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『ザ選挙』は『選挙ドットコム』へ

2015/7/8

高橋 茂

高橋 茂

■『ザ・選挙』から9年

2006年7月。日本インターネット新聞社による『ザ・選挙』がスタートしました。日本初、全国すべての選挙をデータベース化するプロジェクトの始まりでした。

私は、このデータベースのシステム・データ設計の一部を担当しました。そのときは、まだ選挙や政治家について詳細に知っていたわけではないので、実際に動かしてみるまではどんなデータベースになるか予想するのは難しく、実際データを入れ始めてから細かな部分での修正を余儀なくされました。データ入力担当者は、かなり大変だったと思います。

設計を始める前、故竹内謙日本インターネット新聞社社長と総務省に行き、「全国の選挙データはこちらにあるんですか?」と聞いたところ「ありません」とあっさり言われました。私たちが「日本全国のすべての選挙データベースを作りたいんです」と言ったところ、「それは無理でしょうね」との返事でした。

帰りのタクシーの中で、竹内さんは嬉しそうでした。「総務省が出来ないということは、俺たちがやるということだからな」と。

データベースが完成しても、オープンまで半年ほど時間がかかりました。「オープンしてもデータが無ければ見に来てもらえないからな。ある程度揃えてからスタートしよう」という竹内社長の意向でした。

『ザ・選挙』スタート後、スタッフは出来る限りの過去データを発掘しながら、毎週日本のどこかで行われる選挙をデータベース化し続けました。当時は選挙データをウェブサイトに公開している自治体は少なくて、選管に電話をかけても「は?ザ・選挙?」と相手にしてもらえないことも多く、まずサイトの説明をしてからデータ提供を選管に「お願いする」ことがしばしば行われていました。

翌2007年には統一地方選挙が行われ、『ザ・選挙』は最初の山場を迎えました。2009年には政権交代が行われた衆院選、大きな選挙では一気に10倍以上のアクセスが殺到しました。

ところが、2010年3月に『ザ・選挙』は更新をストップしてしまいました。これは運営会社の日本インターネット新聞社が、経営難から休業状態となったためでした。その半年以上前に私はサポートから離れていましたが、今思えばもっといろいろできたのではないかと思っています。自分の力の無さを痛感しました。

■『ザ・選挙』を引き継ごう

そして夏が過ぎたころ、「『ザ・選挙』の引き継ぎ先を探している」と聞き、「これは自分が継ぐべきだ」と思い立ちました。私の周りで「休止は残念だ」「いつも見ていたのに」「もったいない」という声をいくつか聞いていたので、絶対に再開させるべきだと思ったのです。

私は竹内さんに直談判しました。同じ時期に引き継ぎを希望しているところがあったため、判断は年末ギリギリになり、竹内さんは「高橋君に任せるよ」とおっしゃってくれて、私が『ザ・選挙』の全てを竹内さんから譲り受けました。私が後継者に決まった理由は、「志が同じ」だったからです。

そして2011年3月を迎えました。

名前は『ザ選挙』として『・』は取りました。これは検索するときに余計なことを考えなくても良いようにと思ったからです。そして、とりあえず以前の『ザ・選挙』のデータベースを再稼働させることに全力を注いで、新たなデータを入力できるようにしました。サーバーは本格的なものを導入し、それだけで毎月50万円ほどしましたが、それでも初代『ザ・選挙』に比べればかなりコストダウンできていました。

takahashi_shigeru2011年3月3日:『ザ選挙』オープン

2011年3月11日:東日本大震災

日本中が一気に暗くなりました。実際は西日本の選挙にそれほど影響はなかったのですが、それでも選挙カーが自粛されるなど、「こんな時期に選挙をやっている場合か」という雰囲気が蔓延していました。このとき自分の中で「これはヤバい」という気持ちが出始めていました。想定していたほど会員も広告収入も無かったからです。それが震災のせいでないことは自分が一番良く感じていました。毎月、今まで経験したことのない額の経費が出て行き、今までの無根拠な自信はどこへやら、それからしばらくは辞める言い訳ばかり考えていました。

その後、コストダウンも進み、Googleへのデータ提供や他事業が好調だったこともあり、会社としてはそれほど大きな損失は無かったので、2回ほどのデータベース入れ替えやリニューアルを行いました。昨年スタートした『モギ投票』はおかげさまで好評で、どんなに小さな選挙でも投票する人がいます。SNSでのシェアも行われています。会員も少しずつですが増えてきています。

■大事なのはデータベースの更新 でも・・・

データベースは試行錯誤してきましたが、まだまだ「これがベスト」という状態になっていません。想定できないトラブルは今でも起きます。その都度イレギュラーとして対応させるのか、標準のデータ構造としてシステムに組みこむのか、毎回難しい判断を強いられています。

