いよいよ明日告示!!各陣営のネット活用に注目(2015埼玉県知事選特集③)
2015/07/22
6月1日、自民党は来年夏の参院選に向け、公職選挙法改正案を示しました。ところがこの案に対し、野党だけでなく自民党内からも批判が噴出しています。
いったいどのあたりが批判の対象となっているのでしょうか。
実はこの改正案、複雑な「ウルトラC」的改正なのです。この改正案が練り上げられた事情と、賛成・反対の声をまとめました。
今回、自民党が各党に示した改正案を簡単にまとめると
(1)1票の格差是正のため、選挙区の定数を2増やす
(2)比例代表については定数を4増やし『拘束名簿式』を一部に適用する
というものです。一読しただけでは、どこが「ウルトラC」なのかさっぱりわかりませんね。少しずつ読み解いていきましょう。
選挙でひとりの議員が当選するために必要な得票数が、選挙区によって異なるため、有権者の一票の価値に格差が生じる「一票の格差」問題については、近年、選挙のたびに「違憲ではないか」と声があがる事態となっています。最高裁判所もたびたびこの格差を「違憲状態」と認定し、格差の是正を促す判決が出されています。
これを受けて、2015年に公職選挙法が改正され、人口が少ない「鳥取県と島根県」「徳島県と高知県」の4つの参院選の選挙区をそれぞれ合わせて2つの「合区」となることとなりました。つまり2つの県で定数1となっていたわけです。この合区などによって、2016年の参院選は一票の格差が最大「3.08倍」となり、最高裁でも前回の2013年の「4.77倍」の違憲状態から、合憲と判断されるまでに改善しました。
今回の自民党案では、さらに議員一人当たりの有権者数が最も多い(一票の格差が大きい)埼玉選挙区の定数を2増やすことで、一票の格差を3倍以内に抑制できるとしています。人口減少、経費削減などの観点から、国会議員の数を減らす声があがっている中、定数を増やすという策には反対する声もあるものの、定数を増やすことで一票の格差が是正できるということであれば、これもひとつのアイディアかもしれません。
さて、自民党案の「ウルトラC」はここからです。
一票の格差を解消するために、選挙区の定数を増やすと同時に、比例代表についても定数を4増やすというのが自民党が提案している公職選挙法の改正案です。このとき一部に限り、事前に定めた順位に従って当選者を決める「拘束名簿式」の特定枠を導入することが含まれています。
現在の参院選の全国比例は「個人名での得票数の多さ」によって当選が決まる「非拘束名簿式」が導入されていますが、自民党案では現在の衆院選のように「党が事前に決めた順番」で当選が決まる「拘束名簿式」を導入するとされており、これによって合区となった鳥取・島根・徳島・高知などの議員を優遇し当選させる狙いがあるとされています。
比例代表は、全国の有権者の票を各政党の投票率に比例して議席配分するというものですから、一票の格差是正には効果がないはずです。しかし、合区によって自分の県の代表が当選しにくくなったと感じる有権者が、比例代表の拘束名簿式の特定枠で自県の候補者が救済(優遇)されることで「心理的な不公平感(心理的格差)」を解消できる、ということです。
2015年の公職選挙法改正で決まった参院選の「合区」については、合区対象となった地域が地盤の国会議員や地元の議員などから猛烈な反対がありました。決定以降も、合区の改善を求める声が自民党内からも激しく上がっていました。
また合区制を決めた2015年の改正公選法の付則には、合区だけでは格差是正は不十分との観点から「選挙制度の抜本的見直しを行い、必ず結論を得る」と明記されていることもあり、なんらかの改善案を来年夏の選挙前までに出すことが必須とされてきました。今回の「比例代表の定数増(一部拘束名簿式を適用)」案は、反対意見の多い合区を来年夏の参院選挙までに根本的に解消することは困難だということから、急遽ひねり出された「苦肉の策」=「ウルトラC」というわけです。
賛否両論が渦巻いているこの自民党案についての反応はいかに?立場の違う議員の発言を見てみましょう。
自民党の石破茂元幹事長は自民党の公職選挙法改正案に反発する声があることに対して聞かれ「現実的な案としてこれしかない。(反対するなら)鳥取駅前で『この県の代表はいらない』と演説すればいい」と語りました。
また、一票の格差是正と各都道府県の選挙区から国会議員を1人以上選出する必要性の双方をかんがみながら「合区が残るのは痛恨だが、格差是正のための憲法改正は来年7月(次回参院選)までの時限性を考えれば、不可能だ。地方の代弁者が減り、東京一極集中が進んでいいのか。批判を承知で党執行部が泥をかぶって作った案だ」とも述べました。
野党第一党の幹事長である立憲民主党の福山哲郎幹事長は、自民党が唐突に案を示した批判を向けました。「このような乱暴なやり方は、議員の身分にかかわることなので、丁寧にやるべきだと思う」と強調しています。
野党側からはほかにも「合区対象県の議員の救済法ではないか」「到底受け入れることはできない」といった批判が相次いでいます。
自民党内からも反対の声が上がっています。自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長は「定数の6増などは、もう少し国民の理解を得てほしい」「森友・加計問題には結論が出せないのに、こういった改正案はしっかり結論を出す党はどうなのか。国民をなめてはいけない」と厳しく述べています。
「有権者の一票の格差を是正する」ためにと提案されている、自民党の公職選挙法改正案。結果的に議員定数が増えることや、合区で不利益を被った県や議員の猛反発による「拘束名簿式」の導入など、きちんと内容を見てみると懸念点が浮かび上がってきます。
ここで基本に立ち返り、改めて考えてみましょう。
日本国憲法第十四条:すべての国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
これにより、有権者の投票する一票の重みも平等であるべき、というのが、公職選挙法を改正する最大の理由です。あわせて、国の財政を考えれば議員定数の削減は国民感情としても理解できます。今回提示されてた自民党の公職選挙法改正案にまつわる議員・政党間のバトルを「いつもの政権争い」と流さないで、この改正が有権者にとって本当にベストなものかどうかを、私たちも真剣に考え、今後の流れを冷静にチェックする必要がありそうです。
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