11月22日に投開票された大阪府知事・大阪市長のダブル選挙の選挙活動の最終日にあたる21日、たまたま京都に用事があったので東京から日帰りで各陣営の様子をウォッチしてきた。その様子を、写真を交えながらレポートして、選挙の楽しみ方の一例を紹介したい。
候補者や応援者の演説が何時にどこで行われるか、については状況次第で逐次変更され、キャッチアップするのは至難だったが、インターネット、特にSNSの発達以降、即時性のある情報が移動しながら手に入れることができるようになったので、選挙ウォッチャーにはスマートフォンと各SNSのアカウントは必須だ。
今回、大阪維新の会から出馬した知事候補の松井一郎氏、市長候補の吉村洋文氏の日程は毎日大阪維新の会のwebページに掲載されていた。自民党推薦候補であった知事候補の栗原貴子氏、市長候補柳本顕氏についてもそれぞれのwebに掲載があったのでそれを参考に候補者を追うことができた。
ただ、いわゆる「主要候補」以外の候補者の動きについてはその動きをとらえるのが難しい。府知事候補の美馬幸則氏に関してはtwitter、facebookアカウントが確認できず動きがつかめない。独自で取材しているジャーナリストの方々が情報をあげてくださっていたが、話を聞くことは日帰り旅行ではかなわなかった。市長候補の中川暢三氏はSNSアカウントがあったが政策の主張はあるものの、日程については言及がない。そこで…
直接コミュニケーションがとれるのがSNSの利点。大体の場所が確認できた。同じく市長候補の高尾英尚氏についてはtwitterの公式アカウントは見つからなかったものの、「高尾英尚名言bot」なる、候補者の情報を発信しているアカウントが見つかったのでダメモトで@を飛ばしたところ、丁寧に教えてくれた。
スクリーンショット取得時にはFacebookに掲載されていた日程の画像が削除されていたので、Facebookからの転載がこちら。
これで要素がそろった。限られた時間内で大阪市内を動き回りながら、1人でも多くの候補者の話を聞き、ビラを受け取り、集まっている有権者の反応をどこまで観察できるか、というゲームのスタートだ。
京都での用事を済ませ、久々に会う大学時代の友人との昼ごはんの場所を大阪駅の一駅先の天満駅近くに設定し、14:00からの柳本氏の桃太郎街宣(複数名で練り歩く形式の選挙活動)に備えた。鶴橋風月のお好み焼きをかきこんで友人と別れたのち、天六交差点に向かうも、時間になっても陣営は現れない。土地勘のない場所で動き回るとこのようなリスクが付いて回る。
iPhoneのGoogle Mapを頼りに音がする場所を探す。そう、選挙運動はだいたい騒がしくマイクを使って候補者名を連呼しているので、耳をすませばだいたいの位置が補足できる。大通りから一本入ったアーケードで桃太郎している柳本陣営を見つけた。
選挙ウォッチングに出かけて候補者を見つけることができた瞬間は、なんとも言えない興奮があるものだ。
この街宣では大阪市元助役で弁護士の大平光代氏と、建築家の安藤忠雄氏も同行していた。大平氏は柳本氏と同様に白地に青字で自身の名前と、赤字で「応援団」と書かれたタスキをかけて柳本氏の近くを歩いていたのに対して、安藤氏の方は柳本氏と距離をとるように少し距離をとって歩いていたのが印象的だった。
有権者の方から候補者に握手を求める様子はほとんど見られず、全体的に反応は今ひとつに見えた。
天満での桃太郎街宣を後にして、鶴橋で予定されている栗原候補の街頭演説に向かう。
駅に着くと、若干年配の方々がノボリやプラカードを掲げて駅前の横断歩道の脇で栗原・柳本の名前を連呼している。よく見るとその中の何人かが来ているジャケットにJCPの文字が見つけられたので、日本共産党(Japan Communist Party)の応援団であることがわかる。青いジャケットを着た一団(おそらく自由民主党のスタッフ)が街頭演説のために陣取っていたのはその横断歩道から30mほど離れた場所だったので、その距離感がうかがい知れる。
本人の到着まで少し時間があったので、鶴橋のコリアンタウンを散策して、ホットック(屋台で売っている焼き菓子)を食べたり、東京ではなかなか見られなくなった非チェーン店のゲームセンターに興奮したりした。選挙ウォッチングで各地を回っていると、知らない街の魅力に触れる楽しみも味わえる。
演説開始予定時刻の15分ほど前に現地で待っていると、一台の街宣車が通り過ぎた。「投票率ゼロパーセントを目指しましょう」「選挙に立候補するような非常識な連中は〜」外山恒一氏だ!選挙ウォッチャーにはおなじみだが、ご存知のない方に簡単に説明すると、2007年の東京都知事選に出馬し、強烈な政見放送が話題となった「ファシスト」を自称する政治活動家で、その後も九州を拠点に独自の活動を続けている。今回の選挙でも街宣車を回していることは知っていたが、目撃できるとは思っていなかったのでラッキー。
その後、栗原氏が5分ほど遅れて到着。聴衆の数はあまり多くなく、「都構想、本当にもう一回やるんですか?」との問いかけに「やるぞ!」といったヤジが飛ぶ散々な状況。マイクは応援弁士の遠藤オリンピック・パラリンピック担当大臣にバトンタッチされたあたりで中座しようと駅に向かう。
すると、先ほどの共産党の応援団の一人、80歳くらいの女性にビラを渡され、話しかけてもらった。「さっきまで話していた栗原さんって方、是非よろしくお願いします。」僕の方は魔がさして、「今しゃべっているのは安保法を通して、辺野古に基地を作って、社会保障費を削ってる安倍政権の大臣ですよね。普段は共産党を応援してる立場から、どんな気持ちで応援してるんですか?」なんて酷な質問をしてしまい、言葉を詰まらせさせてしまった。
そもそも住民でもない自分が、いろいろな思いのなか長時間ビラを撒いて声を上げている、知らない土地のおばあさんを苦しめることは全くもって本意ではないことに気づいて「複雑な思いだと思いますが身体に気をつけて頑張って下さい。」と声をかけて立ち去ろうとすると、泣きながら握手を求められた。選挙の現場には様々な人が様々な思いで関わっている。マスメディアやインターネットでは伝わってこないリアリティーが染みてくる。
次回、後編では維新の会の2候補と「主要候補」に含まれなかった候補を取り上げる。
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