2023/9/25
先週の県議会一般質問における武田慎一県議の質問に対する新田知事の答弁に議場はざわつきました。
建設費高騰などにより、整備が難航している高岡テクノドーム別館について、「何のために何をつくるのかという議論が尽くされていなかった」とし、知事は突然、コンセプトの議論が十分ではなかったと、指摘されたのです。
まず、高岡テクノドーム別館整備の検討を振り返ってみたいと思います。
【石井県政のもと高岡テクノドーム別館整備の議論が始まる】
(令和元年11月議会)
米原議員の議会質問に対し、当時の石井知事が高岡テクノドームの機能拡充する旨、答弁(当初は別館整備というより本館のリニューアルというニュアンスが強かった)
(令和2年1月)
第1回高岡テクノドーム機能拡充検討会が開催。具体的な議論がはじまる。
(令和2年6月)
第3回検討会にて、高岡テクノドーム本館のリニューアルではなく、別館を整備する方向性が結論として出される。
(令和2年9月議会)
基本設計費が計上。事業が具体的に動き出す。
【石井県政から新田県政へ】
令和2年10月の知事選を経て、石井県政から新田県政へと知事が交代。
(知事就任直後の令和2年11月議会)
新田知事は次のように答弁。
「高岡テクノドーム別館につきましても、(できるだけ整備する方向とにおわせつつ)施設の規模やスケジュール、事業内容、運営方法などについては、いま一度精査をさせていただく」
(令和3年2月定例会)
私(永森直人)の総括質問に対し次のように答弁
「今回の別館は、地元の市や経済界からの強い要望があり、県西部地域、ひいては県全体の発展にも大きな役割を果たすものと捉えている。施設の規模などは、基本計画の方向性は維持しつつ整備を進めたいと考えている。」と述べ、民間活力を入れながらも基本計画に沿った整備を行う方針を示しました。
【論点は「整備するか否か」から「民間活力導入」の是非へ】
令和3年6月議会以降は、基本計画や整備の方向性について触れることはなくなり、PFIなどの民間活力を導入するか否かが大きな論点となります。
【高岡テクノドーム別館整備に衝撃。整備費がほぼ倍増の46.3億円に】
令和4年11月議会直前、建設費の増嵩により、高岡テクノドームの整備費が当初予定していた26億円から20億円増の46.3億円となることが明らかとなる。
一方で、県は、46.3億円の債務負担行為(予算)を11月議会に提案し、議会における議論でも、知事は「基本設計の方向性は維持しつつ、コスト縮減につながるような設計内容の見直しを行いたいと考えます。」と述べ、基本計画はもちろん、基本設計も方向性を維持すると表明。
【高岡テクノドーム別館整備に再び衝撃。入札が不調に終わる】
令和5年5月、高岡テクノドーム別館について入札を行ったところ、入札に応募する会社がなかったことが明らかとなりました。
ただし、続く、6月議会では、宮本議員の代表質問に対し「設計を含めて一度立ち止まって検討する必要がある」と答えた上で、瀬川議員の質問に対しては、『高岡テクノドームの現在地は、本県にとって将来的なポテンシャルが非常に高く、議員御指摘のとおり、別館は、県西部地域発展のエンジンの重要な部分となる施設と位置づけています。』と高岡テクノドーム別館の必要性は引き続き高いと明言しています。
振り返ってみると、知事交代、コロナ禍、ロシアによるウクライナ侵攻やこうしたことに伴う物価高騰など、様々な事件があり、そうした中で、高岡テクノドームについては様々な議論があったのだと、改めて感じます。
【私が疑問に感じていること】
さて、ここで、冒頭の武田議員の質問に対する知事の答弁に話を戻します。
知事は、就任から3年が経過しようとするこのタイミングで、「何のために何をつくるのかという議論が尽くされていなかった」と述べました。
重大な言葉です。「何のためにつくるのか」が十分に議論されていない施設の整備に40億円を超える税金を投入することがあっていいはずはありませんから。
当然のことながら、何のためにつくるのか、つまり、施設の機能そのものやコンセプトから議論をし直す必要性を知事は認めているのであり、それは基本計画まで遡って議論をやり直すことと同義です。
私個人としては、時代の変化や技術革新、また富山県武道館から多目的機能がなくなったことなど含めて考えると、高岡テクノドームの機能拡充をどのように行うのか、改めて議論を行うこと、そのものに反対しているわけではありません。
ただ、知事が、就任当初からテクノドーム別館整備について疑問を感じていたとすれば、知事交代直後の見直し段階、施設整備費の高騰(26億⇒46億)のタイミングなどがあったはずですが、知事は、直近である令和5年6月議会まで整備に前向きの答弁を繰り返しています。
施設機能についての議論が不十分と認識しながら、なぜ整備の方向性を変えなかったのかは疑問です。(前の知事からの引き継ぎ事項であるという遠慮や自民党議員会からの要望を受け止めいただいていたなどの事情があったと思いますが、知事は交代しているわけなので、整備方針の見直しについて、率直に意見交換を求められれば、自民党議員会としてもテーブルに付くことは可能であったと思います。)
また、今回の武田議員に対する今回の発言は、いわゆる通告した質問に対する答弁ではありません(通常は、通告された質問に対し、答弁書が作成され、それを読むことが中心ですが、今回は通告された質問ではなかったので、知事がその場で、ノー原稿で答えたという意味です)
これまでの、高岡テクノドーム別館の議論を覆すような答弁を、突然なされたことで、知事を支える県幹部の皆様にも動揺や戸惑いが広がっているように思います。
これまでの議論について軌道修正を試みるため意図的にあの場で発言されたのか?武田議員の少し挑発的な質問につい反射的に本音が出たのか?知事が十分な熟慮や覚悟をもって発言されたのかは、正直、測りかねています。
引き続き9月議会においては、高岡テクノドーム別館については、様々な議論が行われることが予想されます。
そしていずれにしても、高岡テクノドームの議論は再び大きく動き始めたと言ってよいでしょう。
もっとも重要なことは、高岡テクノドーム別館を含めて、新高岡駅周辺のポテンシャルの高い地域に、県としてどのような投資をすることが、富山県に賑わい創出につなげられるのかであり、今後とも、しっかりと議論を続けたいと思いますし、県当局には、議会に対しての丁寧な情報提供を求めたいと思います。
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