私の知っている税調ではないーー食料品消費減税の最終局面の内幕を政治記者コンビが解説!

2026/08/05

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選挙ドットコム編集部

2026年8月4日公開の「選挙ドットコムちゃんねる」では、来年度からスタートする食料品の消費減税の最終局面について、MCの政治ジャーナリストの今野忍記者と産経新聞編集長の水内茂幸記者が解説します。国会や国民会議での議論を経て、自民党内や政府としての正式決定に向けた手続きが進む中、自民党内からでた反対意見とは?「決まってからが始まり」という減税の道のりと注目ポイントとは?

水内記者:心血を注いでやった消費税みたいなものがね、昨日(8月3日)の自民党の全体会議みたいなところで、小野寺(五典)税調会長に一任という形になりました。

MC今野記者:そう、事実上の決定ですよね。

水内記者:慎重派の9人ぐらいが反対したと言いましたけれど、僕はちょっとここで特徴的な発言だなと思ったのが小渕優子さんですよね。小渕さんは、この騒動になってからわりかし「役職をやめる」とか、税調のインナー(非公式の幹部)をやめるとか色々と話題になりましたけれど、公の場で記者の質問に答えるのが初めてだったと思うんですよね。ぶらさがりの取材で、今回の反対意見を出したということだけじゃなくて、「そもそも高市総理が自民党役員会で消費税減税という方針を示された。そのあとで税調に話が来た。「私が知っている税調(の進め方)ではない」という言い方をしたわけですよね。

MC今野記者:税調といえばね、自民党の中の税制調査会ね。これまで日本の税制を決めてきたと言っても過言ではない、非常に力を持った組織です。

水内記者:ある意味、総理大臣でもなかなか簡単に触れない領域だという。

MC今野記者:やっぱり税を決めるというのは一つの権力。業界団体からの政治資金パーティーだって、税調のインナーになるとパーティーの金額が全然変わるという。

水内記者:はあ、なるほど。

MC今野記者:インナーは税調の幹部ですから税を決められるわけです。特定の税を減税するかしないかというのは、企業への影響が非常に大きいじゃないですか。

水内記者:例えば自動車税だって、この税を取るか削るかで大きく影響してくるわけです。

MC今野記者:そう。「電気自動車へこれくらい減税する」となったら、電気自動車を出している会社にとってはいいけれど、出していない会社にとってはやめてほしいわけですしね。そういうものすごい権限が集まる。

水内記者:ある意味あらゆる権限を持つ強力な組織であったわけですよね。

MC今野記者:その税調を「私の知っている税調じゃない」と小渕さんが言ったと。これはどういうことですか?

水内記者:税調の中で一定の独立性を持って、時の権力から一定程度距離を置いて議論してきた。税調で議論した上でそれを総裁に上げるというプロセスであったのに、まず上から指示が来た。私たちの議論もへったくれもないじゃないかというのが、多分小渕さんの言いたかったことだと思うわけですよね。

MC今野記者:言いたいことは分からなくはないですけれど、今回の場合は衆院選の公約で「検討加速」と言っていたけれど、「消費税を減税してくれる」とみんな思ったわけですよ。野党は公約にしていたけれど「物価高対策や福祉政策とは違う」とかごちゃごちゃ言っていますけれど、それは置いておいて。「税調が決めるのに、頭ごなしに決めたからダメだ」と言われると、そこはちょっと賛否が分かれるところかなと。言いたいことは分かりますけれどね。例えば過去には、税調の言うことを聞かないと言って、税調会長を首にした総理とかいましたよね。

水内記者:いましたね。

MC今野記者:安倍晋三総理と菅義偉官房長官のもとで、軽減税率の導入に反対した野田毅税制調査会長(当時)ですね。10年くらいやっていたよね。

水内記者:彼も税調の「ドン・オブ・ドン」みたいな感じでしたけれど。

MC今野記者:元々は財務省出身の官僚で、小沢一郎さんについて一回離党したけれど戻ってきて、自民党税制調査会のドンになった方ですね。彼が軽減税率について「私は許さん」と言った瞬間、菅さんが安倍さんに「あいつを飛ばしましょう」と言って。安倍さんが「いいよ、好きにして」と言って首にしたことがあったと聞いたことがあります。その後の税調会長の宮沢洋一さんは「私でいいんでしょうか」と当時言ったらしいですからね。

水内記者:今から考えるとすごいことですよね。

MC今野記者:それまでは確かに税制調査会って聖域だったんですよね。例えば小泉純一郎総理時代もね。強い総理のイメージがある小泉さんでも、税調会長の山中貞則さん

水内記者:山中さんも「ドン・オブ・ドン・オブ・ドン」みたいな、野田さん以上の「ドン」という方でしたからね。

水内記者:政府にも自民党にも税制調査会があって、政府の方は民間の学者さんとかも入れた有識者会議に近いイメージなんですよね。党の税調で決まったことが実質的な党の決定になるので強いんですけれど。ある時、記者が山中さんに「政府の税制調査会と党の税制調査会、どちらが強いんですか?」「政府の税制調査会を軽視するんですか?」と聞いたことがあるんですよ。なんて答えたか知っています?

