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【漫画に憧れて立候補した政治家も多数】「島耕作シリーズ」の弘兼憲史氏が描きたかった政治家の日常

2016/6/19

選挙ドットコム編集部

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一介のサラリーマンが苦戦しながらも政界へ進出し、さまざまな難関を乗り越え内閣総理大臣へと登りつめていく…。このような斬新なストーリーが人気を呼んだ『加治隆介の議(かじりゅうすけのぎ)』や『島耕作シリーズ』『黄昏流星群』の作者、“弘兼憲史(ひろかね けんし)先生”のインタビューが実現しました。

1991年1号から1998年23号まで講談社「ミスターマガジン」に掲載され、今も若手政治家のバイブルとなっているこの作品で、弘兼先生が読者に伝えたかったことは何か?また、鋭い視点から見た現在の政治に対するメッセージなど、選挙ドットコム取締役CCO松田馨がリアルにお届けします。

 

描きたかったのは、政治家の日常

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【松田】
『加治隆介の議』の大ファンなので、お会いできて光栄です。若手の政治家にも作品のファンは多いですよね。早速ですがこの作品で、弘兼先生がもっとも描きたかったことは何ですか?

【弘兼先生】
普通の人が知らないような政治家の日常ですね。たとえば何時から何時まで国会に行くの?週末は何しているの?また、朝起きたらどういうことをするの?とか。その他にも、国会の会期が6ヶ月であること、そして臨時でも行われることがあるなど、基本的なことも知ってもらいたいと思いました。

【松田】
たしかにそうした政治家の日常が非常にわかりやすく描かれていますね。相当取材されたのでしょうか。

【弘兼先生】
たくさん取材をしました。当時から政治家といえばスキャンダルや不祥事の印象が強かったのですが、あれは一部の極端な事例で多くの政治家は真面目にやっています。そうしたことをわかりやすく描いたことで、多くの国会議員の人たちが漫画を読んでくれるようになりました。あの漫画を見て国会議員を目指した人もたくさんいると聞いて、嬉しく思っています。

 

秘められたテーマは「集団的自衛権」

【松田】
先生は昨年の国会で大きな話題になった集団的自衛権について、すでに当時描かれていますね。

【弘兼先生】
「加治隆介の議」で伝えたかったもうひとつの大きなテーマが集団的自衛権だったんです。「なぜ集団的自衛権が必要なのか」ということを、一番に伝えたかった。
集団的自衛権というのは、決して戦争法案でもなければアメリカの戦争に参加するという趣旨のものでもないわけで、平和のためには絶対必要です。
湾岸戦争において、クウェートがイラクから一方的に虐殺、侵略されているとき、各国が多国籍軍という形で集団的自衛権を行使してイラクに対抗しましたよね。
でも、日本は憲法9条の中で「集団的自衛権を行使しない」と書いてあるからここには参加できず、かわりに当時の価値で一兆円を超えるお金を拠出したのです。でも、終戦後にクウェートが出したお礼の広告に掲載された約30ヶ国の中に、日本の名前は入っていませんでした。これは日本が一緒になって「みんなで守った」と評価されていない事になります。
戦争を避けるために一国で防衛しようとすると、攻撃をしかける国と同等レベルの軍事力を持つ必要があるので、たとえば核を持っている北朝鮮や中国に攻撃されたときに、こちらにも核がないと対抗できないわけです。
でも、インドとパキスタンのように両国が核を持つようになり、これが世界中に広がると軍拡競争という大変な事態になってしまいます。だから、これを避けるためには一国で防衛するのではなく、集団安全保障という枠組みの中で「みんなで守る」ことが必要ですね。
こっちも守られるけれども、相手も守ってあげなきゃいけない。「みんなで手をつないで強大な相手国に対抗すること」これが集団的自衛権だということがもっとも描きたかったことですね。

 

まずは、情報を得る。そして自分で考える

【松田】
今の先生のお話、加治隆介の中でたとえ話を用いてすごくわかりやすく描かれていますよね。災害が起きて皆が一生懸命復興しようとしているところに、手伝えないからとお金だけ渡してあとは何もしない。となると現地の人からすれば「それはないだろ」という話になりますよね。

【弘兼先生】
そうですね。だから「集団的自衛権を真剣に考えましょう」というテーマで、この加治隆介の議を描きました。漫画でわかりやすくしたほうが、若い人にも理解してもらえるし、考えるきっかけになればと。

【松田】
18歳選挙権が解禁されましたので、若者について取材をしていて思いますが、今の若い子というのは正解を求める傾向があると考えています。選挙について学校で先生に「どこに票を入れたら正解ですか?」「どういう投票が正しいですか?」と質問して“正しい”“間違っている”という視点で投票を考えようとする…。だから、現場の先生もどのように教えるべきか難しいと言っていました。

【弘兼先生】
私は、若い人たちには新聞を読む、もしくは報道番組をぜひ見て欲しいと言いたいです。ただし、一誌、一局だけでは絶対にだめです。なぜかというと、局それぞれに方針があるので、ひとつの政治問題を捉えるにも微妙にニュアンスが違うからです。ひとつばかりを見ていると、公平な情報を得ることができない。だから、いろんな番組を公平に見ることが大事ですね。

【松田】
公平にいろいろな情報を集めて、その中で考えるということですね。今は、自分で考えて切り開いていくというのがあまり得意じゃない人が多いような気がするので、ひとつのきっかけとして投票は自分で考えて行ってほしいですね。

 

【弘兼先生】
どの政党を支持するかは自由です。最終的にはその人の判断となるわけですが、要は判断する前の行動が大切です。番組のキャスターもそうですが、大学の先生なども自分の支持政党がしっかりとある人が結構多いので、鵜呑みにせず「自分はどうか」と考えることが大切です。
試験で点数をとるために先生のいうことを聞くのはいいけれども、「ニュースや授業で言っていたから」とそのまま受け入れるのではなく、「本当はどうだ」というところを自分でしっかり調べてほしいですね。

【松田】
いろいろ素晴らしいアドバイスをありがとうございます。選挙ドットコムが、投票先を考える時の参考になるよう、もっとコンテンツを充実させていきたいと思います。

≫弘兼憲史先生インタビュー 第2弾に続く

 

―――弘兼憲史先生 プロフィール―――
1947年生まれ。早稲田大学第二法学部在学中に漫画研究会に所属。卒業後は、松下電器産業(現パナソニック)に入社し広告宣伝部に勤務。退社後、「風薫る(1974年ビッグコミック<小学館>掲載)」でデビューし、人間模様を描いた短編シリーズ「人間交差点」が高く評価されたことで人気が上昇。代表作に「島耕作』シリーズ」「ハロー張りネズミ」「黄昏流星群」などがあり、2007年には紫綬褒章を受章している。

―――松田馨プロフィール―――
1980年広島県生まれ。2006年の滋賀県知事選挙以来、地方選挙から国政選挙まで幅広く実績を積み、2008年6月に選挙コンサルティングの専門会社「株式会社ダイアログ」を設立。 国政選挙の当落予想をはじめ、「日本最年少選挙プランナー」「無党派票を読むプロ」としてマスコミに多数取り上げられる。一般社団法人 日本選挙キャンペーン協会理事・事務局長。日本選挙学会会員。

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選挙をもっとオモシロク” 選挙・政治分野における情報公開やITの活用を促進し、国民の関心を高めることで戦後最高の投票率を更新することを目指しています。

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