選挙ドットコム

日本最大級の選挙・政治家情報サイト

全国20万人。3回の定点調査で見えていた「希望の党」の失速と自民党の圧勝。衆院選 情勢調査の裏側に迫る



寺崎 倫代
寺崎 倫代

選挙ドットコムでは先の衆議院議員選挙において、電話調査サービス「リサーチコム」のルーシッド株式会社と合同で、18歳以上の男女20万人を対象にした全国電話世論調査を3週連続で行いました。
【関連】第3回全国電話調査 比例投票予定 自民3割後半維持。立憲民主 2割弱の勢い続く。希望 3週連続で支持減らし当初の半減!  >>


今回の調査では、全国一律ではなく「比例11ブロック」に調査エリアを分け、さらに各都道府県別でサンプルを集計しました。全国11ブロックごとに調査分析を行うことで、より地域の特性が現れたリアルな情勢をお伝えできるよう努めました。衆院選期間中、選挙ドットコムには2,000万を超えるアクセスがありましたが、中でも情勢調査記事は大きな話題となりました。

今回は、大きな注目を集めた全国電話世論調査の「裏側」に迫るべく、電話調査サービス「リサーチコム」を提供するルーシッド株式会社代表取締役の今村玲子氏と、同社執行役員COOの四方涼子氏、選挙プランナーの松田馨(選挙ドットコム株式会社 取締役)の3名で鼎談を行いました。コーディネーターは選挙ドットコム編集長の増沢諒が務めます。

1

(ルーシッド株式会社代表取締役の今村玲子氏と、同社執行役員COOの四方涼子氏)







急な解散… 翌日には調査開始



-選挙ドットコム編集長 増沢 諒(以下、選挙ドットコム 増沢)
希望の党の惨敗と立憲民主党の躍進、そして自民党の圧勝という結果に終わった今回の衆院選でしたが、選挙ドットコムとルーシッド株式会社では3週連続で「毎週日曜日」に電話世論調査を行い、取材も加味した情勢分析記事を掲載してきました。今日はこうした世論調査の裏側に迫りたいと思います。よろしくお願いします。


-ルーシッド株式会社代表取締役 今村玲子氏(以下、ルーシッド株式会社 今村氏)
よろしくお願いします。多くの方に記事を読んでいただけたこと、嬉しく思います。選挙ドットコムさんと共同調査の打ち合わせを9月中旬に行っていた際には「解散は年末ですよね・・・?」と話していたのを覚えています。ですが、翌週に急遽解散が決まり、大急ぎで準備に取り掛かりました。

5



- 選挙プランナー 松田馨
衆院選は、他の選挙と違って任期中に解散があるため「いつ選挙が行われるか」が直前まで分かりません。今回の衆院選も解散時期については12月説や年明け説もありましたし、9月28日の解散が決まってからは、とても慌ただしかったですね。



-選挙ドットコム 増沢
急な解散にも関わらず「全国20万人を対象に、11ブロック別で、都道府県ごとにサンプルを取ってほしい。しかもすぐに」というこちらの無茶な要求に答えていただき、ありがたかったです。おかげさまで、速報記事も出せましたし、毎週日曜日に電話調査を行い翌日には集計結果をもとに選挙ドットコムが取材で得た情報を加味して、数値の補正や分析を行い、記事として掲載することができました。



-ルーシッド株式会社執行役員COO 四方涼子氏(以下、ルーシッド株式会社 四方氏)
ありがとうございます。今回の衆院選で多くの方に調査結果を見ていただけた理由の1つに、「スピーディーに調査・集計・分析を行えた」という点もあったかと思います。

毎週日曜に調査を行っていましたが、いちばん大変だったのは、実は10月1日に実施した第1回調査でした。調査前日の30日(土)の夕方に、小池都知事と松井一郎大阪府知事が会談を行い、小選挙区では大阪・東京で候補者の擁立を調整することを急遽発表しました。11ブロック別での調査でしたので、該当するブロックでは速やかに電話調査のスクリプト(調査文言)の変更を行いました。





3回の定点調査から見えた「希望の党」の失速と自民党の安定感



-選挙ドットコム 増沢
解散後は毎週政局の大きな動きがありましたから、急なスクリプトの変更にスピーディーに対応していただき、とても助かりました。

今回は定点調査によって、毎週各数値が変わっていく様子が明らかになり、私も見ていて興味深かったです。当初は注目されていた「希望の党」は第1週調査(10月1日実施)では「比例代表においてどの政党に投票しますか?」との質問に対して、25.30%の支持率でした。しかしその後、「排除」発言が大々的に報道で取り上げられ、10月3日に立憲民主党が結党された影響などもあり、第2週調査(8日実施)では17.25%と、実に8ポイントも急落しました。

001hire

(「比例」での投票予定の推移)