水内記者:なんて答えたんですか?

MC今野記者:山中さんは「軽視はしない。無視する」と言ったんですよ。すごくないですか。それくらい強かった。

だから僕は、小渕さんの言っていることを曲解していたら怒られてしまうけど、日本の税の歴史において、与党とはいえ自民党という一つの政党の税制調査会で決めたことがこれまで通り通らなければいけないとか、税調査会長が首を縦に振らなければ一国の総理でも決められないということ自体がそもそも健全だったのかなと思うんですよね。

水内記者:そこは本当にそう思いますよね。高市さんを代弁すれば、衆院選で消費税ゼロの実現に向けた検討加速を掲げて、実質みんな「ゼロ」を期待して自民党に投票した部分がある。それなら、その民意を受けて一回やらなきゃいけないということで、政治力を使って押し通した側面があるわけです。

MC今野記者:これで「高市ショック」みたいなものが起きるのであれば、高市総理は退陣して責任を取らなければいけない。リーダーが決めて責任を取る覚悟でやっているわけだから、それを判定すればいい話であって、「税調が決めていないからダメだ」と言われると、ちょっと話の背景と違和感がありますね。

水内記者:党の総裁として公約を掲げて戦って、税調も自民党員なのだから「約束は守ってください」と言っているわけですよね。もちろん反対側からすると、「衆院選の時と比べてイラン危機があってインフレが進んだり、円安が進んだりして状況が変わった」「2年限定で戻すと言っているけれど、その時の影響を考えたら給付の方がいいんじゃないか」という意見もあるわけですけれど。

MC今野記者:おっしゃる通りです。僕も今回の食料品2年間減税案に全面賛成しているわけではないですよ。こんな分かりづらい政策はないと思っていますけれど、ただ一方で「税調が決めていないから民主主義に反する」というのはちょっと違うかなと。外食産業への影響や、年収1000万円以下の農家への所得補償、2年後に本当に税率を戻せるのか、物価が本当に下がるのか、課題を挙げればキリがないです。中途半端な減税案への批判や野党の指摘も分かりますけれど、与党内での決め方のプロセスとしてそれがおかしいかどうかは別問題です。ただ、小渕さんをそこまで批判するのもどうかと思いますね。自民党内で65人中9人が反対意見を出したというのは、健全なことじゃないですか。

水内記者:確かにそうですね。

MC今野記者:名前と顔を出して減税に反対することはリスクしかないと思います。小渕さんの発言にも一定の矜持を感じます。政策論として批判するのはいいですが、人物批判のようになるのは良くないですよね。

水内記者:本当に不健全な議論になってしまっていますよね。「反対するなら離党すればいい」と言う人がいますけれど、純粋に意見が1本だけの党になったら絶対に足腰が弱くなりますよ

MC今野記者:全員が賛成の全会一致なんて、それこそ共産党の民主集中制になってしまう。だから自民党の中で65人賛成、9人反対という状態は、むしろ健全でいいんじゃないですかね。反対したやつは出ていけというのは違いますよね。出て行ったなら話は別ですが。

水内記者:法案に納得がいかなくて退席する人がいても、党として処分したりはしない。これが自民党の懐の深さであり、長年生き長らえてきた強みだと思うんですよね。

MC今野記者:国民政党ですからね。消費減税に関しては国民の間でも賛否が割れていますし、一定の反対層を受け止める存在がいるからこそ党として機能しているわけです。

水内記者:逆に野党側は、意見が対立すると罵り合って分裂や離合集散を繰り返してきた歴史があります。

(中略)

MC今野記者:今回、食料品の消費減税を税制改正大綱に入れて、明日(8月5日)閣議決定でしょ。僕が注目しているのは、臨時国会に入った時に軽減税率を頑張ってきた公明党がどうするか。

水内記者:猛烈な踏み絵にはなりますよね。

MC今野記者:8月末には3党合流に結論を出すと言っているから。

水内記者:将棋の指し手で言うと、向こうに突きつける手としてはなかなかすごい手かもしれないな。

MC今野記者:これがもし「なんとかショック」みたいになれば政権だって吹っ飛ぶかもしれないけれど、野党も問われているというね。消費減税は決まったから終わりじゃなくて、これからだね。で、協調介入という最大の武器も発動したから、もうマーケットは大丈夫なのかどうかというのも争点です。

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選挙ドットコム編集部

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