2012年衆議院選挙、2013年参議院選挙そして2014年の衆議院選挙は心身ともに疲弊しました。データ収集や入力はスタッフまかせなのに、なぜか寝る時間がなくなるのです。最も辛いのは、面白いネタが転がっている選挙なのにもかかわらず、データを貰うための各政党まわり、臨時スタッフの雇用やサーバー強化、運営体制の見直し、他社との折衝などで忙殺され、気がついたら選挙が終わってしまうことです。

そして今年2015年、私は昨年末からかなり憂鬱になっていました。「はたして統一地方選挙を乗りきれるのだろうか」「データを入力し終えるのはいつになるのだろうか」。衆院選の疲れもあり、今までの反省、そして統一地方選後のことを考え込んでいました。

ひとつ思ったのは、「今後『ザ選挙』を運営していくのは自分ではない」ということでした。

4年前の自信はかなり萎みましたが、まだやりたいことはたくさんあります。ネット選挙が解禁されても、それは単に今までできなかったことができるようになったに過ぎません。候補者も有権者も、まだまだネットを十分活用していない。来年からは18歳に選挙権年齢が引き下げられ、200万人以上の新有権者が誕生します。

やりたいことはいっぱいあるのに、自分の会社の業務に振り回されてしまって、なかなか全身全霊取り組むことができない。「これでは中途半端なまま終わってしまう」と考えていました。おそらく他の業務をどんどんスタッフに任せて、自分にしか出来ない取り組みを行うべきだったのかもしれませんが、それが出来ず、何にでもクビを突っ込んでしまうのが「経営者に向いていない」と言われる所以だったのかもしれません。

■『ザ選挙』は『選挙ドットコム』へ

「『ザ選挙』は、もっと大きく展開させないとダメだ。記事も多くして新しい試みを入れていかないと、いずれ立ちいかなくなる。でも、それができるのでは俺ではない」そんなことを、友人の選挙プランナー松田馨氏に話したところ、株式会社ジェイコスの高畑卓社長が選挙メディアの立ち上げを検討していると聞きました。

高畑氏とは酒を呑みながら語り合う仲ですが、そのとき「彼なら大丈夫かもしれない」と思いました。私に決定的に足りなかったのは、アイデアを実現するための組織構築力であり、所詮はいちエンジニアだったわけですが、彼はウェブコンサルティングの豊富な知識と経験があり、すでに社員を抱えて結果を出している企業経営のプロだったからです。昨年の「ネット選挙フォーラム」を企画し、実現させた手腕も高く評価していました。

高畑氏は全てを一人でやるということは考えず、組織運営は自分がやるけれど、メディア・広報は若き実力派選挙プランナーの松田馨氏が担当し、システム構築は元静岡大学大学院准教授で選挙・政治関連のシステム・アプリケーション開発の専門家である佐藤哲也氏が担当するというトライアングルを考えていました。

ビジネスは蓋を開けてみないとわかりませんが、最初から無謀に突っ込んでいってはダメで、短期間で必要な態勢を作り、あとはタイミングを間違えずに成功を信じて行けば、運が味方してくれると私は思っています。来年の参院選に間に合わせるのは、ちょうど一年前の今がベストでしょう。

私自身は、現在でも2つの会社を運営しており、状況としては2011年の1月に戻るわけですが、選挙ドットコムにもこれから関わって行くことになります。選挙情報をもっと有権者が関心を持てる形で出して行き、「選挙を変える」ことに少しでも役に立てればと思っています。そして「投票率を上げて、よりまっとうな政治家を選択できるようにする」という、竹内さんと夢見た当初の理想に向けた取り組みを続けるのです。

結局、やることは増えるかもしれません。でも、頼もしい仲間が3人もできて、こんなワクワクすることはありません。大きな柱となるデータベース構築も、今まで中心となり尽力してきた横内陽子さんが引き続き担ってくれることになりました。彼女がいなければ『ザ選挙』はここまで来ることなく潰れていたでしょう。最強の布陣が出来上がりました。

『ザ・選挙』が『ザ選挙』となり、『選挙ドットコム』にバトンを渡すことができたことは、本当に嬉しく自分も生まれ変わったような気持ちです。1年後に、「なんだよ、もっと早くこうなっていれば良かったなあ」と笑って乾杯できるよう、私も側面からのサポートを行っていきます。みなさまの多大なご支援を、よろしくお願いいたします。

 

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高橋 茂

高橋 茂

2000年、電子楽器のエンジニアから政治とインターネットの世界へ。政治家のネット活用をサポートするVoiceJapan社を経営する傍ら、講演、執筆も行う。武蔵大学非常勤講師。選挙ドットコム顧問

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