
(24日各紙朝刊より。編集部作成)
6月24日、全国紙6紙(読売、朝日、毎日、産経、日経、東京)が一斉に参院選の序盤情勢を報じました。参院選の公示から2日後にもかかわらず、与党が勝利するのは「既定路線」といわんばかりの内容でした。
いずれの新聞も、解説や見方に大きな差はなく、「改憲勢力が3分の2をうかがう」「与党、改選過半数の勢い」などと、まるで示し合わせたかのように同一の見出しが踊りました。
なぜこれほど同じような内容、中身になるのでしょうか? マスコミの情勢調査の正確性を物語っていると言えるのでしょうが、今回の参院選に関しては「全国的な投票傾向が酷似しており、どの社が調査しても同じような結果になる」からです。「安倍政権にお灸をすえ、野党に奮起してもらおう」と考える人が少ない、とも言い換えられます。
それでも、記事をよく読むと異なる点は少なくありません。例えば、参院選岩手選挙区の情勢については、読売新聞は「野党優勢」、毎日新聞は「与党劣勢」と見方が分かれています。ここまで正反対になるということは、激戦と見ていいということでしょう。
「ややリード」「追う展開」「先行」といった言い回しも気になるところです。妙に主観的な印象があり、一体何ポイント離れていればリードなのか、書きぶりの根拠が見えにくくなっています。当然ながら、テキトーに書いているわけではありません。いずれも生数字に忠実に従った表現なのでしょうが、微妙な言い回しになるのは、生数字を出すことができないもどかしさと理解できます。
例えば、5ポイント差以内なら「接戦」「激戦」「横一選」となるし、10ポイント以上の差があれば「先行」「リード」「優位」「追う展開」「やや苦戦」などの表現が考えられます。
しかし、そうでない場合もあるから話がややこしくなってくるのです。
例えば、生数字が「A候補50ポイント、B候補40ポイント」だと仮定します。
一般的には「A候補が先行し、B候補が追っている」「A候補がB候補をややリード」などとなりそうなものですが(注:10ポイントぐらいだと、勝敗は最後までわからないことが多い)、各社それぞれの判断で、「A候補とB候補が横一線の戦い」「B候補が猛追、A候補と大激戦」というようにトーンが変化したりもしてきます。
これは生数字だけにこだわらず、自分たちの取材成果を加味しているために起こる現象なのです。情勢調査のサンプルに偏りがあったとみて、「そんなに差がつくはずがない」とわざわざ修正をかけることもああります。一筋縄ではないかないのが、選挙報道なのです。
さて、今後注目すべきは「与党優勢」報道の影響です。
まず、与党の優勢が一斉に報じられて最も困るのは自民党、公明党です。候補者にゆるみが出る上、「与党が勝ちそうだから、野党に入れよう」と考える人が増えるかもしれないからです。
実際に、安倍晋三首相は6月24日、自身のフェイスブックを更新し、与党優勢の報道について「そんな生易しい状況ではない。大変厳しい戦いを強いられている」と書き込んでいます。自民党本部も、全国の候補者や陣営に引き締めるよう通達を出したと言われています。
選挙戦で「優勢」と報じられれば、「劣勢」の側を応援しようという心理が働きやすいと言われています。「優勢」と報じられても、喜んでいられません。
ちなみに「優勢」と報じられて、みんなが勝ち馬に乗ろうとして「優勢」の側にどんどん票が集まることを「バンドワゴン効果」と呼びます。逆に、「劣勢」と報じられている側に同情などで票が集まることを「アンダードッグ効果」と呼びます。安倍首相はこの効果を気にしているのです。
いずれに転ぶかは、結果を見なければ分かりません。もちろん、選挙に影響する要素は、報道だけではありません。例えば、イギリスの国民投票でEU離脱派が過半数を獲得したことは、日本経済を直撃しており、与党に不利になる可能性が出てきているとも言われます。序盤情勢が一気に変化する可能性は十分にあるでしょう。
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