
インターネット選挙運動解禁に向けた「One Voice Campaign」のイベント、「One Voice サミット」が、23日午後6時より永田町の衆議院第一議員会館のホールで開催された。
主催は「One Voice Campaign実行委員会」。構成メンバーは、ブロガーや編集者、学者から、学生団体の代表、さらにネット関係の企業など。開催日までのおよそ1ヶ月間、20代から30代の学生や社会人20人程が、手弁当で作業をおこなってきた。
このキャンペーンは、昨年3月3日に再オープンした『ザ選挙』の1周年記念として企画された「ネット選挙運動解禁への取り組み」がきっかけとなった。
長らく解禁を叫びながら、なかなか実現しない現状を打破しようとするこの試みに、同じく行動を検討していた「Good Net Voting」呼びかけ人の佐別当隆志氏、学生団体「ivote」創設者の原田謙介氏、編集者の江口晋太朗氏などが呼応、コンテキスト・デザイナーの高木新平氏がコンセプトメイキングを行い、「One Voice Campaign」がスタートした。

この「One Voice Campaign」は完全にフラットで、指示系統というものが存在しない。Facebookのグループ機能を駆使し(25日時点でのメンバーは90人を越えている)、誰かが提案や問題を投げかけ、関係する人が自分で手を挙げて作業を進める。いくら提案しても、自分で動かなければ何も進まないので、基本的には「言い出しっぺ」が、その後の進捗に責任を持つことになる。
「拠点」のひとつとなった「ザ選挙」編集部では、連日のように終電ぎりぎりまで会議とイベント準備が続いた。実行委員たちの熱い思いが結実した、当日の様子を以下にレポートする。

「One Voice サミット」は2部構成で行われた。最初に編集者の江口晋太朗氏から本キャンペーンの趣旨説明があり、続く第1部では、ネット選挙運動の現状や海外事例などの紹介を『ザ選挙』の高橋茂氏と選挙プランナーの三浦博史氏が担当、第2部では国会議員7名を招いてのパネルディスカッションと、参加者との質疑応答が行われた。コーディネートはメディア・アクティビストの津田大介氏と、キャンペーン発起人でもある原田謙介氏。

高橋氏によれば、日本における「ネット選挙運動解禁への長い道のり」は、1996年、新党さきがけが自治省(現総務省)に質問をなげかけたところから始まる。これに対し、自治省は「ホームページは文書図画にあたる」として、選挙期間中のネット使用は違法の可能性が高いという見解を示した。その翌年、超党派で初のインターネット研究会が開催、同年、民主党が公職選挙法の一部を改正する法律案を衆議院に提出、国会内での取り組みが始まった。
その後、自民党が2005年の郵政選挙でネット選挙運動解禁に取り組むことを発表。民主党は2009年に、政権交代に向けた衆院選のマニフェストでネット選挙運動解禁をかかげた。2010年、参院選前に与野党合意まで至ったものの成立せず、現在も足踏み状態が続いている。大きな動きは昨年の震災後、総務省が被災地での選挙においてネット活用を奨励、選挙公報のウェブ掲載を許可し、今年に入り、選挙公報を自治体のホームページに掲載することを認める通知を全国の選管に提出。次期衆院選から選挙公報のネット掲載を行うことを発表した。まず総務省が一歩踏みだしたといえる。
一方、民間の取り組みは、2005年の東京商工会議所による意見書提出、ヤフーのネット署名運動や、社会学者の宮台真司氏など個々人のロビイング活動など。こうした個別の動きがなかなかリンクしていないというジレンマをかかえているのが実情だ(参考:インターネット選挙運動解禁に向けた動き)。

「ネット解禁というけれどネットが規制されている国は、日本と共産圏のごく一部」と口火をきった三浦氏は、韓国やアメリカの事例を紹介した。その一例として、2002年大統領選でノムヒョン氏を勝利に導いたといわれるネット活用に、その後規制が入るが、昨年、違憲であるとして全面解禁となり、投票日のツィッターもブログも含め、SNSはすべて認められていると説明した。
「ネット選挙運動解禁に向けてできること」と題した第2部のパネルディスカッションでは、公明党衆議院議員遠山清彦氏、みんなの党参議院議員松田公太氏、自民党参議院議員世耕弘成氏、民主党衆議院議員石井登志郎氏、社民党参議院議員福島瑞穂氏、共産党参議院議員井上哲士氏、民主党参院議員鈴木寛氏、いずれもネット選挙推進派の計7名(登場順)が参加、津田氏と原田氏が進行役となった。

冒頭の挨拶で、津田大介氏は、「もう、とっととネット選挙を解禁しましょう」と発言、今回のキャンペーン発起人でもある原田謙介氏は「政治家を決める選挙について、現在の仕組み自体が時代にそぐわないのに、このままでいいのか。このイベントの後も、声をあげ続けたい」と語った。
次に津田氏より、おおよそ4つの論点があげられた。

