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医療崩壊するのは日本の医者がダメだからだ~日本医療の10の大罪(歴史家・評論家 八幡和郎)

2021/2/3

八幡 和郎

八幡 和郎

(c)Artem Kniaz

2月1日発売の月刊誌「正論」3月号で、「医療崩壊するのは医者がダメだから」という記事を書いた。これまでも、私はそれこそ1970年代から医者批判をさんざん唱えていて、Facebookなどではかなり厳しい議論をしてきた。親が医者だったから、内幕も普通の人よりはよく知っている。

しかし、マスメディアではなかなか書かせてもらえなかったのだが、医師会幹部の上級国民的傲慢さに反発が強まって、ようやく書かせてもらえるようになった。

記事の内容については、かなりしっかり書いてあるので、詳しくはそちらをみていただきたいのだが、いくつかの要点を紹介しておきたい。

なお、ここで私が批判しているのは、日本の医療界、つまり、お医者さんトータルである。個々のお医者さんには、立派な人も、ダメな人もいる。しかし、立派な人がいるといっても、医者の世界トータルでダメであれば、一人一人も反省してもらわねばならない。公務員批判、政治家批判のケースと同じだ。

①「医療崩壊の危機だ」というが、日本は人口当たりでは欧米の数十分の一の感染者や死者である。それで、医療崩壊するとすれば日本のお医者さんたちが世界で一番ダメだという単純なことを認めるべきだ。

②日本の医者には危機感がない。年末に医療崩壊が目前に迫ってくるとか医師会が騒いでいたが、その理由のひとつが、年末年始、医療機関は休むからというものだった。医療崩壊が心配なら正月休み返上が常識だ。

③医者としての職業意識の低さ。世界の医師は、専門にかかわらず、ほかの仕事があっても、現場に駆けつけたり、徴用されたりしている。研修を受けたりもしているのに、日本ではコロナの現場の医者以外は涼しい顔だ。

④「医療関係者に感謝を」というのは、中国でも欧米でもすべての医者が命がけでコロナに立ち向かい、現実にかなりの犠牲者まででているから当然だが、日本ではほかのサービス産業に比べて危険な状況でもない。「コロナの現場の医療関係者にだけ感謝」でいい。

⑤大阪の十三市民病院がコロナ専用になったら、多くの医師が敵前逃亡で辞めた。原発事故で電力会社の社員が担当を命じられて辞めたら、その業界で二度と仕事できないと思う。しかも、院長が「私に専門病院にする了承をとらなかった」「将来に役に立たない仕事だから辞めるなと云いにくい」というのは社会人としてのモラルからはずれる。

⑥「悪いのは厚生労働省の官僚であって医者ではない」という人が多いが、厚生労働省でも地方自治体でもコロナ対策をしているのは、医官であっていわゆる官僚ではない。また、医者の世界のなかでも細かいシマがあって、その集団ごとの既得権益にこだわっているから、PCRを増やす、新薬を認可する、ワクチンを早くするなどすべて遅れている。

⑦開業医は自分の仕事以外をするようにできてないといって、開きなおっている。私は日本の開業医の仕事はコンビニ的な良さがあると評価している。しかし、危機には不向きなのは確かで、開業医主体の医療システムは大変革が必要と言われかねない。それを避けたければ、精一杯、頑張るべきだ。

⑧医師が足りないという弁解も、医学部定員を増やすのに医師会が反対してきたことを考えればおかしい(私は定員増より医師の独占領域を抜本的に減らすべきだと思うが)。

⑨「医者という安全有利な美味しい職業は存在してはならない」というと「医者は美味しくない」「勤務医は美味しくない」というが、それなら、「なぜ医学部の偏差値は、地方大学の医学部でも東京大学や京都大学の他学部なみになり、しかも、何十年も上昇しているのか」「勤務医の子でも異常に医学部に行きたがるのはなぜか」説明できない。

⑩医者が美味しすぎるので、理工系の他分野に良い人材がいかない。日本がいま必要としているのは、たとえば、IT技術者であり、先端産業の研究者だ。ところが、医学部にとられてしまっている。また、逆に、医者の仕事に本当に情熱をもっている若者、たとえば、「いま頑張らないと医者になった意味がない」とコロナの現場にかけつけるような若者から医者になるチャンスを奪っているのである。

だいたい、ある職業が美味しすぎても、引き合わなさすぎても、問題が生じる。もし、医者が報酬の割に引き合わない職業なら、それはそれで問題だが、そんな心配はまったくないのであり、もっと我が儘をいえない、報酬が他学部並み、体力がない人ではやっていけないようにしたほうがあらゆる意味で良いのである。「きつい」とすれば、青白き秀才が多すぎるのが最大の理由だ。仕事が多すぎるのは、医師の独占領域を広くしすぎてるからだけだ。PCR検査やワクチンなど、欧米では看護師さんだけで、あるいは、薬局でもできるのである。

それにしても、馬鹿馬鹿しいのは、いま、各県のトップクラスの高校では、東京大学や京都大学の合格者並に、というより、それ以上に地元大学の医学部に行くほうを優先させつつある。日本の地方が、世界に羽ばたく人材を育てるとか、そこで、企業を興すとか、それ以外のいろんな仕事で成功するより、地元大学の医学部に行って、高齢者の面倒をみるひとがいちばん偉くて、儲かるというのでいいのだろうか?そんな国も地方もダメにきまっているだろう。

なお、日本の各地方の進学事情などについては、「日本の高校ベスト100 」(啓文社書房)「日本史が面白くなる47都道府県県庁所在地誕生の謎」 (光文社知恵の森文庫)「日本人がコロナ戦争の勝者となる条件」(ワニブックス)でも論じている。

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八幡 和郎

八幡 和郎

評論家、歴史家、徳島文理大学教授 滋賀県大津市出身。東京大学法学部を経て1975年通商産業省入省。入省後官費留学生としてフランス国立行政学院(ENA)留学。通産省大臣官房法令審査委員、通商政策局北西アジア課長、官房情報管理課長などを歴任し、1997年退官。2004年より徳島文理大学大学院教授。著書に『歴代総理の通信簿』(PHP文庫)『地方維新vs.土着権力 〈47都道府県〉政治地図』(文春新書)『吉田松陰名言集 思えば得るあり学べば為すあり』(宝島SUGOI文庫)など多数。

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