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年間6,600万円も使われている高齢者祝い金。現職議員が実施した世論調査を議会へ提出|リサーチコム × 伊藤新宿区議

2018/3/13

寺崎 倫代

寺崎 倫代

「電話調査」と言えば、選挙の前に「A党の支持率は◯%、B候補者の当落は…」と、情勢動向を調べるものだというイメージが強いかもしれません。しかし、オートコールや自動集計システムといったテクノロジーの発達により、これまで数百万円かかっていた電話調査も、今では10万円程度の金額規模で手軽に実施できるようになり、政務活動費を使い、普段の議会活動で活用する方も増えています

今回、選挙ドットコムでは最先端を行く議員の一人である新宿区議会議員の伊藤陽平氏に注目。議会での発言内容をより説得力のある内容にするためには、どのように電話調査を実施するのか? 調査結果は具体的にどうやって議会での発言に落とし込んで行くのか?  伊藤氏の取組みを取材しました。

なお、今回の調査はこれまでも選挙ドットコムとの合同調査を行ってきたルーシッド株式会社の電話調査サービス「リサーチコム」の協力のもと、実施。最後に伊藤氏とルーシッド社の執行役員COO・四方氏とで、一連の流れを振り返ります。

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見直しを迫りたい福祉政策。対する新宿区民の“リアルな民意“とは・・・?

2015年に無所属で新宿区議に初当選した伊藤陽平氏。伊藤氏は、過去にも公務員給料の金額の妥当性や、韓国人学校の増設問題について政務活動費を使って世論調査を行い、問題提起をするなど積極的に調査を活用されてきました。

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「僕は無所属で、1人会派で議会活動しています。だから何かを主張する際に、それが『民意を伴っている』ことを表すにはこういった調査で世論を『可視化」することがとても有効なんです」そう語る伊藤氏が今回焦点を当てるのは、新宿区の福祉政策である「ことぶき祝金」と「ふれあい入浴」

「ことぶき祝金」は70歳に5,000円、77歳に7,000円、88歳に1万円、96歳に3万円を長寿の「祝い金」として支払い、合計で6600万円が毎年新宿区の予算から支払われています。また、「ふれあい入浴」は60歳以上の区民が月4回まで無料で銭湯に入れる入浴券のことを指し、こちらも毎年約2億1000万円が支払われているとのこと。

平均寿命の伸びに伴い“高齢者”の定義を見直す自治体が多い中、伊藤氏はこの現状に疑問を持ちました。そして「新宿区民も自分と同様に疑問を感じているのかどうか、民意を確かめたい」と調査を行い、以下のように結果を得ました。

■調査概要
調査手法:電話調査サービス「リサーチコム」(ルーシッド株式会社)
対象地域:東京都新宿区
回答件数:531件
質問内容:
(1)高齢者祝い金(ことぶき祝い金)の賛否
(2)高齢者祝い金(ことぶき祝い金)の給付年齢引き上げへの賛否
(3)銭湯無料券(ふれあい入浴)の賛否

(1)(2)の祝い金政策の賛否と引き上げの必要性については、どちらも「賛成」が約4割、「反対」が2割弱、「どちらとも言えない」が3割前後と賛成の傾向に。(3)のふれあい入浴に関しては、「賛成」は3割前後、「反対」も3割前後、「どちらとも言えない」も3割前後と賛否が拮抗する形となりました。これらの回答の傾向から、伊藤氏の当初の予想とは異なり、祝金や銭湯無料券の利用はある程度望まれていることが判りました

記事用のグラフ.001

また年代別で確認してみると、年齢が若くなるにつれ、反対が強まっている傾向があることが確認できました。

記事用のグラフ.002

〇調査結果(サマリー)
●祝金や銭湯無料券の利用はある程度望まれている
●年齢が若くなるにつれ、反対が強まっている傾向はある

この結果に対し、伊藤氏は「自分の想定していた方向とは異なってはいたものの、民意を確認できた意味は大きいと考えています。やはり、一度スタートした事業を廃止するのは容易ではない、ということです。」とコメント。
その上で、「今回の件で言えば政治参加に活発な高齢者の民意を取ることで、結果的にサイレントマジョリティである若年層へ負担が偏ってしまうという現実は、しっかりと考えていかないといけないと思います。すべての人の民意を反映した政治が実現できれば素晴らしいですが、現実は違います。民意を軽視するわけではありませんが、未来に責任を持つためには、単に民意を受け入れるだけの政治から脱却することが求められます。」と感想を述べました。
※サイレントマジョリティ:公の場で意思表示をすることのない大衆の多数派

調査結果をもとに、区議会で提言

これらの調査結果を受けて伊藤氏は、2月21日の新宿区・2018年第一回定例会代表質問にて、調査結果のダイジェストを伝えた上で、以下の質問を区長へ問いかけ、区長からの返答を得ました。

質問1.区民の要望に対して予算をつける、あるいは過去に行われていた事業を廃止できないということで、受益者以外の納税者を無視してはいけません。特にサイレントマジョリティと呼ばれる層の優先順位や声はどのようにお考えでしょうか。