これに対し、世耕氏は「(ネット選挙解禁を)なんとなくつぶしていく人がいる」、「それを皆さんで暴きだしてほしい」とし、反対側の理由として「誹謗中傷の危険、またデジタルデバイドの問題」等をあげ、これに対して10年近く工夫をしてきたと語った。
遠山氏は「2年前に一度は全党合意したのだから、前回合意したところまでは異論はないと確認し、フェイスブックなどの新しい進展をふまえつつ、1票の格差問題などと切り離して優先的にやってほしい。民主党執行部がやろうと決めたらやれるのでは」と語った。

これに応じ、津田氏の「民主党は90年代の終わりから推進派ではなかったのか。政権交代したら反対勢力が出てしまったのはなぜか」との質問に対し、鈴木氏は、国体ベースだと切り離しが難しいところがあると述べた。さらにネットメディア上の生の声と、新聞・テレビを見て、それが「世論」だと思っている人との間には乖離があり、残念ながら後者のほうが国会の政治力学を動かしているという状況があると説明した。
石井氏は「反対しているのは、その人の性格上の問題」で、「ネット書き込みをみてふさぎ込んでしまうような人」であり、「政治家は、(人間の)いじわるな部分がネットに出ているという仮説をもっているのかも」と語り、皆さんが議員に応援メールを送れば変わるのではと述べて会場の笑いを誘った。

福島氏は「(2年前の法案提出で)どの党も賛成していたのだから反対は出来ないはず」、「去年の震災の折、多くの情報をネットやツイッターで得たし、いろいろな意見を見ることも出来る」と述べ、「韓国のように民主主義のツールになればいいなと思う」と語った。また「活字しか見ない国会議員へのアピールも必要」と発言した。
津田氏は、「解禁賛成派は、ツイッターを勝手に更新してみては?」との投げかけに、鈴木氏は「僕は来年やりますよ」と答えると、会場から盛大な拍手が起こった。

井上氏は「この問題について、我々の中での優先順位も、国民の声もダウンしてしまった感がある。」とし、一方で「みんなが参加できる選挙のあり方に答えられるかどうかが国会にも各党にも問われている、という世論が押し寄せれば、変わる。」と述べ、一緒に大波をつくりたいと語った。井上氏は、昨年総務省に質問し、被災地での選挙において選挙公報のホームページ掲載を容認する見解を引き出した。

唯一、前回の法案に参加していなかった松田氏の「前回の法案を見ると一般国民が参加できない形になっていて、これをこのまま通しても意味がないのでは」との意見には、世耕氏から、「あれをスタート台にするのはレベルが低すぎる。ほぼフルスペックで解禁としている自民党案をベースに、フェイスブックなどの新しい動きをふまえた中身にしてもらったほうが話が早い」と答えた。また選挙中の誹謗中傷に対しては「プロバイダ責任制限法で、書き込み者から返信がなければ、現行の7日から短縮して2日で削除出来るという対策を入れている」と述べた。

また、会の後半では、このメンバーが全党協議会を開く事を約束した。松田氏からはさらに進んで、「(いつまでに法案を出すのか)納期を決めたい」との意見が上がったが、民主党の石井氏は「この通常国会までで最大限の努力をしたい」、世耕氏は「一回、党内手続きを終えているので、その法案をベースにしっかりやっていきたいし、いつでも出せる状況だから大丈夫」との発言にとどめた。
遠山氏は「今国会の最後までに、とにかく出す」とし、「SNSは双方向の、誰でも参加できる口込みツール」であり、「僕は日本の民主主義の発展にプラスになるのがSNSであるとずっと言ってきている。私も我々の党も役割を果たしていきたい」と結んだ。

津田氏は、遠山氏が自分宛のメールをスマートフォンで全部見ていることを取り上げつつ「みんなの声が政治家にどのように伝わっているのかを可視化していくことが大切だと思う」とまとめた。また原田氏は「このイベントの第2回を夏頃までにやりたい」と発言、今後の動きにつなげていくという強い意志をみせた。
最後に、若者の投票率向上を目指す学生団体「ivote」代表の北麻理子氏から「今後のOne Voiceキャンペーンについて」の説明があった。「100時間いいね!チャレンジ」と題し、23日20時から100時間後までのあいだ、数万規模のネット署名を集め、ネット選挙運動解禁実現を推進しようとする内容だ。この結果は永田町議員たちに届けるという。


この日、定員150名ほどの会場に200名以上が来場し、立ち見も出た。ニコニコ動画とUSTREAMのネット中継観覧は2万人以上に上った。さらに新聞・テレビなどマスメディアの取材も行われ、「活字やテレビ」で情報を得る国会議員や有権者にもアピールする形となった。

(横内陽子)
当日の写真は、Facebookのアルバムにアップしました。
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