2025/8/25
憲法34条は、本来は刑事事件で逮捕・拘禁される場合の保障を定めた条文です。
第三十四条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ拘禁されず、要求があれば、その理由は直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
つまり、身柄を拘束されるときには「理由をその場で伝えられること」「弁護人を頼めること」「法廷で理由を争えること」が、誰にでも保障されているという規定です。
ところが、成田新法事件(成田空港の建設反対運動に対する強制排除をめぐる裁判)で、この憲法34条は刑事事件だけでなく「行政上の身体拘束」にも及ぶ可能性があると判示されました。つまり、行政が強制的に人を動かしたり拘束したりする場合にも、憲法34条の考え方が当てはまるというわけです。これは行政法でいう「即時強制」や「直接強制」と並んで重要な論点で、行政書士試験でも頻出するテーマです。
児童福祉法33条は、児童相談所長に「一時保護」の権限を与えています。虐待が疑われる子どもを親から引き離し、施設や里親のもとに収容できるというものです。
性質:行政処分
実態:子どもを施設に閉じ込め、外出・連絡・面会を厳しく制限
この「一時保護」によって、子どもは数週間から数か月、自由を奪われることがあります。ところが、その過程で 子ども自身には「理由告知」もなく、弁護人を依頼する権利もなく、裁判所に異議を申し立てる術もない のです。
名前こそ「保護」ですが、実態はまさに憲法34条でいう「抑留・拘禁」に近い性質を持っているのです。
最高裁はまだ「一時保護に憲法34条が直接適用される」とまでは明言していません。しかし、大阪高裁の2023年判決などでは、一時保護の延長や面会制限について「必要最小限度を逸脱して違法」と認定しました。
裁判所は憲法34条を直接持ち出さなかったものの、
「人身の自由を制約する以上、厳格な必要性と相当性が求められる」
と述べ、憲法34条の趣旨を事実上参照しています。
つまり、現状では裁判所も「子どもの自由を拘束する以上、厳しい基準で審査しなければならない」という立場を取りつつあるのです。
よく耳にするのが「子どもの権利条約を武器に裁判で戦えばいい」という意見です。しかし、裁判所は一貫して「子どもの権利条約は直接の裁判規範性を持たない」としています。つまり、条約は国に努力義務を課すものであって、個別の裁判で「この条約を根拠に違法だ」と言って勝てるものではありません。
実際に裁判で判断材料とされるのは、あくまでも国内法、つまり「児童福祉法」「憲法34条」「憲法13条(幸福追求権)」「憲法25条(生存権)」「憲法26条(教育を受ける権利)」などです。
子どもの権利条約を全面に出しても、勝訴につながる可能性は低く、むしろ国内法で戦う方が効果的なのです。
児童相談所の一時保護は、名目は「保護」でも実態は「拘禁」に近い。
成田新法事件により、憲法34条は行政上の身体拘束にも及ぶとされた。
よって一時保護も憲法34条の対象となり得る。
現実の裁判では憲法34条を正面から持ち出す例は少ないが、その趣旨はすでに参照されている。
裁判で戦うなら「子どもの権利条約」ではなく「憲法」と「児童福祉法」を根拠にするべきである。
児童相談所による一時保護は、時に子どもの人権を大きく侵害します。今後の憲法訴訟では、この34条の適用が正面から論じられる可能性が十分にあります。
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