来年夏に「衆参ダブル選挙」があるかもしれないとの見方が広がっている。だが、今回の騒動をみていると、ダブル選挙はない、とみるのが正確な現状認識だろう。
「また、(衆参)同日選挙について、選挙、衆議院選挙についてはですね、全く考えてはおりません」
報道陣から、来年夏の「衆参ダブル選挙」の可能性を聞かれた安倍晋三首相は12月5日、視察先の岩手県一関市でこう答えた。
そもそも、衆院の解散という首相の専権事項に関し、当事者が〝本音〟を語ることは考えにくい。
しかし、質問数が2問、場合によっては1問に制限されるぶらさがり取材で、報道陣がわざわざダブル選挙について聞いている事実は見逃せない。
大手メディア幹部の話を総合すると、複数の報道機関は、ダブル選挙が行われる前提で準備に入っている。安倍首相へのぶらさがり取材で出た質問は、政局報道に熱をあげる「大マスコミ」の冷やかしでも何でもない。
ダブル選挙をめぐる加熱気味の報道は、この日の安倍首相の発言を境にいったんは沈静化した。それでも、今後も政局の節目で大きな焦点となるのは間違いない。
以下、ダブル選挙がささやかれている根拠を整理してみる。
おおむね、この4点がダブル選挙の主たる根拠、理由となっている。
いずれも、十分にあり得る話であり、説得力もある。これらの根拠を正当化するかのように、自民党幹部が次々に「ダブル選挙があるかもしれない」と発言したことも今回の騒動を拡大させた要因といえる。
一方で、これだけ説得力ある根拠、理由が網羅されると、誰もがダブル選挙を警戒し、一向に進まない野党再編が急に動き出す可能性も出てくる。
となると、安倍首相は逆にダブル選を仕掛けにくくなる。当然、サプライズ感も薄れる。選挙で大事なのは、何よりもサプライズであることを知っているのは安倍首相その人である。
さらに、ダブル選挙が騒がれ続けると、「マイナス面」「正当性の有無」についての言説が増えていく。選挙を頻繁に繰り返すことを世論は必ずしも支持していないからだ。ダブル選挙に慎重な公明党が強くブレーキをかけることも容易に想像できる。
よって、2015年12月時点では「ダブル選挙はない」と見るのが正確な認識である。もっというと、安倍政権が「ダブル選挙が本当にあるかもしれない」と世間、メディア、永田町に思わせることに成功したとみるのが無難である。
では、ダブル選挙があるかもしれないと思わせると、どういう効果があるのか。
自らの求心力を高め、敵を疑心暗鬼に陥らせることである。実際、与党でも野党でもそういう現象が起きている。
順調な政権運営を行う安倍首相の「余裕」を随所に感じざるを得ない。ダブル選挙騒動の真相はその辺にあるとみていいだろう。
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