9割がネットで影響を受ける中間層の時代ー やまもといちろうインタビュー第4回

2016/07/28

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コラム

選挙ドットコム編集部

データで選挙を見る―
やまもといちろうさんへのインタビュー最終回は、ネット選挙の影響とカギを握る中間層を取り込む戦略についてです。
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第4回:9割がネットで影響を受ける中間層の時代

聞き手は選挙ドットコムCCOで選挙プランナーの松田馨が務めます。(全4回掲載)

 

やまもと:政治家の方とよく話してみると「どんな日本にしたいんですか」って質問に、具体的に答えられない方がいるんですよ。

松田:それを答えられないなら、何のために政治家をやってるんだという話になりますよね…。

やまもと:何色のジャケット着て行ったらいいかとかそっちの方に関心があって、自分のイメージカラーと自分の政党が出してるポスターのカラーが合わないとか言い出して、関係ねーだろってなるんですよね。

松田:それはつらい(苦笑)この前ある芸能人の方にお会いする機会があったんですが、選挙の話になって。その方のところにはいろんな党から「うちの党から選挙に出てくれ」ってお願いにくると。でも、声をかけてきた一人として「あなたはどんな日本にしたいんですか? 政治家になって実現したい政策はありますか?」って聞かれたことがない。ただただ「出てください、お願いします」って。

やまもと:まあ50万票くらい取れるだろうと。

松田:そうそう。バカにしてんのかと、その方は憤慨されてました。政治家側からすると、有権者は政策に関心がないから、知名度があれば勝てるって二言目にはいうわけですよ。
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有権者は「馬鹿」ではなく「政策に詳しくない」だけ

やまもと:いや違います。確実に市民は、市民と有権者は暮らしている中で政治にニーズがあって、それを言語化できていないだけなんですよ。具体的に何がいけないんだ、何をしたいんだというのが言えないだけであって、選択肢を用意して「あなたにとって何が大事ですか?」と問いかけると、それなりにちゃんと合理的な返答が有権者群から数字として帰ってきます。だから政治家側が、もっと有権者とコミュニケーションを取ったりとか、有権者からのいろんな意見を聞いて分析しないといけない。

松田:まさに「有権者は馬鹿」なんじゃなくて「政策に詳しくない」だけ、ですよね。そうした有権者の声も、調査結果には出ているわけですよね?

やまもと:そうです。そういうところも踏まえて数字は見ていかないといけない。例えば内閣支持率が46%から50%になりました。じゃあ4%増えたのってなんだいという話をもっと考えなければならない。上がったよかったじゃなくて、どのクラスターが支持率をどう回復させたんだと。

たとえば安倍政権でみたとき、支持率を有権者男女で分けたら女性はあまり回復していない。相変わらず40%中盤から後半だとしたら、なぜ女性支持率は回復しないんだって話から入らないと多分わからないんですよ。逆に言えば、じゃあなんで男性が6割近く支持しているのかってなっちゃうんですよ。みんな「オバマさんが広島に来ました、支持率50%回復」って時点で思考停止してるんですよね。

そうじゃなくて、いろんな人の支持の結果そうなっているだけであって、そのクラスター別で見た時に共働き夫婦だとどうなのか、もしくはリタイアされている方はどうなのか、シングルの男性はどうなのかということを考えて個別の支持率を見ながら、政策で何が重視されているんだっけっていうところに考えを持っていくべきだと思うんだけど、あんまり興味がなさそうなんですよね、政党本部の側が。

松田:たしかに、その時の数字だけで一喜一憂される方は多いですよね。

やまもと:わかるんだけどさ。それはもう馬券買っているようなもんですよ。なんか競馬新聞読んで、この馬知ってる、なんか前の着順2着じゃん、これ今回行けんじゃねーのって話ですからね。
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ネットの影響で落選。カギを握るのは89%の中間層

松田:クラスター別に見たら投票先未定層がどこにいて、男女でどうだとか、政党支持層でどうだとか、重視する政策はなんだとか、戦略の立案に欠かせない情報が眠っているんですけども。

やまもと:これは2004年くらいからワアワア言っていた事なんですけれども、最近だと支持基盤のバイアスが少し減ってきています。

特定の革新なのか保守なのかという観点で言うと、だいたい保守(右派)で4%、革新(左派)で7%なんですよ。それがコアでそこの支持者は変わらない。残りの89%がどう動くかというのが現代の選挙なんです。もちろん、固有の政党支持があるので、全部がごっそり動くわけではありませんが、自分たちの政策を支持してくれる人だけ見て内向きに選挙活動しているのでは駄目で、どちらにつくか決めかねている中間層がマーケティングの対象になるということです。

無党派前提で選挙やって、無党派の人たちにどういう政策を訴えかけるのか、どういうイメージで候補者は信頼を得るのかを考えていかないと、後で違った時にすごい番狂わせおきますよというのをずっと言ってまして。実際そういう説明をして、過去の選挙の推移とか、最近ですとネット経由で落選運動が効果出し始めているので、ネットで見せる態度や、どの情報をシェアしただとか全部考えなければダメですよって言ってるわけなんですけど、なかなかわかってくれない。この前の佐賀県知事選挙なんか、樋渡さん間違いなくネットで落ちてるんで、ビックリしました。

松田:あれは衝撃でしたね。
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接触回数が信頼に。ネットでの接触回数も重要

松田:ネット選挙が解禁されて3年が立ちますが、ネットと政治の関係について、落選運動以外ではどうでしょう?

やまもと:僕はロビー活動ってすごく大事だと思っていて、最近ロビー活動がメディアと一体になって、可視化され始めたというのがすごいと思うんですよね。今までどっちかっていうと、国会答弁も誰かから情報をいただいて、彼らなりに考え忖度して、国会で話されていると思うんですけれども、あれも一種のロビー活動の結果じゃないですか。働きかけを受けて、必要な政策を実現するための過程と考えると。

ただそれは最近ネットが進化していく中で、そういうのをちゃんとウォッチして広げていくクラスターというのができ始めていると思うんですよね。その影響力って大きくなってきている。そういう人は特定のオタクの表現規制とか、あとダンス規制とか個別の政策分野で動いている政治家のことをちゃんと覚えていて、あの先生は選挙区外だけどいい先生だって言うそれなりに波及効果があってポジティブになっている。それがある意味実績になっているっていうのがあるんですよ。

その政治家をなぜ信頼しますかという問いの答えに、ネットで知りましたという人が、若い世代だけでなくて中高年でも増えてきている。ネットで議論していて友達がいいと言っていたので、とかね。

松田:なるほど。接触回数が信頼につながっていくということを考えると、ネットでの接触というのもこれから地上戦と同じように効果を発揮する可能性がありますね。

今日はデータ分析を通じた政治家と選挙の意味、政策の重要性、そしてネットでの政治家と有権者の新しい関係の構築についての可能性など、多岐にわたり貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。とても勉強になりましたし、勇気をもらいました。またぜひ、お話を聞かせてください。

やまもと:私でよければいつでも。

 

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2023年に年間1億PVを突破した国内最大級の政治・選挙ポータルサイト「選挙ドットコム」を運営しています。元地方議員、元選挙プランナー、大手メディアのニュースサイト制作・編集、地方選挙に関する専門紙記者など様々な経験を持つ『選挙好き』な変わった人々が、『選挙をもっとオモシロク』を合言葉に、選挙や政治家に関連するニュース、コラム、インタビューなど、様々なコンテンツを発信していきます。

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