新人5人が立候補した京都市長選挙は、2月4日に投開票で行われます。届け出順に、福山和人氏、村山祥栄氏、二之湯真士氏、松井孝治氏、高家悠氏の争いが1月21日から始まり、終盤戦に入りました。
福山氏は日本共産党の支援、村山氏と二之湯氏は政党の支援なし、松井氏は自民党、公明党、立憲民主党、国民民主党の推薦、高家氏は諸派の平安保守党所属。高家氏(顔写真は非公開、取材は選挙公報のみ可)以外の4人の選挙管理委員会への党派届け出は「無所属」です。
今回の選挙、「日本維新の会」「教育無償化を実現する会」などが候補者に対する推薦を告示直前に取り消したことで政党のかかわり方が大幅に変わりました。1月21日の告示日。直前での国政政党などの推薦取り消しにより京都市で30年以上続いている主要政党レベルでの「非共産」対「共産」の構図に戻った、とされたのが事実かどうか、まず確かめることにしました。
4党からの推薦を受ける松井氏の出陣式は京都市中京区の事務所前で行われました。今回の選挙に出馬せず4期16年で退任となる現市長の門川大作氏が「反対だけが実績の相手候補」「16年前、私が951票差、その前は4092票差、その前の方は321票差、いずれも共産党との戦いでした」と自身も含めた直近3市長の初当選時の票差を示すあいさつを行い、いきなり「非共産対共産」の構図が現れました。松井氏も「時計の針を決して何十年か前に戻してはいけない」と門川市長に同調するかのような発言をするスタートとなったのです。
共産党の支援をうける福山氏の公示日当日の演説を聞いたのは伏見区大手筋商店街。第一声にこだわらなかったのは事務所にスケジュールをたずねた際「一番のメインは28日の日曜日。小池晃書記長(日本共産党書記長)と3か所行う演説です」と伝えられていたためです。実際には小池氏は来ず、党委員長となったばかりの田村智子参議院議員が29日に山科区で福山氏と並んで、就任後初の街頭演説を行いました。
福山氏自身は、どこであっても「無所属市民派・弁護士」といい続けています。そして「私は政治資金パーティーなど一度もおこなったことがありません。だからお金もありません」と今回、論点のひとつとなっている「政治家と金」に関してクリーンであることも訴え続けていました。しかし、要所で隣に共産党の要職の方がいたことも事実ではありました。
二之湯氏の声を告示日に初めて聞いたのは下京区の四条大宮の路上でした。「北陸新幹線を延伸するのに、京都は一兆円負担。間違いなく京都市は破綻してしまう。私はこれを止めます」。二之湯氏は街頭演説や街宣車で、最初にどこでもこの話題から訴えているのが耳に残る形となりました。
京都市長選に3度目の立候補となった村山氏。中京区の選挙事務所は1月半ばまでは考えられなかったような様相を呈していました。告示日の出陣式。司会を務めた「自由を守る会」所属の東京都目黒区議・白川愛氏をはじめ、「神戸志民党」の創設者・元兵庫県会議員の樫野孝人氏ら地域政党の関係者が多く顔をのぞかせていました。
村山氏の推薦を取り消した4政党の中では、村山氏自身が立ち上げた「京都党」の議員の姿があったのみ。村山氏は「(政党の)推薦はなくなりましたが、彼らと作ったマニュフェストはホンマもんです。京都を立て直せるマニュフェストをこの選挙から削除してはいけないんです」と政治資金問題発覚にも関わらす立候補に至った理由を説明し決意表明としていました。
諸派の高家氏は独自の戦いを展開する。選挙公報では、以下の政策を訴えている。
今回の選挙構図が告示日まで何度も変わることになったのは、二之湯氏が国政で対立する政党と相乗りする自民党京都府連に反旗をひるがえし、昨年10月30日に離党届を提出。その上で立候補を表明したのが最初でした。この後、国政で自民党は派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金事件に直面しますが、それに関係なく自民党京都府連は12月21日付けで「党の方針を非難した」などを理由に二之湯氏を除名。これにより、保守分裂になっていました。
そして1月13日。今度は「日本維新の会」が村山氏の推薦を取り消します。理由は村山氏の資金管理団体が券を販売しながらパーティーを開催していなかったという疑いのためでした。これに「教育無償化を実現する会」、「国民民主党京都府連」、地域政党「京都党」も追随(ついずい)し、村山氏への推薦を取り消しました。そして「国民民主党」は府連が取り消しを決めた日に党本部で松井氏に対する推薦を決定した、というのが公示日までの流れです。
「日本維新の会」はこれらにより自主投票となりましたが、同党は昨年の統一地方選挙で京都府議会、京都市会とも大きく躍進。京都市会では自民党と並んで最大会派、京都府会でも第2会派となっています。このことは、背後の支持する有権者の数と直結します。そのことが、今回の選挙でも、リアルタイムで流れを変える大きな要素となっていると思えます。
地元組織となる「京都維新の会」の上倉淑敬幹事長は「(推薦取り消しまで)こちらの資料でリードと出ていました。だから残念です」と、推薦していた候補が1月13日まで自党調査では有利に戦っていたことを明かし無念さをにじませました。しかし、この事実は、本拠地の大阪以外でも着実に「日本維新の会」が歩を進めていたことも証明するものとなりました。
中間情勢では、各メディアとも判で押したように2候補が激しく競り合う展開としています。選挙管理委員会によると期日前投票は「公示後、寒さで雪が積もった地域もあってか、前回よりも少し落ちています」とのことでした。しかし「非共産対共産」で激しく競り合っているという事実が選挙中間点で伝わった今、京都市民の捉え方も違ってきているかもしれません。
それは「毎日1000枚渡して、この選挙中、全部で1万枚渡します!」と、発行元も記載なく「たのむよせんきょけんもってるひと」「せんきょにいこー」とだけ書かれた自己作成のテッシュを中京区の繁華街を通行する人にせっせと配っていた、名前さえ教えてくれなかった市内在住の年配男性の願いが少しでも実現する時であり、選挙の意味が表出する時でもあるはずです。
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