永田町の風物詩はいくつもあるが、毎年不評を買っているのが「年末の新党結成」である。国から各政党に支給される政党交付金が、毎年1月1日を基準日としていることから生じる現象だ。あからさまな〝駆け込み新党〟は、今年も小規模ながら結成されたが、そもそも、なぜ政党が堂々と税金をもらっているのか、どういう基準で支給されているのか疑問に思っている人も多い。政党交付金の歴史、制度はどんなものなのか。
誤解を恐れずにいえば、政党交付金は「税金を支給するから、強引な『金集め』はやめなさい」という趣旨から編み出された制度である。
1980年代後半から90年代初頭にかけ、日本政界は汚職まみれだった。政治資金に関する規制が非常に緩く、企業・団体献金の上限は「ない」に等しかったからである。
バブル景気とともに、政治家の「錬金術」も加速し続け、リクルート事件や東京佐川急便事件などの政治腐敗(当時はこの言葉がよく使われた)が次々に明るみに出た。国民の政治不信は極限に達し、いつしか日本政治の最大の課題は「政治改革」(小選挙区制導入が主眼)となり、このうねりが93年の細川連立政権樹立につながった。
一連の「政治改革」のうねりは、実際に日本政治の有り様(よう)を変えた。小選挙区制の導入に加え、政党交付金という新たな発想も生まれたのだ(政治資金規正法も94年と99年に改正され、企業・団体献金には上限などが細かく設けられた)。
92年12月に自民党がまとめた「抜本的政治改革の基本方針」の中に、すでに今日に至る政党交付金制度の原型が示されている。
以下、要点である。
(1)政党への公的助成、政治活動への公費負担の拡大により、政治家個人の資金調達の負担軽減を図るための「政党交付金制度」創設
(2)総額300億円以上(国民1人当たり250円)を各政党の議員数、選挙での得票率に応じて分配する
いずれも、現在の政党交付金制度で維持されている考えである。この後、国会審議や修正などを経て、政党助成法が94年に成立し、95年1月1日から施行された。今日も、政党交付金制度はこの「政党助成法」によって定められている。
では、政党交付金はどのように配分されるのか。一言でいえば、総務省が「議員数」と「得票数」に応じて割り算を行い、「政党」に対してのみ配分される。
ここでいう政党とは、
(1)国会議員が5人以上
(2)直近の国政選挙での得票が全国の有効投票総数の2%以上
このどちらかの条件を満たしていなければならない。
よって、地域政党や任意の政治団体などには配分されない。いわゆる「国政政党」だけが享受できる特権だ。基準は、各党の1月1日時点での「人数」、「直近の得票」となる。総務省から各党に対しては、現金で年4回(4月、7月、10月、12月)振り込みが行われる。
2015年の政党助成金の支給額は、自民党が約170億5000万円、民主党が約76億7000万円などとなっている。総務省はホームページで各党への支給総額を公表している。
ちなみに、共産党のように政党交付金制度に反対して、受け取りそのものを拒否している政党もある。
さて、今年も残すところあとわずかだが、案の定、政党交付金目的と批判されても仕方がない〝駆け込み政党〟が結成された。
維新の党を離党した小沢鋭仁元環境相らが12月21日、新党「改革結集の会」を結成したのだ。5人のメンバーはいずれも、維新の党の出身者である。小沢氏らは21日の記者会見では「立ち位置は保守系改革路線だ。是々非々で建設的な議論を行っていく」と語った。新党「改革結集の会」は、来年中に約1億円前後の政党交付金を受け取ることになる。
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