兵庫県知事選が2日に投開票され、現職の井戸敏三氏が著名コラムニストの勝谷誠彦氏ら3人の新人をかわし、5回目の当選を果たしました。同知事選は過去三回、現職が共産党系に圧勝する構図でしたが、今回は知名度の高い勝谷氏を含めた4人が立候補。混戦が予想されましたが、現職が勝谷氏に30万票の大差をつけて当選する結果となりました。
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兵庫県知事選には元自治省(現総務省)官僚で現職の井戸氏、元週刊文春記者でコラムニストの勝谷氏(無所属新人)、元兵庫労連議長の津川知久氏(無所属新人、共産党推薦)、元加西市長の中川暢三氏(無所属新人)の4人が立候補。結果は井戸氏が94万票を集め、64万票の勝谷氏、10万票余の津川、中川両氏をかわして当選しました。
2001年に初当選した井戸氏はその後、3回にわたって共産党系候補に大差で勝利。今回は久々に選挙戦の行方が注目されました。投票率は40.86%で、参院選と同日選となった前回の53.47%を除くと2009年の36.02%、2005年の33.33%より上昇。関心の高まりがうかがえますが、結果的には20時の投票締め切りと同時に「当選確実」と報じられました。
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なぜ、勝谷氏はテレビ出演による高い知名度を生かして現職に迫ることができなかったのか。関係者の話や地元メディアの出口調査などから、3つの敗因が浮かび上がってきます。
第1の敗因は政策的な争点を作り出すことができなかったこと。勝谷氏は現職の「多選」に焦点を当て、「5期20年は長すぎる」などと批判しましたが、社会保障や財政、阪神大震災からの復興など政策的な議論は深まりませんでした。
神戸新聞の出口調査によると、投票で重視した政策については「社会保障・医療」が最多。前回の選挙で井戸氏に投票し、今回は勝谷氏に投票した人に限って「投票基準」を聞いたとしても、「多選への批判」は13%にとどまりました。多くの有権者は当選回数の多さよりも、政策の中身を重視したとみられます。
勝谷氏はそうした状況を踏まえて選挙戦の後半、教育や子育て支援の充実を訴えましたが、現職も似たような主張をしており、明確に差別化することができませんでした。
第二の敗因は目新しいアイディア満載ながらも、手探りだった選挙戦略です。勝谷氏はかつて元長野県知事の田中康夫氏を支援していた経緯があり、田中氏の支援者が今回、勝谷氏の陣営に加わりました。田中氏は2009年の衆院選において兵庫県8区(尼崎市)で当選しており、一定の支援基盤があるとされます。加えて今回は、勝谷氏のメルマガの読者を全国から集めるなど、ボランティアをベースとした選挙戦を進めていました。勝谷氏のイメージ動画を制作する、座談会の様子を動画で配信する、期日前投票所を地図にして公開するなど様々なアイディアを試し、一定の効果は得られていたようです。
しかしながら、一方の井戸氏には自民党、民進党、公明党、社民党の県組織が支援。各種団体や個人から12万5000もの推薦書を集めるなど徹底した組織選挙を繰り広げ、選挙戦中盤で「勝谷氏が猛烈に追い上げている」との情報が入ると各党は徹底的に組織の引き締めを図りました。
第三の敗因は「イメチェン」の失敗です。テレビに出演する勝谷氏といえば短い金髪にサングラス姿で、辛口コメントをいうキャラで知られていますが、今回は髪型を変え、メガネも変え、完全にイメージチェンジして選挙に臨みました。
結果的には「誰だかわからない」「勝谷氏が選挙に出ると聞いていたが、出てないじゃないか」という声が有権者から聞かれる状態。勝谷氏自身も落選確実となった後の記者会見で「わが陣営の最大の間違い」(神戸新聞)と語りました。
確かに写真を見比べてみると、同一人物とは思えないほどの変わりようです。かつて茶髪の弁護士として知られていた橋下徹氏が大阪府知事選への立候補にあたって髪の色を黒く染めたのが知られていますが、その時よりも変化の幅が大きすぎて、有権者は戸惑ってしまったようです。選挙においては「見た目も大事」だということを再認識する選挙となりました。
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