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【選挙制度考】地方自治体の民主主義は機能していないのではないか(歴史家・評論家 八幡和郎)

2022/1/13

八幡 和郎

八幡 和郎

投票,選挙イメージ

昭和22年(1947年)の四月は、選挙ラッシュだった。なにしろ。新憲法の発布を前に権力の空白が生じないように、あらかじめ、旧憲法のもとで、新憲法の要件に合う選挙を済ませておこうとしたからである。

 投票日でいうと、4月5日に都道府県と市町村などのすべての知事や市町村長、20日に参議院議員選挙、25日に衆議院議員選挙、30日に地方議会選挙が行われた。つまり、投票する側からすると六つの選挙が一か月のうちにあったわけだ。

 しかも、当時は市町村の数8600ほどだったから、候補者難に陥ったらしい。知事選挙では、半数以上の都道府県で官選知事が横滑りしたのだが、その背景には、めぼしい政治家は国会議員をめざしたからという事情もあったらしい。

 それから、この統一地方選挙は、四年ごとに行われているのだが、首長は死亡や途中辞任があったり、対等合併したことで選挙をやり直したにしているので、知事は10県、市町村議会は約4割、市町村長は1割強だけがこの時期に行われているが、都道府県議会選挙については、41都道府県がこの時期に行われている。本土復帰に合わせて第一回の選挙が行われた沖縄、黒い霧で議会が解散したことがある茨城と東京、東日本大震災で延期された宮城、岩手、福島が例外なだけだ。

 その意味で、都道府県選挙は、ほぼ全国一斉に行われて、関心も高いのだが、いろいろ奇妙な制度設計もあるし、それに、なにしろ都道府県では、知事の権限が異常に強いし、その結果でもあるのだが、再選率が異常に高い、10年ほど前に「日本の知事300人」(光文社新書)という本を書いたのだが、その時に計算したところ現職が立候補した場合の当選率は9割をこえ、平均在任期間は10年ほどだった。

 当選率が90%などというのは、公平な選挙とはいえないわけで、制度改正しないとおかしいのである。市町村長選挙については、費用面などからも立候補が容易なためにそこまで再選率は高くないが、それでも、現職が圧倒的に有利だ。

 そして、その首長の権限の強さと再選率の高さは、地方議会の権限を制約して、議員の仕事の中心を、政策より陳情などの取り次ぎの世話役にしてしまっている。

 そういう意味で、いまの地方自治制度は、抜本的に改革すべきだと思うし、本当は憲法改正も必要だと思っている。なにしろ、憲法は地方自治制度については、それが大事だということと、その首長と議員は直接選挙で選ばれると書いているだけで、自治体のあり方も選挙制度の詳細もなにも定めていないのは異常なのである。

 そこで、何回かに分けて、地方選挙制度のあるべき姿を論じたいのだが、今回は都道府県議会のあり方について、論じたい。

 私は都道府県首長も首相と同じように議会で選ぶ議院内閣制のほうがいいと思うが、そうした憲法改正を必要とする話は横に置いて、現行の憲法のもとでできることに今回は議論を絞りたい。

県議会議員選挙は小選挙区と比例代表制の併用か中選挙区制で

 都道府県議会については、そもそも、選挙区制度がおかしい。一般的には、市か郡、あるいは政令指定都市の特別区が選挙区になっており、その結果、県庁所在地では定数が110人以上であることも多いのに、定数が1のところもある。

たとえば、県庁所在地が政令指定都市でないなかで、県内人口比率46.6パーセントともっとも高い高知県を例に取ると、定数37のうち、高知市が15で、あとは、定数2が6選挙区、定数1が10である。

高知市では当選したのが、自民5、共産4、公明3、無所属2、立民1で国民が落選。ほかの選挙区では、共産がひとりが立候補し当選、立民が一人が立候補し落選、それ以外はすべて自民か無所属で、四つの選挙区で5人が無投票当選である。

 これでは、高知市以外の公明党や共産党の支持者は自分の支持する政党に投票機会がないことになり、民主主義は機能していないのでないか。

秋田県では、秋田市で公明、共産が一議席ずつ獲得しているが、8選挙区17人が無投票当選である。

私は都道府県議会議員選挙も、衆議院議員選挙と同じように小選挙区と比例代表の併用か、3から5程度の中選挙区かにすべきだと思う。

地方議員から「地方閣僚」を出せるようにすべきだ

 地方政治が国政ともっとも違うことは、地方議員が閣僚に当たるポストにつけず、行政に関与できないことだ。ヨーロッパでは、各党が知事や市長にあたる地方議会議長候補を名簿のトップに据えて地方選挙が戦われる。

 日本の国政選挙で各党が首相候補を立てて総選挙を戦うのと同じである。そして、複数の議員が副議長になり、これが閣僚にあたる。そのかわりに、行政実務は官僚である事務総長がいて、かなりの範囲で政治家に介入させない権限をもっている。たとえば許認可や入札である。

 現在の日本の制度では、地方議員は首長になるか、例外的に副知事や副市長にならない限り政策にかかわれないし、地方議会の立法機能も限られているから、主たる役割は陳情の取り次ぎになってしまっているし、それがゆえに、政策に興味が薄い議員も多い。

 これを打開するためには、地方議員が副知事や副市長を兼ねることができるように地方自治法を改正するべきだ。

首長選挙次点者などを自動的に地方議員に

 もうひとつ、日本の地方議会が活性化しないのは、野党の党首がいないからだ。野党の党首なら首長選挙にでるべきだが、立候補のためには、議員を辞任しなくてはならない。また、議員でない人が首長選挙に立候補して落選すれば、議席を持たないから、野党党首として機能しない。

 そこで、ひとつは、ほかの選挙でも共通の課題だが、ほかの公職についたまま別の公職に立候補できるようにして、当選したときにもうひとつを辞任すればいいことにすることだ。たとえば、県議のまま知事に立候補し、落選してもそのまま野党県議として仕事を続けられるようにすればいい。

 そしてもうひとつは、首長選挙で、たとえば法定得票数を得たら議員になれるようにすればいい。当選者をどうするかはどちらでもいい。知事は自動的に県議でもあるとしても何も不都合はない。

このようにすれば、議会でまさに与党党首たる首長と野党党首が討論できるし、次の首長選挙での再立候補も容易になり地方自治は活性化するだろう。現職にとっては、再選率は減るが、そのかわりに、落選しても議員としての身分が残るので、悪いことばかりでない。

憲法上はほとんどどんな制度も可能

 このほか、たとえば、地方自治を活性化するために、ほかの選挙にでやすいように、地方議員を辞任したときに、予め指名した代理が残存任期を務められるようにしてもいい。また、こうした新制度を特区というかたちで、どこかで試行するのも、なんおもんだいもあるまい。

 上記のようなことは突拍子ないように思う人が多いだろうが、憲法の規定は、以下のようにかいているだけであって、上記のような提案はなにも憲法に抵触しないのである。

第92条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。

第93条 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。

2 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。

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八幡 和郎

八幡 和郎

評論家、歴史家、徳島文理大学教授 滋賀県大津市出身。東京大学法学部を経て1975年通商産業省入省。入省後官費留学生としてフランス国立行政学院(ENA)留学。通産省大臣官房法令審査委員、通商政策局北西アジア課長、官房情報管理課長などを歴任し、1997年退官。2004年より徳島文理大学大学院教授。著書に『歴代総理の通信簿』(PHP文庫)『地方維新vs.土着権力 〈47都道府県〉政治地図』(文春新書)『吉田松陰名言集 思えば得るあり学べば為すあり』(宝島SUGOI文庫)など多数。

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