日本の総理が国会出席を求められる表・裏の事情を政治記者が解説!国会のルールは時に外交上の武器にもなる!その理由とは?

2026/08/03

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選挙ドットコム編集部

2026年7月31日公開の「選挙ドットコムちゃんねる」では、「日本の首相の時間の使い方・拘束時間」をテーマに取り上げます。高市早苗総理が深夜まで国会準備や家事に追われ、「0~3時間睡眠」などと投稿したことが話題になっていますが、海外と比較した日本の総理の国会への拘束時間や外交に使える時間の実態はどうなっているのでしょうか?元朝日新聞政治部で、これまで国内外の政治を取材してきた鈴木拓也記者に、MCの選挙ドットコム編集長・鈴木邦和が訊きます。

MC鈴木邦和:今結構話題になっていることの一つに、「国会での拘束時間」というのがあります。選挙ドットコム編集部調べでは、日本の総理は国会での発言日数が年間72日。

鈴木拓也氏:多いですよね。

MC鈴木邦和:多いですよね。イギリスが50日、ドイツが13日、アメリカが1日。

鈴木拓也氏:大統領制と内閣制の違いはあると思うんですけれど。大統領はあくまで三権分立で行政府の長ですが、日本やイギリスのような議院内閣制の場合、総理大臣も国会議員であり、日本であればほぼ衆院議員のケースが続いています。イチ国会議員としての国会に対する責任もあるので国会に出なければいけないという面はありますよね。

MC鈴木邦和:そうですね。だからアメリカのような大統領と比較しちゃうと制度的にだいぶミスマッチなのですが、同じ議院内閣制のイギリスと比較してもやっぱり多い。

鈴木拓也氏:日本が72日でイギリスが50日とおっしゃいましたけれど、多分時間にするともっと差があると思うんですよね。

MC鈴木邦和:日本は1日7〜8時間拘束されるのに対して、イギリスはもう少し短かったりするんでしょうか?

鈴木拓也氏:そうですね。イギリスは「クエスチョンタイム」で週に1回、野党党首と議論しますけれど、あれも多分1時間程度ですよね。日本の総理大臣みたいに、ずっと朝から夕方まで予算委員会で縛られて席に座っていなければいけない。自分が答弁しないこともありますよね

MC鈴木邦和:(中略)昔、林芳正さんが外務大臣だった時に、7時間拘束されて結局質問されたのはたった1問、答弁53秒ということがありました。それ、もったいなくないですか?

鈴木拓也氏:もったいないですよね。一応野党から通告が来ているんでしょうね。だから、出席していますが、時間の配分や質問時間の兼ね合いの中で、優先順位として林さんに対する質問が少なくなくなっちゃったんでしょうね。

MC鈴木邦和:結局それで「G20外相会合を欠席した」と書いてありますから、これはちょっと問題ですよね。一方で、ドイツは首相の国会発言が13日なので、議院内閣制でも少ないですね。このあたりはもう少し工夫できそうですけれど。もう少しツッコんだお話しをすると、答弁しないのにみんなずらっと並んでいなければいけないのは、なぜなんですか?

鈴木拓也氏:あれは野党および与党議員が出席要求しているからですね。「自分が質問をするので、これに対する答弁をされる方は出席してください」ということです。基本的には皆さん総理に聞きたいわけですけれど、総理だけで全部答えることができない場合もありますし、個別具体的な政策については担当している省庁の大臣が答弁した方がいいと政権側が考えれば、その大臣にも出席していただくということですね。

MC鈴木邦和:私が所属していた地方議会だと、委員会が質疑のベースになるので、委員会であれば質問できる領域が決まっていて所管の人が来るわけです。予算委員会のように対象が幅広いと、結局誰にでも当てられることになりますよね。

鈴木拓也氏:そうですね。例えば外務委員会や財務委員会に総理が出ることは基本的にはないので、担当大臣か担当省庁の方、副大臣・政務官が出席して専門的な議論をするんですけれど。予算委員会は予算に関わる様々な事柄について審議するので、いろんなスキャンダルも含めて国政全般になり、何が飛んでくるかわからないわけです。

MC鈴木邦和:テレビ中継が入るからみんな総理に聞きたいし、パフォーマンスも重視しますしね。私、覚えているんですけれど、都議会は普段まったくカメラが入らないので割と平和なんですよ。でもカメラが入る委員会が年に数回あって、急にみんな暴れ出すんです(笑)。パフォーマンスしたいから、超政治的な質問ばかりになって。アピールしたいんですね(笑)。

鈴木拓也氏:日本の国会も同じだと思うんです。中選挙区制度の昭和の頃からの国対政治の中で、「野党にも花を持たせてあげなければいけない」という歌舞伎のような側面がありますよね。裏で手を握っていても、表ではちょっと喧嘩してみせる。全国に中継されるので、地元の有権者や後援会の方に「自分はこんなに国政で頑張っています」と見せたいわけです。そういうところで野党にも花を持たせるために、国対間で示し合わせて、事実上歌舞伎をやっている部分もあると。

MC鈴木邦和:そういう考え方が根底にあるんですね。鈴木さんご自身は、日本の総理の国会出席が多いと思いますか?減らすべきでしょうか?

鈴木拓也氏:私は個人的にはちょっと多すぎると思いますよ。

MC鈴木邦和:どのくらいがいいと思いますか?

