G20開幕~国内外に中国の「権威」をアピールする場に

2016/09/05

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児玉 克哉

G20(Group of 20) が9月4日夕から開幕する。G20とは先進国グループのG7に新興国を加えた国や地域の集まりだ。構成国・地域は、アメリカ合衆国、イギリス、フランス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、欧州連合、ロシア、中華人民共和国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカ、オーストラリア、韓国、インドネシア、サウジアラビア、トルコ、アルゼンチンとなる。

中国は凄まじいくらいの経済発展を遂げたが、経済はやや低迷しつつある。その影響もあり、新興国といわれた国の経済成長も厳しくなっている。特に資源国であったロシア、ブラジル、南アフリカなどは深刻な不況に喘いでいる。ここ10年の間、中国が世界経済を牽引してきたといって過言ではない。それだけに中国で開催されるG20会合では、ホスト国の中国は中国経済への不安を払拭し、チャイナリスクがないことを示すことが最大のポイントとなる。より重要なのは、国内へのアピールだ。中国は非常に高い経済成長によって社会的な不満を抑えてきた。しかし成長が鈍ると各地での暴動の発生など徐々に政府への不満も高まっている。G20の成功は、中国は世界の中で中心的役割を担う国になっており、将来展望も明るいことを中国内にアピールすることになる。それだけに完全な成功のために神経を使っている。

中国政府が最も嫌がるのが国際的な政治課題が会議で出されることだ。特に南シナ海の問題だ。オランダ・ハーグの仲裁裁判所が、南シナ海での中国の主権主張を退けた裁定は中国にとって大きな失点だ。中国は、仲裁裁判所の裁定は紙切れに過ぎないと無視するスタンスだ。しかし、中国で開催する国際会議でそのことが議題になると問題が表面化する。南シナ海問題は一切、会議で触れて欲しくないというところだろう。G20構成国の中に、フィリピン、ベトナム、マレーシアなど領有権問題で敵対している国が入っていない。アメリカと日本が持ち出さなければ、議題にはならない。中国はパリ協定の批准をアメリカと行うことを決め、退任までに業績を作りたいオバマ大統領に「友好の塩」を送った。これで会議では南シナ海問題を持ち出さないように、ということだろう。オバマ大統領の性格からすれば、会議前の二国間首脳会談ではこの問題を持ち出しても、本会議では持ち出さないのではないか。中国にとって問題は安倍首相だ。尖閣問題と絡めて南シナ海問題を持ち出すかも知れない。ただG20構成国を見ると当事国の不在もあり、南シナ海問題を持ち出しても実りある議論になるとは思えない。安倍首相も習近平国家主席との二国間首脳会談では南シナ海問題や尖閣諸島付近への中国公船の領海侵入問題を持ち出すかもしれないが、本会議では曖昧な表現にとどまるかも知れない。

中韓首脳会談も重要だ。朴大統領はTHAADの配備において中国と対立している。G20会議にはアメリカも参加している。中韓首脳会談でしっかりとした議論をしたいところだ。ただこの問題も中国は本会議で持ち出されるのを嫌がるだろうし、アメリカ、日本以外はあまり関心を示さないかもしれない。

このようにみてくると、G20での議論は世界経済の活性化に集中されそうだ。しかし、中国にとって経済問題も現在はかなり厳しいところだ。中国の生産過剰の問題は国際的な関心事だ。象徴的なのが鉄鋼の生産過剰だ。大規模なインフラ開発で鉄鋼バブルを引き起こした。このバブルは中国経済の超成長に大きく貢献した。鉄鋼の生産量は一時、世界全体の約半分を占めたが、景気の減速とともに生産過剰となり、鉄鋼の価格は下落した。今では作れば作るほど赤字になると言われる状態だ。しかしそれでも止めることができないのが中国の企業構造といえる。鉄鋼などではダンピング輸出や過剰在庫が問題となっている。こうなると中国だけの問題ではなく、他の国の鉄鋼産業も打撃を受けている。中国はこの問題の批判にどう答えるのか。

また、長年の懸案となっているのが知的財産権問題だ。中国企業のパクリは国際的にも問題視されてきた。中国は世界2位の経済大国になり、輸出額も大きくなった今、この体質は海外諸国からは批判せざるを得ない。外国企業が新市場を開くと中国の企業は模倣品を出して、市場を浸食する。外国企業が訴訟しても判決の予想はつかない。仮に有罪となっても次々と同じようなケースがでてくると対処に苦慮する。最近は、中国企業がどんどんと特許や商標登録をとり、逆に海外企業を訴えることも多くなった。外国企業にとってみると、自分たちは訴えにくく、訴えられやすい構造になっている。改善が求められる。

また中国からのサイバー攻撃・犯罪も重要課題だ。アメリカをはじめ多くの国がこのサイバー攻撃・犯罪に悩まされてきた。重要な産業情報が盗まれることもあった。アメリカは中国と2015年9月25日にサイバー協定を結んだが、その後もサイバー攻撃・犯罪は起こっている。

またより根本的に、中国経済は大丈夫なのか、という問いかけにも中国は答えなければならない。中国政府の情報がどれだけ信ぴょう性があるのかよく疑問視される。中国経済に不安はないことを中国政府は証明できるのかどうか。中国の経済の行方は世界の国々が見守る状態になった。今回のG20は中国にとってはチャイナリスクがないことを内外にアピールする場である。参加国は単なるパフォーマンスでないことを確認しなければならない。そして懸案事項の解決が進み、中国が開かれた市場となることを約束する場になることが望まれる。

※本記事は転載となります。オリジナル記事をご覧になりたい方はこちらからご確認ください。

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児玉 克哉

三重大学副学長・人文学部教授を経て現職。トルコ・サカリヤ大学客員教授、愛知大学国際問題研究所客員研究員。専門は地域社会学、市民社会論、国際社会論、マーケティング調査など。公開討論会を勧めるリンカーン・フォーラム事務局長を務め、開かれた政治文化の形成に努力している。「ヒロシマ・ナガサキプロセス」や「志産志消」などを提案し、行動する研究者として活動をしている。2012年にインドの非暴力国際平和協会より非暴力国際平和賞を受賞。連絡先:kodama2015@hi3.enjoy.ne.jp

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