議員は落ちたら「タダの人」!?議員のセカンドキャリアとお金のリアル③ (前板橋区議会議員 南雲由子)

2023/10/30

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南雲由子

議員という仕事には、その後のセカンドキャリアをどうするかという課題がある。優秀な人材が、普通の生活者が、民間と政治との間を行ったり来たりできる社会になれば…そのために、区議会議員を8年務めた後、今年4月に区長選挙に挑戦し、落選を経験した筆者が、その後の「転職活動」について、3回でレポートする最終回。

落選後、筆者は複数の転職サイトを利用して40数社に履歴書を送り、3社が面接まで残って、最終的に希望通りの、議員経験も活かせる仕事が決まった。民間では議員のキャリアは評価されないのでは、と感じることもあったが、転機になったのはヘッドハンターからのあるアドバイスだった。

1回目はコチラ→議員は落ちたら「タダの人」!?議員のセカンドキャリアとお金のリアル① (前板橋区議会議員 南雲由子)
2回目はコチラ→議員は落ちたら「タダの人」!?議員のセカンドキャリアとお金のリアル②(前板橋区議会議員 南雲由子)

議員という仕事の経験が、民間の仕事でどんな汎用性があるか

うまくいかない転職活動の転機になったのは、ヘッドハンターと呼ばれる、オンライン面談を経て、条件に合う求人を送ってくれる方からの、「議員という仕事が、民間の仕事でどんな汎用性があるか」というアドバイスだった。確かに、議員の経験はビジネス感覚で数値化しにくい面もあるし、一般の方にはどんな仕事かわかりにくい。そのアドバイスで、職務経歴書などを、議員だった事実や「何を」実現したかではなく「どう」実現したかに書き直すと、結果が出始めた。

議員としてがむしゃらに進む中で培ってきた能力は、自分では客観視出来ていない部分も多い。例えば、多くの市民相談を聞き、課題を発見する力課題解決力。現場の声を裏付けるデータやエビデンスを集め、政策立案する能力。議会で政策提言する際の、プレゼンテーション力。議会内の他会派や行政側との交渉力。地域の多様なステークホルダー間での調整力や、ファシリテーション力。リーダーとしてのマネジメント力……そこを言語化すれば、民間でどんな利益を生み出せるのかをイメージしてもらいやすい。

筆者の場合は、社会課題を解決する事業について、1200件以上の市民相談を受けた経験から、実際に困っている人の顔を思い浮かべながら取り組めることや、公民連携の現場で行政独特のルールや時間軸が理解できる点、リーダーとしてチームのマネジメントをした経験などを強調した。今回の転職活動で、議員としての能力を可視化することが、民間のセカンドキャリアへの鍵だった。

自分は社会の中で必要とされていないのではないか

まとめの前に、メンタル面についても書いておく。筆者は選挙直後は、やり切った、すっきりした気持ちだった。しかし落選という経験は、誰かを亡くした時にも、逆に出産にも似たような大きな衝撃だった。波のように感情が戻ってくる。街を歩けば「次も頑張って」「投票しました」と声をかけてくださる方がいて、期待がかえって痛い。

そのタイミングでの転職活動で、40社以上の書類選考に落ちると、自分は社会の中で必要とされないのではないか、と落ち込むこともあった。しかし実際転職活動とは、お互いに必要としている一社に合うかどうかの問題で、苦しいのは元議員だから、でもない。

筆者の場合、しばらく選挙区を離れて過ごしたり、小説を読んだり、考えない時間を取った。また議員在職中にもビジネス感覚を持ちながら、と意識してきたものの、転職活動で目に触れる一つ一つには発見が多く、働き方や地域の経済を考える上でヒントも多い。転職で触れる新鮮な体験すべてを「視察」のような感覚で楽しむことも、続けられた秘訣だった。

まとめ:議員は、落ちたら「タダの人」か?

「議員は落ちたらタダの人」という言葉がある。昔は議員は特別な人の仕事で、生涯現役が当たり前だったから、落選後とのギャップから生まれた言葉かもしれない。

しかし今は、若者や女性など多様な議員が増えている。筆者も議員在職中から、家に帰れば母であり、デザインやイベントの副業があり、ずっと「タダの人」だ。だからこそ議会の中で出来ることがあり、届けられる声がある。多様な議員が増えているからこそ、民間と政治の世界を行ったり来たり出来る出口も必要で、議員のセカンドキャリアを仕組み化する必要がある。人材の流動性を確保することで、政治の「質感」を変えられるのではないだろうか。

筆者はこれから後に続く人たちのために、民間でのセカンドキャリアの道を切り開きたいという思いもある。さらに起業するかもしれないし、民間でビジネス感覚を鍛えた後、また政治に挑戦する日が来るかもしれない。どのような立場であれ、政治家として「どう」実現してきたか、培った能力は自分の武器であり、今はまず、そのスキルを手に新たなキャリアを楽しんでいきたい。(おわり)


1回目はコチラ→議員は落ちたら「タダの人」!?議員のセカンドキャリアとお金のリアル① (前板橋区議会議員 南雲由子)
2回目はコチラ→議員は落ちたら「タダの人」!?議員のセカンドキャリアとお金のリアル②(前板橋区議会議員 南雲由子)

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南雲由子

1983年東京都板橋区生まれ。東京芸術大学卒、東京大学大学院修了(文化政策)。芸大で現代美術を学び、文化芸術によるまちづくりと空き家活用に参画する。 2015年板橋区議会議員に初当選。2期8年務めたのち、2023年板橋区長選挙に立候補し、次点で落選。議員在職中は、自身の経験を基に子育てや教育、まちづくりや障がい福祉などに精力的に取り組んだ。 2023年11月よりセカンドキャリアをスタート予定!

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