一方、「立憲民主党」の上昇傾向も見てとれました。立憲民主党への期待感は毎回の調査で上昇し、「比例代表においてどの政党に投票しますか?」との質問に対して立憲民主党と回答していた人は、投票の1週間前だった第3週調査(15日・16日実施)では約18%まで上昇し、希望の党を上回っていたのが特徴的でした。



- 選挙プランナー 松田
今回の衆院選は、稀にみる混乱の総選挙だったと思います。小池都知事が希望の党を立ち上げ、民進党の合流・連合の支援が報道されたときのインパクトは大きかったですし、そこから「排除」発言の影響や立憲民主党の結党などによって支持を失い、反比例するように立憲民主党が支持を高めていったのが印象的でした。そうした野党側の混乱を尻目に、自民党はきっちり支持層を固めて手堅く勝利したわけですが、定点調査による情勢報道記事は、こうした政局の動きに有権者がどう判断しているのかを知る上で、現場でもとても参考になりました。

記事では「人気投票の公表の禁止」に配慮して、年代別や支持層別のクロス集計の結果などはあまり書かれていませんでしたが、そのあたりはどうでしたか?



-選挙ドットコム 増沢
「普段、国の政治で支持している政党」に関する回答と、「比例代表での投票意向」をクロス集計して見ても、興味深い結果が見えていました。特定の支持政党を持たないいわゆる「無党派層」からも自民党は一定の支持を得ていました。無党派層の比例投票先は、第3週調査では立憲民主党が2割半ば、ついで希望の党と自民党が1割後半となっていました。

年代別とのクロスで言えば、自民党は18歳~20代、80歳以上で非常に支持率が高く、立憲民主党は特に60代の有権者からの支持が高くなっていました。

002jimin

(自民党への投票意向と年代のクロス集計。調査は10月15日実施)



自民党は支持層だけでなく、無党派層からも一定の支持を得ていたので、編集部では自民党が大勝する確率は高いと見ていました。



-ルーシッド株式会社 今村氏
今回の衆院選では目まぐるしく政局が動いていましたので、ワイドショーやSNSなどで様々な発言が飛び交っていましたね。多くの言説があふれる現代において、世の中の「何となくの空気感」を的確に把握するために、電話調査は特に「世論」を把握する上ではとても有効です。

そして、的確に把握するためには、いわゆる一般的な「世論」と「ネット世論」の区別も意識しなければならないと思います。例えば、政治の世界では、「国民全員が感じている世論」と「実際に投票に行く層の方が感じている世論」、「ネット上で目立っている世論」があると思います。この中で、情勢調査において重要視すべきなのは「実際に投票に行く層の方が感じている世論」です。この世論が、実際の選挙結果と重なる部分が大きくなります。

弊社「リサーチコム」の電話調査は、固定電話をお持ちの方を対象に調査を行っています。「固定電話だけでは年配の方に偏るので、携帯電話も調査した方がいい」などのご意見もいただきますが、選挙に行く層の方は「固定電話を持っている」「新聞を購読している」といった方々です。そのため、固定電話を対象としていることや「50歳以上の方からの回答が多い」という弊社の特徴は、選挙の情勢調査には効果的です。また、携帯電話では市外局番などのある固定電話と違って「地域を特定できない」という面もあり、現状では携帯電話への電話調査が必ずしも有効だとは言えない状況です。



-選挙プランナー 松田
携帯電話への世論調査については、あまり知られていないのですが読売新聞や毎日新聞の独自調査で、携帯電話への調査と固定電話での調査に回答傾向の違いは確認できなかったとされています。最近はマスコミの全国世論調査で携帯電話を対象にした調査も行われていますし、今後も活用が広がっていくとは思いますが、今のところは携帯電話に調査をかけることに、それほどこだわる必要はないでしょう。

もちろん18歳・19歳、20代・30代などの若い方の考えを調査することも大切ですが、選挙の情勢調査という側面では50代以上の方の意見の集め方がポイントになりますね。世代別の有権者数が多く投票率も高い60代の方が、投票者数に占める割合はもっとも大きくなるのが一般的です。

4





長年蓄積されてきたノウハウで回答精度を上げる



-選挙プランナー 松田
他にも電話調査では「ストレス無く答えていただく」ことも重要ですね。忙しい中で電話調査に協力いただいていますし、普段は他人に話すことのない「支持する政党」などを答えていただくことになりますから、不信感・嫌悪感などを持たれず、できるだけ信頼性の高い回答を集めることが大切だと思います。私は自分のクライアントが調査する場合には、自分で調査スクリプトを作成するようにしているのですが、ルーシッドさんはどのような点に工夫をされているのでしょうか?



