。その現実を前にすると、少子化対策は意味があるのか、みたいな無力感に襲われるかもしれません。しかし、ある文献で読んで、そうかと思ったことがありました。出生率はその年に子どもが生まれた数なので、社会全体が晩婚化・晩産化していくと当然少なくなるということです。ところが、50歳までに産んだ子どもの数は北欧諸国やフランスでは、あまり落ちていなかったというデータもあり、この50歳までの出産数は20年、30年経たないと出てきません。それくらい長いスパンでしっかりデータを取り、それに基づいて議論できる環境をつくっていかなければならないという思いを強めています。

木原:冒頭申し上げたことを再度、最後にお話ししたいと思います。

それは、人口減少・少子化の問題は社会政策として捉えられてきましたが、もう少し広く経済政策として捉えることが何よりも大切だということです。賃金が上がらなければ生活の安心感は得られませんし、地方に職をつくるには地方に投資しなければなりません。行政が持続可能になるには、きちんと規制緩和を行っていく。例えば、「対面」「目視」「常駐」といったアナログ規制を取っ払っていくことが必要だと思います。そして、日本の従事者の7割が働いている中小企業での賃金を上げるために、価格転嫁対策が不可欠です。さらに日本が成長していくには、省人化、省力化、自動化、デジタル化を進めなければならないでしょう。したがって、少子化対策に当たっては経済についてしっかり考えていく必要があり、改めて徹底したいと私自身思っています。

ソーシャルなイシューがエコノミックなイシューとなり、その先にポリティカルなイシューとなれるかどうかが問われています。国会は議論が細かくなる場ですから、大きな目標を共有し、実現のためのプログラムを共有することが非常に大事です。ソーシャルからエコノミックに、そしてポリティカルにと、三位一体でしっかり取り組めるよう頑張りたいと思いますので、引き続きどうぞよろしくお願いします。

増田:本日のこの場が、政治における人口減少・少子化問題の議論の新たな始まりになればと願っています。そして、この空気が今度は地方議会に伝わり、地方議会で同じような場ができればと期待しています。

改めまして、参加いただきました皆様にお礼申し上げ、セッションを終了します。どうもありがとうございました。

この記事をシェアする

著者

大島 あつし

大島 あつし

選挙 第51回衆議院議員選挙 2026年 (2026/02/08)
選挙区

埼玉6区 81,509 票 比例 北関東ブロック 中道改革連合 [当選]

肩書 衆議院議員
党派・会派 中道改革連合
その他

大島 あつしさんの最新ブログ

大島 あつし

オオシマ アツシ/69歳/男

大島 あつし

大島 あつし トップページへ

寄付して応援する

「大島 あつし」をご支援いただける方は、是非個人献金をお願い申し上げます。
※選挙ドットコム会員登録(無料)が必要です。

月別

ホーム政党・政治家大島 あつし (オオシマ アツシ)人口戦略シンポジウム(人口戦略会議議長三村明夫氏/日本製鉄会長)でパネリストとして発言する。

icon_arrow_b_whiteicon_arrow_r_whiteicon_arrow_t_whiteicon_calender_grayicon_email_blueicon_fbicon_fb_whiteicon_googleicon_google_whiteicon_homeicon_homepageicon_lineicon_loginicon_login2icon_password_blueicon_posticon_rankingicon_searchicon_searchicon_searchicon_searchicon_staricon_twitter_whiteicon_youtubeicon_postcode