2026/8/28
全国紙の書評欄に「井上毅(こわし)と読めない私が、この本の書評を書いて良いのか・・・」といった風の書き出しで始まる書評がとても面白く、すぐに本書を手にしました。
読み進めるうちに感じたのは、NHKの大河ドラマが小説になったのではないかという印象でした。主人公の井上毅をはじめ、明治の元勲や有名人が続々登場し、自説を唱え、相手を罵り、喝破し、意気投合するありようが、生き生きと描かれていたからです。
「本書は史実に基づいて書かれたフィクションです」とあるように、これらのやりとりや独白は作者の創作ですが、明治国家が形成される過程の重要場面が鮮やかに蘇って来るようでした。
主人公の井上毅は、大日本帝国憲法のほか皇室典範、教育勅語の制定に重要な役割を果たした法制官僚です。肥後藩の城下町・熊本で身分の低い陪々臣の三男として生まれた毅は、私塾で猛烈に勉学に励み、幕末の戦乱を生き抜き、上京して司法省に出仕するようになります。終生、肺の病に悩まされながら、信念を貫きながら、頭角を現していきます。
井上は司法省での任務を通じ、初めは江藤新平、三条実美、岩倉具視、そして大久保利通の知遇を得て、清国との外交交渉などにも加わり、伊藤博文の右腕になっていきます。
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