-ルーシッド株式会社 四方氏
設問や回答の文言をなるべく短くすることや、「耳で聴いて理解できるか」といったことを念頭に、毎回細かくスクリプトは調整しています。他にも、配慮という点では「調査に協力したくない」とお答えの方がいらっしゃった場合には、その番号を自動でメモし、同じ方に電話がかからないようにしています。また、一度協力いただいた方には、次にご協力いただくまでにある程度の頻度を空けるなども行っています。こうした積み重ねで、今回の全国調査では20万人の方へ電話調査を行いましたが、苦情等はほぼありませんでした。

2



-選挙プランナー 松田
そうやって独自リストの精度を保っておられるのですね。「細かな配慮」という点では、電話調査の際の「音声」も重要ですね。例えば「次の衆議院選挙では、どの政党に投票する予定ですか?」といった設問を「人間が読み上げた音声を録音したもの」を使うのか、それとも「機械音声」を使うのか。機会音声であれば、どういった工夫をされているのかにも興味があります。



-ルーシッド株式会社 今村氏
自動音声より、人が読み上げた音声の方が「自然な音声で、聞き取りやすい」という印象をお持ちの方が多いのですが、実は情勢調査という目的の特性上は賛否両論があります。支持する政党や投票意向など、機密性の高い回答を集めていますので「機械音声の方がプライバシーの面で安心して回答できる」という心理的にプラスな面があるのです。また最近は自動音声の性能も上がっており、かなり自然な音声になっていますし、弊社では細かなイントネーションや、間のとり方などを調整することで回答率を高めています。



-選挙ドットコム 増沢
選挙ドットコムでも、情勢調査についてはより正確な結果を得られるように、都議選の調査の時から設問の内容や回答選択肢の順番を変更するといった工夫を行ってきましたが、音声にもこうした工夫ができるのですね。





調査を制する者が、選挙を制す!? これからの政治家の情勢調査活用法



-選挙プランナー 松田
選挙プランナーとして重要だと思うのは、マスコミの調査に一喜一憂するよりも、自分で設計して定期的に調査することです。自分の活動は有権者の方に届いているのか、届いていないのであればどうすれば良いのかなど、定期的に調査を行うことで、自分の活動の「効果測定」を行うことができます。私は首長選挙や国政選挙において、新人の候補者の方であれば1回の選挙で3〜4回の定点調査をおすすめしています。

もちろん、選挙のタイミングだけではなく、普段から定期的に調査を行うことで、自分の住んでいる地域の方が「どんな政策に関心があるのか」「どんなことを課題だと思っているのか」なども把握することができ、議会活動にも役立つでしょう。



-ルーシッド株式会社 今村氏
まさに仰るとおりだと思います。弊社には、選挙のタイミングだけではなく、例えば「大阪都構想」や「豊洲市場」についての調査のご相談もいただいています。リサーチコムのサービスは「いまホットな話題・ニュースをすぐに調査したい!」という方が、ブログを投稿するような簡単さで調査を実施していただくことができます。

3

また、調査に関心を持っていただく政治家の方は増えているのですが、これまでのネックは価格でした。リサーチコムでは、「選挙情勢調査パッケージ」というプランを業界平均の5分の1程度の金額でご用意しています。これは弊社がサービスを自社開発しており、クラウドの仕組みを構築していることによって安価に提供ができています。リサーチコムのサービスは「誰でも、いつでも、どこからでも、迅速に手頃な値段で」電話調査を提供することを目指しており、2018年1月には、電話調査の「申込み・スクリプト編集・結果ダウンロード」をすべてネット上からご自身で行える「リサーチコム・オンライン」のリリースも予定しています。

無党派層が増え、有権者の意識が変わりやすい今だからこそ、政治家の方には世論を的確に掴んでいただき、有権者のためになる政治を行って欲しいと思います。



-選挙ドットコム 増沢
地方議員のみなさんの広聴活動にも使っていただけると、地域住民の方の意識を正確に把握する上でとても有効な手段になるのではないかなと思います。今村さん、四方さん、松田さん、ありがとうございました。


ルーシッド株式会社との共同調査による情勢分析記事はとても反響が良かったので、今後は国政選挙だけでなく、定期的に注目度の高い地方選挙を取り上げ、情勢調査を実施していきます。

先日は日本で6例目の再選挙となった市川市長選で調査を行いましたが、電話調査と取材を加味した情勢分析記事を掲載したところ、開票結果に近い結果が得られていました。引き続き今後の記事にもご期待ください!
寺崎 倫代

寺崎 倫代

早稲田大学商学部卒。その後、広告代理店等を経て外資系放送局で勤務。2017年会社を辞め、デンマークの成人向け教育機関・Folkehøjskole(フォルケホイスコーレ)に留学。特に民主主義など同国について学んだことを日本で活かすべく活動中。

記事一覧を見る

選挙をもっと、オモシロク。

選挙ドットコムでは”選挙をオモシロク”を合言葉に、より多くの選挙報道・政治家情報を掲載する日本最大級の選挙・政治家情報サイトです

Copyright © 2017 選挙ドットコム All Rights Reserved.