現在、富山市議会では政務活動費の不正問題で定数40のうち12人が辞職しています。このように議会で多数の辞職者が出る事件は珍しいものの、過去には議員の大半が逮捕や書類送検されたことがきっかけで多数の辞職者が出た事例があります。今回は最近10年ほどに起きたこのような事例を2例紹介します。
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議員の3/4が逮捕された平川市議会

2014年1月に行われた青森県の平川市長選では現職の大川喜代治氏と新人の長尾忠行氏の間で激しい争いとなり、長尾氏が勝利しました。この選挙では大川氏陣営が平川市議会議員に票のとりまとめを依頼するために20-100万円の現金を選挙前に渡しました。この時、長尾氏を支援する議員にも現金を渡したため、この議員から警察に情報が入り、選挙違反が発覚し、2月から7月までの間に市議会議員20人中15人が逮捕されました。

この一連の逮捕により、平川市議会は常任委員会だけではなく本会議の開催が不可能になるという異常事態に発展し、逮捕された15人中7人が辞職、1人が失職し、7月27日に8議席分の補欠選挙が行われました。この選挙では前回の市議会選や市長選の投票率が約70%なのに対し、今回は39.87%と激減しているだけではなく、前回の市議会選や市長選では約1%しかなかった無効票が今回の補欠選挙では約4%も出たことが注目されました。

また、この補欠選挙が終わっても、議会には裁判中の議員が7人いる状況にありました。
公職選挙法第110条の4では市町村議会は定数の1/6を超える欠員が出た場合には50日以内に補欠選挙を実施しなくてはならないと規定されており、これら7人の議員の動向次第では再度補欠選挙が行われる危険性がありました。さらには2015年7月に任期満了による市議会選が予定されていたため、1年間に3回選挙を行う可能性が生じ、このような事態になった場合、市の財政負担に懸念を示す声もありました。しかし、任期満了に伴う市議会選までに事件絡みで2人、病気理由で1人の計3人の辞職者にとどまり、定数の1/6を超える4人に達しなかったため、1年間に選挙を3回行うという事態は回避されました。

 

 

議員が全員辞職した小菅村議会

2007年1月に行われた山梨県知事選では現職の山本栄彦氏や新人の横内正明氏など計4人が立候補し、横内氏が当選しました。
この県知事選において、山梨県に属する小菅村では村議会議員10人全てが現職の山本氏を応援していましたが、村議会議長を始めとする議員3人がファミリーレストランで議員5人を含めた村民に1人当たり2000円相当の食事などでもてなして投票依頼をしたことが2月に発覚し、議員10人中8人が書類送検されました。

このため、議長などに一時連絡が付かなくなり、3月に予定されていた村議会の開催時期が決まらない状態に陥りました。そして、村長は万が一村議が大量に失職して議会が開催できなくなる事態を恐れ、例年より前倒しで議会を招集し、3月1日に村議会が行われました。
3月1日の議会は通常通り審議が始まりました。しかし、昼の休憩の間に非公開の全員協議会が行われ、山本氏を全議員が支持していたことから、連帯責任ということで書類送検されていない議員も含めて全議員が辞職する意向が決定しました。そして、審議が再開された直後に全議員が「一身上の都合」を理由に辞職願を提出、全員の辞職が了承され、小菅村議会は議員数が0という異常事態に発展しました。

小菅村議会では4月22日に任期満了に伴う選挙が予定されていましたが、この選挙が統一地方選であったため、選挙を行う場合は統一地方選と合わせることを規定した臨時特例により、すぐ選挙を実施する事が出来ず、約2か月間にわたり議員数が0となる異常事態が続きました。

小菅村では地区ごとに候補者を擁立する慣例があり、特殊な事情が無い限り、無投票で終わることが多い傾向がありました(1963年以降、2003年までの10回の村議会選で選挙戦になったのは3回)。しかし、この議員全員辞職事件を受けた後の2007年4月22日の村議会選ではこの慣例を破り、女性が立候補しました。小菅村によると村議会選に女性が立候補したのは初でした。そして、この女性候補は当選し、初の女性村議会議員が誕生するという波乱も起きています。

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地方議会の自主解散

今回の富山市議会で起きた事件はここで紹介した事件に比べると多少特異です。ここで紹介した事件は選挙違反によって議員の大半が逮捕あるいは書類送検されて、多数の辞職者が出ましたが、今回の富山市議会では政務活動費の不正が原因で辞職者が相次いでいます(ちなみに青森県津軽地方や山梨県ではしばしば金権選挙の体質が指摘されており、「津軽選挙」「甲州選挙」と呼ばれています)。

今回の事件後の富山市議会の動きですが、自民党会派が議会の自主解散を検討する動きを見せていました。自主解散とは前述した小菅村議会のように全員が辞職願を提出するものとは異なり、「地方公共団体の議会の解散に関する特例法」という法律に規定されている法律上の制度です。この法では全議員の3/4以上が出席し、出席議員の4/5が賛成する事で地方議会は自主的に解散できるということが規定されています。

この地方議会の自主解散は自治体の選挙経費を削減することを目的として、首長選と選挙日程を合わせるために行われた事例もありますが、このようなケース以外で自主解散が行われた最近の事例としては2013年6月に福岡県の中間市議会が市職員の不正を巡り、市長の責任を問う市議会多数派が月末に行われる市長選をにらんで自主解散を仕掛けて、可決したことがあるほか、議会の不祥事が原因で起きた事例として、2005年11月に徳島県の鳴門市議会が9月に行われた衆議院選挙の選挙違反を原因として26人中7人の議員が逮捕されたため、自主解散したことがあります。

しかし、富山市議会では他会派だけではなく、自主解散を検討していた自民党会派内部でも市議会で政務活動費の不正追及を優先すべきという声があったため、自主解散は断念しています。このため現時点では一連の事件で辞職した12人と事件以前に生じていた欠員1と合わせて13議席分の補欠選挙が行われる予定となっています(10月30日告示、11月6日投開票)。
ただ、告示日までにさらに辞職者が出た場合、補欠選挙の議席数は増えるほか、補欠選挙後も新たな不正が発覚するなどし、市議会の定数の1/6を超える7人以上の辞職者が出た場合は再度補欠選挙を行う必要があり、自主解散の再度の検討の可能性を含めて、今後も富山市議会の動きには目が離せない所です。

 

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宮澤 暁(Actin)

1984年東京都出身。個性あふれる候補者が多数出た1999年の東京都知事選に衝撃を受けてインディーズ候補(いわゆる泡沫候補)にはまり、そこから変わった選挙・政治事件に興味を持ち、現在に至る。著書に『ヤバい選挙』(新潮社)。

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