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自民党総裁選挙・岸田文雄氏インタビュー「『信頼』『聞く力』を備えたリーダーを目指す」

2020/9/10

選挙ドットコム編集部

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選挙ドットコムではYahoo!ニュースと共同で、9月8日告示・14日に自民党の両院議員総会で投票が行われる自民党総裁選挙に立候補した岸田文雄氏に独占インタビューを行いました。今回はその内容をお届けします。

新型コロナウイルス感染症対策では「社会・経済を動かすためのPCR検査」も行うべき

Q.現在日本が直面する課題である新型コロナウイルス感染症対策について今政府として行うべきこと、今後行っていくべきことは何だと考えていますか?

一番は既に決定した対策を実行することです。
今後秋冬のインフルエンザ流行期の前に準備をしておかなくてはなりません。
新型コロナウイルス感染症の流行とインフルエンザが重なってくると大変なことになるためその準備が大変重要だと考えています。

医療機関への支援、検査体制拡充など準備が必要です。インフルエンザの検査と新型コロナウイルスの検査、両方とも症状に発熱が出てくるため、医療機関ですぐに判別できないと対応が滞ってしまいます。
それゆえ検査体制の充実、ワクチンや治療薬の準備をしなくてはなりません。

もう一つ、私が強く訴えているのは「医療におけるPCR検査」と更には「社会や経済を動かすためのPCR検査」も用意しなくてはならないという点です。

例えば、多くの人が移動する観光であれば、検査を組み合わせることで受け入れる地域においても安心して観光客を受け入れることができるようすることや、
これから海外との人の往来を再開するために検査体制を充実させることなどが挙げられます。

ただPDR検査は精度が100%のものではありませんので、補うために回数を増やすことやコストを下げること、検査を簡単にする、こういったことが経済社会を動かすためのPCR検査を行う上で重要なポイントになってくると考えています。

日本社会のデジタル化の遅れ、東京への人口集中が課題

Q.自身が総理大臣になった場合にどのような経済政策を実行しますか?消費税減税を検討する可能性も含めて聞かせてください。

いま国民の命や生活、事業、雇用を守るためには手元流動性、手元に現金があることが重要だ、という観点から個人のみならず事業者、企業に対しても様々な給付金、持続化給付金・家賃給付金といった形で現金を支給する対策が中心になっています。
緊急時においてこれらは大変重要な対策だと思いますが、やはり経済を平時に戻すためには今回明らかになった日本の社会経済の脆弱性をいかに解消するかということも取り組まなくてはならない課題だと考えています。

日本の社会のデジタル化の遅れや給付金を配るにしても大変時間がかかる、といったことが指摘されています。また東京に過度に人が密集していることについて、災害対策の観点からも感染症対策の観点からも問題であると指摘されています。
さらにはサプライチェーン、マスクや消毒液ですらほとんど日本国内で作られていなかったということにも対応していくことによって「危機に強い経済」を作っておかなくては、緊急時に現金を支給して手元流動性を支えることが重要であるのはもちろんですが、いつまでたっても緊急事態だからお金を支給する、という段階にとどまってしまう訳です。それで果たして大丈夫なのか?と考えています。
PCR検査と併せて、経済を支える段階から経済を回していく段階に進めていく観点が大事なのではないでしょうか。

消費税については、元々日本の財政は厳しいと言われてきましたが、日本でも現在大型の財政出動をすることでコロナに対応しています。ただ今回のコロナウイルスとの戦いは日本のみならず世界中で戦っています。アメリカは日本以上に大型の財政出動をしたり、ヨーロッパ諸国も財政出動をしたりしています。
そしてこれからの経済を考えると、しばらくは世界各国とも金利を上げることができない状況になります。
よって今しばらくは財政出動を行い金利を低く抑えている訳ですから、日本も必要とされているお金を使っていく、ということは必要だと考えています。
戦いが長期化していくとしばらくは需要の回復は難しくなるので、財政・金融政策等もしっかりと続けていかなくてはならないと思います。

そしてその前に、税を減免する、ということも大変重要です。消費税だからといって最初からダメだと拒否するものではありませんが、他の固定資産税や所得税などの減免と違い、例えば消費税率を下げる、といったことになると全国の中小零細事業者、街のお店も含めてシステムをまた改変しなくてはならずコストが増えてしまいます。
また今までの経験からみると消費税を下げることになるとおそらく買い控えが生じる可能性があるなど様々考えなくてはならない点があります。
そのため消費税については、他の税金を下げるということとは違う点をよく考えて議論しないといけないと私は思っています。
そもそも消費税はいま最も大事だとされている医療社会保障の財源ですから、それを下げることについてどうするのかも含めて、よく考えなくてはならない課題であると思っています。

安倍政権は大きな成果を上げた一方で「分配」面には課題も。格差拡大への対処や「ソフトパワー外交」に取り組んでいく

Q.安倍首相の政権運営について評価できる点・評価できない点をそれぞれ聞かせてください。

安倍政権の7年8か月は大きな成果があがった7年8か月だと私は思います。7年8か月前の日本はどうだったか。
経済は「日本経済六重苦」とも言われていました。日中関係も対話すらできない「外交崩壊」とも言われた時代でした。そこから7年8か月の間に経済も外交もずいぶん変わったのは間違いありません。経済においても企業収益、GDP、雇用、あらゆる面で大きな成果が上がったのは評価すべきことです。