回答1:区民意識調査やアンケート区政モニター制度などで無作為抽出で選定した住民に対し意見を伺っており、そこで施策に対する優先順位や声を把握している。また、区民討議会や、しんじゅく若者会議なども開催し幅広い意向や要望を集めている。

質問2.ことぶき祝金は廃止、または縮小すべきです。他自治体のように、平均寿命を考慮してせめて70歳77歳を外し、支給年齢を引き上げる必要があると考えていますが、いかがでしょうか。

回答2:超高齢化社会を迎え、支給対象者も増加傾向にあることから、より効果的な手法のあり方については課題として捉えている。

質問3.ふれあい入浴事業についても廃止、または縮小が必要だと考えます。
自宅にお風呂がない方、低所得の方など対象を限定する必要があると考えますが、いかがでしょうか。

回答3:公衆浴場は、地域住民の相互の交流促進のための貴重な場であり、公衆浴場の振興にも資するものであると考えていますので、事業の廃止や低所得者等に限定することは考えておりません。

【対談】伊藤陽平議員×ルーシッド四方氏~政務活動費の本来の目的は、調査である

今回の調査では、福祉政策を縮小して財政的な負担を軽減するより、「現状維持」を望む声が多く出るという結果に。伊藤氏はそのリアルな民意から「サイレントマジョリティ」という課題を見つけ出し、“ただ民意を受け入れるだけの政治”からの脱却を求めました。今回の一連の調査の流れについて、調査協力会社・ルーシッド社の執行役員COO・四方氏と共に振り返ります。

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-新宿区議会議員 伊藤陽平氏(以下、伊藤氏)
今回の調査で一番ありがたかったのは、福祉政策の対象である高齢者の方々のリアルな声を聞けたことです。僕は年齢的に若いので若年層にはリーチしやすいのですが、高齢者へのヒアリングは課題でした。

-ルーシッド株式会社執行役員COO 四方涼子氏(以下、ルーシッド株式会社 四方氏)
弊社の「リサーチコム」での調査に回答いただくのは、50歳以上の方が90%となっています。こうした年齢層が高い方は、投票に行く方も多く、普段から政治参加に積極的な層ですので、選挙や政策に関する調査では相性が良いんです。私どもも様々な地方選挙で世論調査を行っていますが、実際の開票結果と一致することが多いです。

-伊藤氏
それはかなり頼もしいですね。何か工夫されている秘訣はあるんでしょうか?

-ルーシッド株式会社 四方氏
整合性を高めるために様々な点で工夫をしていますが、例えば効率性の点で言えば、オートコール(人力ではなく機械で電話調査を行う方法)なので1時間1万件かけることもでき、大量のデータを迅速に・正確に集めることができます。また、朝夕など回答率の高い時間帯を狙ってかけることもできるので、さらに回答率が上がります。
伊藤さんとしては、今回の結果についてはどう感じられましたか?

-伊藤氏
今回の調査について言えば、「高齢者は現状の2つの福祉施策に満足している」という結果が出たと同時に、「若者ほど反対する傾向はある」という特徴まで出たのは良かったと思います。納税側のニーズと受益者側のニーズが合っていないという現実があぶり出せたのは大きいですね

また今回、副次的に良い効果だったと思う点は、「ことぶき祝い金に6600万円、ふれあい入浴事業に2億円が毎年使われている」という現実を、「調査の質問」という形を通してたくさんの人に知らせることができたことです。

-ルーシッド株式会社 四方氏
知らせることは、自分たちの地域の政治について考える機会にもつながる大切なことですね。
実はそういった使い方をされることも最近は広まりつつあります。例えば選挙の時も、単純にどこの政党を支持するか? だけではなく、例えば今、●●市では商業施設の建設のために、●十億予算をかけることを知っていますか?といったような事実を入れ、それに対する市民の反応を見る、などです。

-伊藤氏
確かに、マニュフェストを策定する際に、住民がどんなものを望んでいるかを掴んでおく手段としても活用できそうですね。その点で考えると、地域ごとで異なる反応になることも予想されますが、地域はどの単位までセグメントをかけられるのでしょうか?

-ルーシッド株式会社 四方氏
いわゆる市区町村でいう町村名単位まで集計できます。
なお、弊社ではこういった調査を政治家の皆さんが活用しやすいように、ホームページ上に質問のサンプルであったり、例えば民泊の是非など過去に弊社が自主的に取った調査の結果を掲載しています。
最近は政務活動費を使い、10万円程度で実施いただく方が多いですね。

-伊藤氏
それであれば政務活動費でも手が届きそうですね元々は「政務調査費」という名前でもあったのですから、こういった使い道が本来の姿なのだと思います。私も引き続き区政に貢献すべく、議会活動の質を高めるために電話調査を活用していきたいと思います。今回はありがとうございました。

-ルーシッド株式会社 四方氏
政治家の皆さんの議会活動向上のために、今後も電話調査を活用いただければと思います。ありがとうございました。

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寺崎 倫代

寺崎 倫代

早稲田大学商学部卒。その後、広告代理店等を経て外資系放送局で勤務。2017年会社を辞め、デンマークの成人向け教育機関・Folkehøjskole(フォルケホイスコーレ)に留学。特に民主主義など同国について学んだことを日本で活かすべく活動中。

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