地下鉄の改札を過ぎて出口へ向かう階段を見上げると、真新しいリクルートスーツに白シャツの男女が下りのエスカレーターに乗り込んで来ました。少し高揚した頬に緊張気味に結ばれた口元、手には黒鞄。「そうかー。今日から3月」。今年度から就職活動解禁は3月1日となったのです。
就職活動というと、合同説明会に行ったり、先ずはネットでエントリーしたりするのが昨今の常識。議員への道もご多聞に漏れずインターネットでの「公募」が多くなってきました。
「公募」というといわゆる「地盤看板鞄」が無くても立候補できることから、公平でクリーンなイメージで世間での印象は悪くはない。国会議員への就職活動に「公募」でのエントリー増えているのは時代の流れなのでしょう。
では、政治家になろうと決めたら、先ずはネットで政党の公式サイトからエントリーするのかというと、これでは政治家としての資質に「?」がついてしまいます。政党に所属して活動する政治家を目指しているのでしたら「組織の一員」を目指すわけですから、民間企業を目指すのと同じはずですが、一般的な民間企業への就職活動と「政治家」への就職活動、大きな違いがあるのです。
政治家を目指すのだから、入口も「政治」で進めるのが流儀。
「政治家」を目指す「就活」で、入口を間違えてはなりませぬ。
私が秘書だった頃、「将来は議員を目指しているんですか?」と聞かれることがよくありました。確かに、秘書の中には、秘書職を議員への登竜門とする人もいます。では、秘書にならなければ議員になる道はないのかというと、さにあらず。
議員になるということは、立候補して当選しなければなりません。ならば手っ取り早く立候補したら良いようなものですが、いえいえ、それでは「政治」を知らなさすぎます。
国政選挙で勝つために必要なことは、先ず「政党の公認」を獲得することが挙げられます。「公認を貰う」ということは、その組織で「家臣」と認められたということ。公認がもらえると、戦に必要な物資は所属する組織、つまり政党から出してもらえるのも大きなメリットのひとつです。「公認料」等と称した軍資金、選挙の指南、組織的な応援、地元有力者の紹介、そして「名簿」も貰える。そう、国会議員になるためには政党の公認を獲得することを道標に準備を進めることが重要な始めの一歩なのです。国会議員への就職活動はここから始まります。因みに、「組織」に忠誠を誓い仕えるのが「家臣」であるのに対し、「家来」は「人」に忠誠を誓い仕えます。政治の世界で言うと「派閥」がこれに近いでしょうか。
さて、議員になることを山登りに例えると、どのルートで頂上を目指すのかを決めなければならなりません。
初めに決めなければならないのは、
・政党はどこか
・公認を取るのか、無所属で挑むのか
・選挙区を優先するのか、どこでもいいから政党の公認が頂けるところを探すのか、
等々。
弊社にご相談にみえる立候補希望者の方で、たまにおられます、こういう方。「衆議院でも参議院でも構いません。地域もどこでもいいです。でも絶対に勝てる選挙区を探してください!」。
残念ですが「絶対に勝てる選挙区」は存在しません。それは候補者が創るものですし、政治は生ものですから「絶対」はありません。「絶対腐らない生もの」って、変でしょう。
空いている選挙区には理由があります。相手がめちゃくちゃ強い、それまで居た議員が何かの醜聞で辞職して所属していた政党のイメージが最悪になっている、などなど、どこかで聞いたことある様ないわく因縁付の城であることが多いものです。政党への大きな「風」でも吹かない限り、そこで当選するには時間がかかります。
出馬したい地域が決まっていても、既に各党の候補者が決まっていたらその地域から政党の公認を取り付けて出馬することはできません。仕えたい親分議員がいるならその親分に身を委ねるというのも有りです。行けと言われた選挙区で戦う。但し、前の候補者が木端微塵メッタ切りにされた戦場であったとしても、です。
さて、何はともあれ政党と選挙区が決まると、ここでやっと実践的な「就活」がスタートします。
「公認」を獲得し、もしくは無所属で戦うのだと決心して選挙区が決まったら、戦の火ぶたが切って落とされるその日迄しなければならない活動は数えきれません。
「私に一票を!」と選挙カーに乗って手を振り走り回るのは、国政選挙では「公示」の日から。公示日より前に「当選太郎を宜しくお願いします」というのは公職選挙法(公選法)違反。選挙のその日までは、政党の政治活動として政党の政策を訴える、ことが大前提となります。立候補者個人の活動ではないのですよ、と示さなければなりません。
ですから、普段私たちが駅前などで見かけるマイクを持つ人は「政党の政治活動」をしているのです。政党に所属しない「無所属」での立候補者が既成政党所属に比べて不利と言われるのはこの点も明らかですね。
公選法は戦争の反省から、「お金のある人も無い人も、平等に見解を訴えることができるように」との趣旨で、選挙期間と使うお金、配布物の枚数にも制限を設けています。公選法は、私たちの被選挙権が平等となるように作られたものなのです。
続き:空中戦・地上戦とは?
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