ただ、付け加えるとするならそのような成長の果実がどう分配されるか、という点です。もちろん大企業や大都市においては成長の果実を受けることができた方はたくさんいます。しかし中小企業、中間層、あるいは地方といった「いつかトリクルダウンの形で広がっていく」と説明してきましたがまだ地方を歩いてみるとどうもそんなことは実感できない、という声に行き当たります。
このように分配のありようについて今一つ考えるべきだったという課題はあったと思います。

そこに新型コロナウイルス感染症によって大きな影響が日本経済にも押し寄せてきました。
株価は2万3千円を回復し、アメリカでも株価は好調。一方で観光や外食産業は収益が8割9割なくなってしまい今なお半分も戻らず苦しまれている方々がおられます。元々配分の問題は考えるべきことだったのがコロナで格差がより深刻な状況になってしまっています。格差については日本社会においても子供の貧困やこども食堂などが話題になるなど問題として指摘されています。
コロナによってより深刻化した格差に向き合っていかなくては国の一体感を維持できなくなります。「みんなで頑張ろう」という雰囲気にならないのでしっかり考えなくてはならないと思っています。

安倍政権の7年8か月で外交における日本の存在感は高まりました。しかし今回のコロナの影響で米中が激しく対立する―保護主義、自国第一主義、ブロック経済―分断がどんどん広がっている状況で、日本はどう対応すべきか。日本は島国で資源もありません。こういった国が分断の進む国際社会でどう生きていくのか。
7年8か月で「外交崩壊」と呼ばれた状況から日米関係も日中関係も改善し、日本の存在感が高まるなど大きな成果はあがりましたが、いま国際社会が新たな分断の様相を見せている中で日本はどう生きていくのかを考えなくてはなりません。私は今回の総裁選で「ソフトパワー外交」を訴えています。日本は環境やエネルギー、平和、感染症対策など、みんなが協力しなくてはいけない地球規模の課題においてしっかり汗をかき、ルール作りを先導すべきです。「日本のような国は国際社会において大切なんだ」と国際社会に感じてもらう、そういった存在感を示す外交を進めなくてはなりません。

デジタル化・IT人材の活用はハード面のみならずソフト面の整備もセットで行う

Q.学校教育におけるITの活用や政府・行政におけるIT人材の育成、活用についての考えを聞かせてください。

これからの経済の持続可能性を考えるとアベノミクス、安倍政権の経済政策は財政出動とマイナス金利・金融緩和といった金融政策の二つをエンジンにして経済を進めてきました。
しかし金利はマイナスになり財政もコロナで大型の財政出動をしたとなるとこの二つのエンジンだけでは持続可能性を維持することができないということで成長戦略、新たな時代のエンジンを考えなくてはなりません。ここがデジタル化や21世紀の石油とも言われるビッグデータ、5Gをはじめとする最新の技術を組み合わせて成長のエンジンにしなくてはいけません。

そうした成長のエンジンを教育に結び付けたときには「遠隔教育」ということになるのだと思います。遠隔教育においては機材や技術のみならずそれを指導する人材の育成も大事だと思いますし、なによりも機械だけでなくその中身のソフトの開発もそろえていかないと遠隔教育の実を上げることはできません。
単にタブレットを一人一人に配るだけでなくソフトや人材などの環境整備が揃ってこそ結果につながると思っています。成長のエンジンというと教育だけでなく医療面では遠隔医療などもありますし、ドローン宅配、自動運転、スマート農林水産業など、様々な分野で組み合わせて成長のエンジンを作ることが重要と考えています。

政治の信頼回復には「ボトムアップ」の手法を賢く使うべき。国民の協力を引き出せるようなリーダーを目指す

Q.政治や政府の信頼回復に関連して、総理大臣になった場合に国民とのコミュニケーション・対話をどのように図っていくつもりでしょうか?

政治の手法として何か方針を決まる際にリーダーがトップダウンで決め、それを国民の皆さんに示して引っ張っていくという方法と、ボトムアップで多くの皆さんの声を聞いて方針を決めていくやり方がそれぞれあります。トップダウンかボトムアップかという論争は昔からあった訳ですが、私はどちらがいいというものではなくトップダウンが必要な場合にはトップダウンの手法を、ボトムアップが必要な場合にはボトムアップの手法を使うという使い分けができるのが賢い政治だと思っています。
最近の政治はやもするとトップダウンが効きすぎているのではないか、それが政治不信につながっているのではないか、という面がありますからよりボトムアップの手法を賢く使うのが大事だと思っています。
コロナ対策などあらゆる政策においてリーダーがいくら拳を振り上げてもなかなかうまくいかないことがあります。手洗いうがいをはじめ国民の協力なくして結果を出すことはできないというのが今の政治のありようだと思いますので、国民の協力を引き出すような政治、リーダーシップを目指さなくてはなりません。

そのためには国民に信頼してもらわなくては。また国民の声を丁寧に聞く、聞く力をしっかり身につけなくてはなりません。「信頼」「聞く力」を備えた国民の協力を引き出せるようなリーダーを目指したいなと思っています。

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