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ポスター掲示板も町内に一か所しかない異例の選挙戦となった楢葉町長選挙

2016/4/28

山本洋一

山本洋一

Business people fighting

東京電力福島第一原発に近い福島県楢葉町で、2011年の原発事故以来、初めて本格的な選挙が行われました。これまでも選挙は行われていましたが、住民がいなかったからです。とはいえ、昨年9月に避難指示が解除されて以降、町に戻ってきた住民は1割にも満たない状況。

本来の選挙とはかけ離れた、なんとも異様な光景が広がっていました。楢葉町は太平洋に面し、福島第一原発から20kmほど南に位置する町。北に隣接する富岡町との境には福島第二原発があります。2011年に福島第一原発事故が起きると、政府は楢葉町の居住地区全域を警戒地区に指定。

翌年には避難指示解除準備区域に指定して立ち入りができるようにしましたが、昨年9月5日に避難指示が解除されるまでは泊まることも住むことも禁じられていました。楢葉町によると、現在までに戻ってきた町民は今月4日付で473人。

新たに町民となった人を含めても五百数十人にとどまります。震災前の住民数は7000人を超えていたので、今もなお9割以上がいわき市など他の市町村に避難している計算になります。そんな中、楢葉町の町長選が17日に行われました。現職の松本幸英氏と新人で元副町長の鈴木伸一氏の2人が立候補しましたが、両陣営とも選挙事務所は町内に置かず、住民の7割が住むいわき市に設置。ポスター掲示板も町内に一か所しかなく、町内ではなくいわき市内の仮設住宅などで市民に迷惑をかけないよう静かに投票を呼びかけました。

選挙期間は10日間。

通常、町村長選の選挙期間は5日間ですが、期日前投票の事務に相当な手間がかかることなどから、倍の長さに設定しました。ちなみに公職選挙法は「少なくとも5日前までに告示」することを求めているだけで、自治体の判断で選挙期間を長く設定することができます。

開票結果は現職の松本氏が2689票を集め、1787票だった鈴木氏を突き放して再選しました。投票率は74%。前回を約4ポイント下回ったとはいえ、国政選挙の全国平均が50%程度であることを考えれば極めて高い水準です。避難を余儀なくされているからこそ、逆に自治について意識が高まっているのかもしれません。

異例の選挙戦を余儀なくされているのは楢葉町だけではありません。原発事故の影響で今も全町避難が続く浪江町と大熊町では、昨年11月に町長選を実施。
大熊町では町議選も同時に行われました。いずれも福島県内を中心に、すべての住民が全国に避難している自治体。

楢葉町と同様に、不思議な選挙戦が繰り広げられたようです。
熊本地震の被災者に注目が集まっていますが、福島県には事故から5年たった今も不便な避難生活を強いられている人たちがいます。
選挙によって住民の声が吸い上げられ、復興や自治に活かされるよう願わずにはいられません。

 

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山本洋一

山本洋一

元日本経済新聞記者 1978年名古屋市出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、日本経済新聞社に入社。政治部、経済部の記者として首相官邸や自民党、外務省、日銀、金融機関などを取材した。2012年に退職し、衆議院議員公設秘書を経て会社役員。地方議会ニュース解説委員なども務める。

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