鈴木拓也氏:今回の高市さんの肩を持つわけではないですけれど、

MC鈴木邦和:蓮舫参院議員は「(石破茂・前総理の時間と比べて)3分の1だ」と追及していましたが、そのくらいでもいいんじゃないかという考えですね。

鈴木拓也氏:というのは、大統領制なので単純比較はできませんが、お隣の韓国の場合は1月~12月が会計年度なので、だいたい予算が9月で施政方針演説が11月頃です。

MC鈴木邦和:アメリカとほぼ一緒で、年1回くらいなのですね。

鈴木拓也氏:一緒ぐらいなんですよね。そうすると何が違うかというと、国会に縛られないことによって外遊に長く行けます。日本の総理でも、特に安倍(晋三)さんは「安倍外交」ということでかなり外交に力を入れていて、歴代の中でもかなり外遊に行った方ですが、回数だけで比較すると諸外国と変わらない年間10回くらい行っているんですよ。ただ、1回の滞在日数が短いんですよね。ゴールデンウィークや夏休み期間は1週間ほど外遊されますが、普段は土日・週末だけを使って「1泊3日」とか。

特に日露外交の際、私は政治部の同行担当だったんですけれど、1泊3日でしたからね。同行している僕らもどこにいるのかわからないレベルでした(笑)。着いて首脳会談をやって、結果が出たら「はい、じゃあ帰りましょう」という感じです。

MC鈴木邦和:有権者から見た時に、日本の総理にしかできない仕事を優先順位をつけてやってほしいと思う人が多いはずです。国会に出て野党の質問に答えることと、外遊に行って1日でも長く諸国と交流・会談してくることと、どちらが日本国にとってプラスなのかという視点が大事かなと思うのですが、鈴木さんはどう思われますか?

鈴木拓也氏:そこはケースバイケースで難しいところですね。国論を二分するような重要な法案(例えば消費税の減税や安全保障関連など)については、しっかり国会に出て野党の質問に真摯にお答えになり、政権方針を述べることが必要だと思います。ただ、それをダラダラと張り付いてやる必要があるのかというと、そこは疑問ですよね。基本的には担当大臣が答弁した上で、政権トップとしての見解を述べられれば十分で、朝から晩までずっと張り付けにしておく必要はないのかなと思います。

MC鈴木邦和:なるほど。総じて削った方が良くて、仮に「国会出席を半分にしよう」となった場合、どうすればいいんでしょうか?与野党で合意形成をする必要があるのでしょうか?

鈴木拓也氏:これは本当に大きな世論の力が必要だと思いますね。国会改革の議論って定期的に浮上するんですけれど、結局消えてしまうんですよ。野党側にとっては国会が「晴れ舞台」なわけです。大臣よりも総理に質問してやり取りすればニュースになりますし、言い方は悪いですけれど失言を誘発できれば自分の得点になりますから。(中略)基本的には野党にとっては有権者にアピールできる唯一と言っていい場所です。与党で言えば、日本では政府提出法案がほとんどです。そうすると、与党議員は議員立法でなくとも、政府提出法案に自分はアドバイスしたとか言え、それを有権者や後援者にアピールできますが、野党はそうはいかないから、野党側からまず言うことはない。与党側もあまり強く言うと「政権のエゴで国会を軽視しているのではないか」と批判されるのを怖がるので、「総理に頑張ってもらえばいいんじゃないか」となって、結局議論が進まない。

MC鈴木邦和:これを変えようと思ったら、どちらかの意見に世論の後押しがないと難しいですね。

鈴木拓也氏:(中略)ただ一方で、1つエクスキューズ(理由付け)として使える場合がありまして。これは半分想像ですが、7月初めにNATO首脳会議がありましたよね。高市さんは行かずに、茂木(敏充・外相)さんと小泉(進次郎・防衛相)さんが行かれた。おそらく高市さんご自身が積極的に行く意思表示を示さなかった。これは「国会優先」という理由が立ちますし、必ずしも行かなければいけない会議でもなかったわけです。一方で、隣国の韓国の李在明大統領は行っているんですよね。ここは難しくて、今、ロシアのウクライナ侵攻がありましたが、地政学的にロシアの位置付けが微妙に変化し、米露が接近しつつあるとも言われている中で、いつまでロシアとウクライナの戦争状態が続くかもわからない。だから、こないだ茂木さんもASEANの時に(ロシア・外相)ラブロフさんと対話された。ロシアのウクライナ侵攻は批判されてしかるべきと思いますが、一方で現実の外交や安全保障を考えると冷徹な判断が求められる中で、(総理が)NATOに行かなかったことはプラスに働いています。賛否両論があり、行くことで中国やロシア側から「欧米・NATO側にべったりだ」と見なされて距離を置かれるリスクもある。そこで高市さんが行かなかったことで、結果的に外交上のバランスが取れたという見方もあります。

高市さんは一切そういうことは言わないですが、「国会があるから」という理由がつけられることは武器にもなります。「日本の事情で申し訳ないが、議院内閣制で国会に張り付かなければいけないルールなので」と言えるので。積極的に行きたくないときには、立派なエクスキューズとして使えます。

MC鈴木邦和:それはディープな視点ですね!

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選挙ドットコム編集部

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